第126話 ターゲット。

俺の部屋でシズキ、ギンジ、そして身分証を届けてくれたレバックの4人でソファに座り、身分証を受け取る。


「これで自由に動けるな」

「そうですね。昼から観光します」

「拙者は、明日の朝、街を出て武者修行の旅を続ける事にする」

「シズキさん、もう出るのか?」

「ああ、身分証も手に入ったしな。他の街もこれがあれば入れるのだろう?」


頷くレバック。


「レバック、この街の地図はあるかな?」

「あっ、便利な物を持って来たぞ」


そう言ってポケットから3つのスマホを取り出し、テーブルに並べた。

手に取って確認すると、地球で使っていたスマホとほぼ同じだ。

プレイヤーが作ったんだろうな。

使い方は分かるが、レバックが使い方を説明するのを黙って聞いてお礼を言う。


「ありがとう」

「キジ丸は、次元門の設置をするんだよな? 俺も同行したいんだが良いか?」

「ああ、一応どこに設置するか把握しとくためだろ? 良いよ。今日は準備があるから明日……道場の見学って何時から?」

「午前中か午後どっちでも大丈夫だが、どうする?」

「じゃあ、午後からで良いかな? 午前中に次元門を設置したい」

「分かった。明日の朝迎えに来る。では、街を楽しんでくれ」


そう言ってレバックは、部屋を後にした。

レバックが出るとすぐシズキを自分の部屋に移動させ、ギンジも観光してくると部屋を出て行ったのでさっそく情報収集のため動く。


数日の間にやる事が多い。

暗殺と次元門設置に道場の見学。

そして今から情報収集だ。


まずスマホで政府の人間が居る場所を検索。

日本で言う国会議事堂のようなものがあるのか検索すると、街の中心から北東へ行った所に『仁皇堂』という建物があるらしく、そこが所謂日本で言う国会議事堂になるらしい。

スマホで見ると東京タワー程ある高いビルが4つ合体したような形をしており、真ん中は穴が空いてる。

敷地は、東京ドーム程の広さがあるようだ。


場所が分かったのでさっそく大量のネズミの使い魔を影から放ち、巻物作成で紙を創ると式紙で黒い鳥を4羽作り、窓から飛び立たせる。

ちゃんと思念で指示は出してあるので問題無い。



ソファに座ったまま目を閉じ、放った式紙の視界と共有し、上空から仁皇堂を探すと遠くに発見。

地上を行く使い魔に向かうように指示を出すと、下水道や路地裏を大量の黒いネズミが移動を始めた。


式紙に建物の近くで監視するように指示を出し、30分後には仁皇堂の周囲をネズミと式紙が囲む。

式紙は、自我があるので怪しいモノを発見したら知らせるように言い、ここからは使い魔と感覚共有して中を探る。


仁皇堂は、4つのビルが十字に建ち、真ん中は吹き抜けで白いテーブルと椅子が幾つか置かれている。

周囲は、10メートル程ある白い壁に囲まれ、正面ゲートには、銃と刀を持った見張りが2人、壁の外を2人1組で計5組が巡回してる。

敷地内にも巡回してる者が計4組。

かなり警備は厳重だな。


地上数十メートルには、ビルとビルの間を繋ぐように通路があり、それが最上階まで3つある。


そんな仁皇堂にある下水や開いてる窓、壁の隙間などから入っていく使い魔達。

建物内は、現代風でタイルや壁にはコンクリートっぽい素材が使われており、中に入ると綺麗な役所って感じだな。


構造は、入り口から入ると広いロビーのようになっており、3階まで吹き抜けになっている。

それぞれビルの中心には、筒状になったエレベーターが設置され、奥にはエスカレーターと階段。

建物は全部で20階層の作りになっていた。

東京タワーより高い。


使い魔で建物内をくまなく探ると、大臣の部屋を発見。

中には誰も居ないが資料などを拝見させてもらう。

大量の使い魔で探ると次々と部屋に送り込み、順番に探ると全てのターゲットを発見した。


外務大臣の執務室で高級そうな椅子に座り、コーヒーを飲みながら資料を読んでいる男。

赤色の髪で、眼鏡を掛けている30代くらいのイケメン。

服装は青いスーツである。


髪も服も派手な男だ。

名前は『チェン』でアマネが言うには『賢者』らしい。


そして警備部長の部屋でソファに座ってワインを飲んでいる男が『シュアン』で『剣聖』との事。

短髪の金髪で頬に切り傷の跡があるイケメンだ。

服装は、ゆったりした白のシャツに黒いズボンと黒のブーツ。


3人目が、大統領の秘書をしている女で名前は『フェイ』職業は『召喚魔導師』らしいが、召喚してるところを見た事は無いそうだ。

長い黒髪を後ろで縛り、眼鏡を掛け切れ長の目をした美人系で、秘書といった感じの服装である。


大統領が居る部屋の隣で待機し、椅子に座って資料の確認などを行っているのは、かなり出来る秘書っぽい。


秘書が居る隣の部屋には、当然大統領が仕事をしていた。

黒髪に白髪が少し混じった髪をオールバックにしてるおっさん。

眉間に濃い皺があり、常に怒ってるような表情をしてる厳ついおっさんだ。

流石大統領というのか、ただ座って資料を読んでいるだけだが風格がある。



暫く全員を観察してると大統領の部屋に秘書が入って来た。


「大統領、こちらの資料に目を通して下さい」

「……君達、席を外してくれるか?」


大統領の部屋には護衛の兵士が2人、配置されていたが大統領が外に出し、秘書と2人になると微笑みながら口を開く。


「リネア、仕事中だぞ?」

「すみません。ですが……例の進捗で少しトラブルがありまして」

「急ぎの事か?」

「少し……移民の強制送還が多く、このままでは、北区に忍ばせた者が目立ってしまいます」

「ふむ……移民の連中をもっと大人しくさせられないのかね? もう少しでこの国が良くなるのだ。何としても計画を進めなくては」

「移民の連中は、自国では底辺の者ばかりですから、マナーも礼儀も常識も無い者ばかりです」

「誰か派遣して纏めさせた方が良いか?」

「それでしたら、うってつけの者が居ますので、その者にやらせて良いですか?」

「よし、ではそうしてくれ」

「畏まりました」


そう言って部屋を後にする秘書。

って言うか秘書の名前は『フェイ』だろ。

リネアは偽名か。

仁皇国生まれを装ってるんだな。



その頃、外務大臣の部屋にも人が訪れる。

ノックされてチェンが入るように言うと、秘書の若い男が入って来て言う。


「タクヤ様、3日後、法務大臣が何者かと会うそうです」

「ほう、法務大臣が……誰と会うのか監視を付けろ。もし他国の間者なら接触はせず、カメラに抑えて証拠を集めるように」

「はっ!」


秘書の男が出て行くとニヤッと笑みを浮かべるチェン。

こいつも偽名か。

全員仁皇国生まれを装ってるんだな。

誰も気付いてないのが逆に凄い。

外人が政府の人間になれるんだね。

国民はもっと考えた方が良いぞ。

後になって手遅れなんてならないように。


その後、ターゲット全員を監視してると、元プレイヤーの3人共偽名を使っており、他国の政府に上手く潜入し、じっくり国を崩壊へと誘っていた。


こうしてこの日はずっと情報収集をして過ごし、夜になると訓練をして眠りにつき次の日の朝を迎える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る