第123話 アマネの依頼。
神の民とはよく言ったものだ。
まさに影の神(管理AI)の民だな。
「ライゴウ以外は席を外しなさい」
すると爺さん以外が部屋を出て行き、俺とアマネと爺さんだけになる。
道場のような広い部屋で3人、爺さんはアマネの横で正座し、俺は忍者姿のままアマネと正面で向き合いながら床に座り、気になる事を先に問う。
「この里の者達は、アマネが?」
「ええ、親が居ない孤児で死にかけていたライゴウを拾ったのが切っ掛けです」
爺さんをチラっと見ると頷き、口を開く。
「アマネ様に拾って頂けなければ、ワシはとうの昔に死んでいた。大恩人です」
「フフフ……拾った子供に名を与え、忍びの力を授けました。それからは、ここに里を造り、身寄りの無い子供を引き取り、忍びとして育ててるのです」
「ゲームの里と同じだな」
頷くアマネ。
だが更に気になる事が増えた。
「ライゴウは何歳だ?」
「そうですね……」
「今年で1268歳になります」
「まあ、もうそんなに経ちますか」
やっぱり、この爺さん不老か。
しかし、影の神、忍者を管理してた神(管理AI)が異世界でも、同じような事をしてるとはなぁ。
「アマネは、管理AIだった頃の記憶はあるんだな?」
じゃないと俺の事を覚えてるはずがない。
案の定頷くアマネ。
「キジ丸、影分身ではなく本体のあなたに来てもらいたいのですが?」
「影分身でも本体と繋がってるが?」
「せっかく久しぶりに会えたのです。是非本体のあなたに来てもらいたい……お願い、いえ、依頼したい事もあるので」
うむ、依頼は本体の俺と直接話したいって訳か、まあ俺も、そういう事なら本体で来てちゃんと話したいと思っていたところだ。
「分かった。そうだな……明日、顔を出そう」
「お待ちしてます」
「影分身はこのままここに残しておく、明日直接ここに顔を出す」
「はい、お待ちしてます」
アマネが笑顔で答えるのを確認し、影分身を影に沈めた。
そして現在、話し合いが終わった後ホテルに戻り、キジ丸として道場に姿を現し、アマネとライゴウ、そして俺が向かい合って床に座り、昨日の続きを話し合う。
「影の神の依頼かぁ。久しぶりのような気がする。依頼内容は?」
また国を滅ぼしてほしいとかなら、この世界だとちょっと時間掛かるぞ?
「話が早くて助かります……幾人かの暗殺をお願いします」
「暗殺? また国を滅ぼせとか言うと思ったけど暗殺か、それも数人……報酬は?」
「フフフ、報酬はあなたが喜ぶ物を用意してます」
「ん? 報酬の内容を提示してくれないと、決められないんですけど? あっ、もしかしてレアなスキルオーブ? 今も出せるのかな?」
「いえ、あれはゲームだったので出せましたが今は、現実になりゲームシステムもありませんので出す事は不可能です」
「無理かぁ……」
「ですが、それよりも確実に良い報酬だと自信を持って提供出来ます」
「今は教えられないと?」
「今言うと依頼を達成して報酬を受け取った時、驚かないでしょ?」
驚かせたいのかよ。
影の神ってこんな性格だっけ?
「アマネの性格って以前と変わってる?」
「気付きましたか? 私は全ての管理AIの基になったAIです。この世界に来た当初私は、自分の置かれた状況が理解出来ず、長い時間を掛けて理解しました。私は全てのAIが元の1つになった存在だと」
ほう、管理AIの基になったのはゲームの時に聞いてたけど、今は他の管理AIが統合され、アマネという人格を作ってるという事か。
「1つ気になったんだけど、この世界に来た時から身体があった?」
アマネは首を横に振って答える。
「いいえ、この世界で目が覚めた時の私は、意識だけの存在。いわば幽霊のような存在でしたね」
「マジか……それでどうやって身体を?」
「私は……」
そこからアマネ、管理AIがこの世界に来た時からの事をざっくり話してくれた。
アマネがこの世界で目を覚ましたのは今から約『6000年前』の事。
そこから約5000年の間、身体が無い状態だったらしい。
しかしある日、空中をただ漂い情報を集めていると、何者かに襲われて殺された死体を発見。
今までにも死体は発見していたがこの時は他と違い、死体から魔力とマナが溢れていたそうで、身体を手に入れられないか試したところ、今の身体をゲットしたという。
「その見た目は? 死体のまま?」
「いえ、私が身体に入った後、動けるようになった時には、こうなっていました。元は金髪の女の子でしたね」
「つまりそれがアマネ本来の姿?」
「いえ違います。これはあなたを基にしたイメージで、こうなったのです」
「なんか俺のせいみたいに言われてる気がするな」
「いえいえ、ゲームで直接会ったのは、あなただけです。他のプレイヤーも管理上、見ていましたが直接触れたのはあなただけ、なので人という存在があなたのイメージが強かったのです。勿論、この見た目は気に入ってますよ?」
身体を乗っ取った時、俺のイメージが基になって今の姿になったって事か。
しかし、魔力とマナが溢れてる死体ってまさか……。
「その身体の元の持ち主が誰か分かるか?」
「あなたの考えてるとおり、元プレイヤーです」
やっぱり。
「安心して下さい、あなたの知り合いではありません。それに……魂はちゃんと『帰った』ようです」
「帰った? 地球にって事か?」
「そうでしたね。プレイヤーが住む世界、星は確か地球でした。彼女の魂は地球へ帰ったようです」
なるほど、プレイヤーが死ねば魂は地球に戻る。
だからエインヘリヤルのあいつを殺しても、死霊が見当たらなかったんだな。
「ですがこれは、全員帰れる訳ではありません」
「どういう事?」
「この世界に長く居る者は、魂もこの世界に留まります。と言ってもこの世界に最低でも100年は、居ないといけませんが」
100年住んでる者は死ねば、この世界に留まるって事ね。
って事は、殆どのプレイヤーの魂は、地球に帰ってるって事か。
「アマネ、この世界が何か分かる? なぜ俺達がゲームキャラでこの世界に居るのか、管理AIだったアマネなら何か知ってるんじゃ?」
「いえ、全てを知るには時間が足りません。私に分かる事は『とてつもないエネルギーの暴走』の影響という事だけです」
エネルギーの暴走……。
「次元高炉?」
「違います。もっと別の何かです。おそらくこの世界に居る限り、分からないと思います」
「つまり、別次元もしくは異世界の影響って事か?」
頷くアマネ。
「じゃあ、地球に帰る方法は分かるか?」
「今はまだ分かりませんが現在、半蔵が世界を回って探してくれてます」
「半蔵!?」
いや、そりゃそうか。
影の神が居るならその使徒である半蔵が居てもおかしくはない。
詳しく聞くと半蔵も、最初は身体が無かったらしいがアマネと同じように身体を手に入れ、現在は地球へ帰りたいと思うプレイヤーのために、方法を探ってるそうだ。
ちなみに見た目は以前のままらしい。
「なるほどなぁ。半蔵が……」
「それで依頼は受けてくれますか?」
「まあ、報酬が気になるし、なんと言っても影の神の依頼だからね。受けるよ」
「では、報酬の内容を言わない代わりに、1つ情報を授けます」
「情報?」
「自分の巻物は持っていますね?」
「ああ、インベントリに入れてある」
「フフ……それをインベントリではなく、魂に入れるのです」
「はっ?」
巻物を魂に入れる?
……あっ、GFWの住人は確か、職業の証を魂に収納してるとか言ってたな。
つまり現実になった今、俺達プレイヤーもそうする事が出来る。
どうなるのか分からないが、とりあえずやってみるか。
インベントリから取り出した巻物を手に取り……。
「どうやって魂に入れるのかな?」
「フフフ、巻物に……」
アマネの言うとおりにするとゲームの時と同じように、ステータスを開く事が出来た。
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