第125話 依頼の詳細。

依頼の詳細を聞くと、元プレイヤーを含めた4人の暗殺だった。

1人は仁皇国現大統領。

他の3人は、大統領の側近が2人と大臣が1人との事。


大統領以外の3人は元プレイヤーで、この世界の人や住人にとっては、かなりの強さらしい。


「ライゴウなら出来るんじゃ?」


かなり長い年月を生きてるライゴウなら、それなりの強さになってるはず。


「いえ、ライゴウは忍び頭で止まってます」

「影忍になってない? 時間はたっぷりあったと思うけど?」


そこでライゴウが口を開く。


「若い頃、影忍になるための修練をしていたが、初めて魔力を重ねた時、腕が弾け飛んでしまってな。それ以来重ねる事が出来なくなってしまったのだ」


要はトラウマになったと。

まあ、ゲームと違って死んだら終わりの現実だ。

そうなるのは分かる。

だからゲームでも、住人の忍者は影忍になる者は居なかった。

初代を除いてね。


「つまり忍び頭より強いって事か」

「はい、暗殺をするだけならライゴウでも可能ですが、もし戦闘になれば確実に負けます」

「で? その3人が元プレイヤーなのは分かったけど、暗殺理由は? 覚えてると思うけど俺は、誠実な者は殺さないという掟を自分に課してるからな」


後は子供も殺さない。

本人が望めば殺すけど。


「ええ、勿論覚えています。彼らは、仁皇国を崩壊させようと動いてます。なので、暗殺を依頼しました」

「仁皇国を? 他国の人間か?」

「はい、大統領は仁皇国の人間ですが、側近や大臣、周りの者にいろいろ吹き込まれ、チャルドム共和国に国を売り渡そうとしてるのです」


アマネが言うには、そのプレイヤー達がチャルドム共和国の人間らしい。


「そのプレイヤーって日本人?」

「いえ、チャルドム共和国を作ったのは、日本人ではなく他国の人間です」

「それだけで分かった」


日本人ならチャルドム共和国なんて作らないもんな。

いや、そういう奴も居るか?

ゲームの時も、日本人以外のプレイヤーは多かったらしいがゲーム内だとどこの国の人間か見ただけじゃ分からない。

まあ、行動を見ていればだいたい分かるけど。

ちなみにゲーム内だと自動翻訳で外国人とも普通に会話が出来る。



仁皇国を中から崩壊させようとする者達の暗殺依頼か、それなら受けても問題無い。


「暗殺は分かったけど、完全にバレないように始末すれば良いの? それとも死体を発見してもらいたい?」

「今回の暗殺は、完全暗殺でお願いします」

「完全暗殺って死体も残さず、殺された事も周りに気付かれないようにって事かな?」


頷くアマネ。


「行方不明にしてほしいという事か」

「暗殺をした後の事は、こちらで動きます。あなたには、完全暗殺をお願いしたいのです」

「そいつらを暗殺してアマネは、何をしようとしてるのか聞いても?」

「ええ……国の形を元に戻します」


元に戻す?


「フフ……また仁皇家が国のトップになるという事です」

「あぁ、君主制に戻すのかって、そんな事出来るのか?」

「そのための根回しはしてます」

「……もしかして仁皇からの依頼?」

「いえ、これは私の判断です。仁皇家とは約1000年程前の代と条約を結びました。まだ仁皇が国を仕切っていた頃の話しです」

「そんな前から」

「はい、ですが民主制になった仁皇国は、その条約を破ったのです」

「だから戻すと」


ちなみにその条約が何か聞くと神の民、アマネ達の領域を侵さない事、何かあれば互いに助け合うというシンプルなもの。

だが民主制になって現在、これまでの大統領もちゃんと条約を守っていたが現在の大統領は、それを破ったとの事。

なのでアマネは、国を元に戻すと決めたそうだ。


「既に今の仁皇とは、話しがついてます。後は……」

「実行するだけ」


頷くアマネ。


「期間は?」

「出来るなら一週間以内にお願いします」


一週間で4人の完全暗殺ね……余裕だな。

本来なら準備に数ヶ月掛かるだろうが、俺ならターゲットの行動を把握すればすぐにでも出来る。


「分かった。一週間以内に始末しよう。完了したらまた顔を出す」

「よろしくお願いしますね?」

「報酬を楽しみにしてる。あっ、明日仁皇流の道場に見学行くんだけど、何か注意する事ってある?」

「そうですね……特にありませんが1人、強者が居ますね」

「ほう、それは気になる。プレイヤー?」

「いえ、この世界の住民です」


へ~、プレイヤーじゃなくても強い奴は居るんだな。

それは是非会いたい。


「そうだ。こっちに人斬りリュウゲンって奴が来てるはずなんだけど、どこに居るか知ってるかな?」

「人斬りリュウゲン? ライゴウ、何か知ってますか?」

「何年か前に山を抜けた者ですね」

「その者は?」

「ワシらは遠巻きから監視しておりましたが、何事も無く山を抜け、首都トウリンに暫く滞在した後、更に北へ向かったはずです。その後の足取りは知りません」

「という事です」


うむ、この街にリュウゲンは居ないって事か。

後でギンジに知らせてやろう。



その後、少し聞きたい事を聞いてホテルに戻り、ギンジを部屋に呼んでリュウゲンの事を伝える。

ソファに向き合って座り、お茶を飲みながら話していたがギンジは、苦虫を噛み潰したような表情をし、口を開く。


「必ず殺してやる」

「まあ、先に見つけないとな」

「……はい」

「それから数日程俺は、1人で動く事になる。その間も訓練はしとけよ?」

「何かあるんですか?」

「依頼を受けてな。内容は言えないが」

「依頼ですか、僕も手伝いますよ?」

「いや、今回は1人の方がやりやすいから大丈夫。また手が欲しい時は頼む」

「分かりました。では僕は、訓練と情報収集をしておきます」

「ああ、身分証が届いたら道場都市オウレンについて調べてくれないか?」

「あぁ、そんな街ありましたね。分かりました。ついでに他の街についても調べておきます」

「よろしく頼む」

「では……」


ギンジが部屋を出て行くと俺は、部屋の時計を見てもうすぐで身分証が届くなと思い、それまで研究をする事にした。


それから約1時間後、レバックが俺達の身分証を届けてくれた事で自由に動けるようになり、さっそく俺は、ターゲットの情報収集に動き出す。

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