第128話 北へ招待。
やって来たシュートとレインと挨拶を交わし、さっそく部屋に入って次元門を見せる。
「ほう、景色が歪んでるな」
「入ったら向こう側に行けるん?」
「ああ、だがレインはまだ行くなよ?」
「なんで?」
「立場を考えろ。他国の女王がいきなり来たらどうなる?」
「あっ、そうか、残念」
「レインは、どれくらいで向こうに訪問出来る? 正式なやつだぞ」
「正式な訪問やと……1月ぐらい掛かるかな? 準備もあるし」
レインにざっくり予定を伝える。
あちらの大臣と会って話をする事、侵攻する気が無い証明をする必要がある事を告げた。
「あぁ、知らん国の人が来るんやったらそりゃ警戒するよねぇ。侵略せえへん証明か……なんか考えとくわ」
「それから……」
こちらで言う英雄をあちら側では覚醒者と呼んでいる事を話し、レインや他数名も覚醒者だと知らせている事を話す。
そして……。
「ここからが面倒なんだが実は……」
あちら側では民主制で大統領が居る事、現在移民のせいで治安が悪化、かなり不安定な状態だと言っておく。
「そんな状況の中、俺達が行って大丈夫か?」
「シュートはまだ大丈夫だと思うけど、レインは正直分からん。他国の女王と聞いて移民や国民がどう動くのか、政府がどう対応するのか……」
まあ、一週間以内に大統領は居なくなるんだけど。
……そうか暗殺が終われば、レインが会うのは仁皇になるのか。
暗殺が完了したら神の民が動くとか言ってたし……よし。
「あっちの大臣と話すだけなら大丈夫ちゃう?」
「レイン、大丈夫だ。レインが行く頃には、たぶん大統領は居ない」
「なんで?」
「まあ、いろいろあるんだよ」
「何それ!?」
「あぁ~……近々大統領が変わるかもしれないんだ」
「そうなん? まあ、それやったら変わってから話しに行った方が二度手間にならへんからええけど」
「キジ丸が何でそんな事知ってんだ?」
「知り合いに聞いたんだよ」
「もう知り合いに会ったのか!? そう言えばあっち側の国はなんていう国だ? 帝国か? カラトナか?」
あっ、まだ言ってなかったか。
「仁皇国という国でゲームでは仁の国だな」
「仁の国がこの世界に……」
「って事は侍の国やんな? めちゃ強いんちゃうん?」
「ああ、周辺国と戦争して全て返り討ちにしたらしい、カラトナもその内の1つだ。それで仁の国から仁皇国になったそうだ」
所謂帝国と同じだな。
「ところでシュート」
「ん?」
「今からあっちに行ってみるか?」
「ああ、行く」
「シュート君、将軍辞めんの?」
「いや、どんなもんか少し見てから一旦帰って来る。流石に今すぐ辞めて行かねぇよ」
「良かったぁ~、シュート君なら行きそうやもん」
「そこまで無責任じゃねぇぞ?」
「じゃあ行こうか、あっちに人を待たせてるから」
「おう」
「お土産楽しみにしてるわ」
「任せろ」
「じゃあ、また数日後」
そう言って次元門を潜り、仁皇国側へ出るとレバックが門の前で地面に座り込んでいた。
「うお、ビックリした!?」
「すまん、待たせたな」
「おっ、本当に違う所に出たな」
「っ!? キジ丸の友達か?」
「ああ」
「どうも、シュートだ。よろしくな」
「あ、ああ俺は、特殊警備部のレバックだ」
「特殊警備部?」
「それよりシュート、街に行くかそれとも外を見回るかどうする? もし……」
シュートに、街に入るなら監視が付く事を説明し、どうするのか聞くと少し考えて答える。
「……街に行く。この眼で確かめたい」
「オッケー、レバック、そういう事だから頼めるかな?」
「分かった。俺が監視に付くがもしかしてお偉いさんか?」
「ああ、しょう……」
「いや、ただの一般人だ」
「そうか、なら問題無い。行こうか、ホテルまで案内する」
歩いて行くレバックを見ながらシュートに問う。
なぜ将軍だと言わないのかを。
すると、軍のトップがいきなり他国に乗り込んだら誤解を生みかねないとの事。
なので一般人で通すらしい。
後々バレたら大変だぞと思いながらレバックの後を付いて行き、洞窟から出るとシュートが周囲を見回す。
「山に挟まれた場所か……おい、あれって道路か?」
「ああ、カリムス王国と同じように道路は舗装されてる。これから向かうのは首都トウリン」
「マジか、仁の国の首都かよ」
「街中を見たら驚くぞ?」
「まさか、ゲームのままとか?」
「さあ? それは見てからのお楽しみだ」
「驚く街並みってなんだ? カリムス王国でも十分驚いたが」
歩きながら考え込むシュート。
車に到着すると車を見て「セダン?」と首を傾げるが、良く見ると違う事が分かり、車に乗り込んで街へ向かう。
後部座席にシュートと俺が乗り、レバックが運転だ。
街へ向かう車内でシュートが呟くように口を開く。
「なあキジ丸、帝国は残ってると思うか?」
「いや、仁の国の北が山を挟んで帝国だったろ? でも仁皇国の北はチャルドム共和国という国があるらしい」
「ゲームには無かった国だな」
「プレイヤーがこの世界で作った国だそうだ。かなり嫌われてる国らしい。ちなみに日本人じゃない」
「あぁ、あっちの奴か」
頷く俺。
「良い奴は良い奴なんだが、殆どがあれだからなぁ」
「知り合いでも居るのか?」
「大学の友達で1人居た」
「居た?」
過去形?
「あいつはGFWをやってなかったからな。今頃どうしてるのか……」
「そうか……シュートのクランの拠点ってどこだ? 帝国か?」
「ああ、帝国のゴルガンド王国領だ」
「ギルド本部があった所か」
「皆が無事だと良いんだが」
死んだら魂は地球へ帰る。
アマネがそう言っていた。
もし死んでるなら魂は帰ってるはず。
流石に500年この世界に居ないだろう。
多分だけど。
まあ、この事は言わないけどね。
行って死んでいたら伝えるつもりだ。
「えーっとシュートさん、シュートさんはどんな仕事を?」
「あぁ、ハンターだ」
「ハンター? 冒険者みたいな事か?」
「こっちには冒険者が居るのか?」
「ああ、その辺りも街を回りながら説明するよ」
「身分証は、明日になると思う。それまでホテルに居るか、俺が付いていれば街を回れる」
「身分証ってすぐ作れないんだな」
「役所に行けばすぐ作れるが、政府に報告が行くからあまりおすすめしない」
「ん? 政府にバレないように身分証を用意してくれるのか? それはなんと言うか……有難い」
なるほど、役所に行くとすぐバレると……明日の夜には、暗殺するつもりだし、報告されても問題無いのでは?
……いや、念のためにバレないようにしとくか。
そうしてゲートに到着し、俺の時と同じようにしてゲートを潜り、トンネルを抜けて街並みが見えると窓の外の景色に茫然とするシュート。
現代の日本っぽい街並みに驚いてるな。
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