第122話 神の民の里。

時は遡り、転移装置で街へ向かっていた頃。

神の民の影に潜ませた影分身で、様子を伺っていた。


彼らは山の中へ退いた後、結構な速さで山の中を駆け抜ける。

木々が生い茂ってる山の中の移動は、かなり慣れてるようだな。

男は、怒りの形相を浮かべたまま走り続け、後ろに他の者達も付いて来ていた。


すると1時間程経った頃、山の中にある滝の上流で止まり、川の水で喉を潤し、一言も会話する事なく静かに数分休憩すると、再度出発。


それからすぐ男達は、山の中で動物の狩りを行う、

狩りは弓と槍を使い、猪のような魔物を2体狩り、血抜きをした後、獲物を担いで移動を始める。


偶に休憩して移動する事更に約1時間後、山と山の間にある広大な森の中に、開けた場所があり、そこに数軒の家が建っていた。

しかもその家が和風なのだ。

上半身裸で腰に布を巻いてるこいつと、この集落の感じがまったく合わない。


現に集落に住む者達は、みんな似たような服を着てる。

袖なしの白いシャツに黒いズボン。

足首がキュっと細くなっており動きやすそうな黒い靴を履いてるな。

中には白シャツに黒いスカートや、黒い布を巻いてるだけの者も居るようだ。

色合いが統一されてるね。


男達が獲物を担いで集落の中心にある広場に行くと、女達が笑顔で近づいて来た。


「今日の獲物かい?」

「ああ、頼む」


そう言って獲物を女達に渡す男達。

そこへ黒髪のイケオジが声を掛ける。


「おい、長がお呼びだ」


男達は何も言わずおっさんの後に付いて行き、端にある大きな和風の屋敷に入って行くと、離れにある建物へ通され、中に入ると道場のように板張りの広い空間になっていた。


その奥に白髪の爺さんが足を組んで座っている。

おっさんが近くまで行くと「お連れしました」と言って爺さんの横に、少し距離を空けて正座。


男達は正面に正座すると爺さんが口を開く。


「いつまでその格好で居るつもりだ?」

「すみません」


すると男の姿が、白シャツに黒いズボン、肌も薄黒い色から普通になり、金髪の若い男に変わる。

これって変装術?


「で? お前達、どこに行ってた?」

「いつものように狩りへ」


すると爺さんが目を細め鋭い視線を向け、ジッと見つめると耐えられなかったのか男は、転移装置の所へ行っていたと白状する。


「山を越えるなとあれ程言ったのに、罰が必要だな」


爺さんのその言葉にビクッと身体を硬直させ、微かに冷や汗をかく男達。

そこで奥から女の声が聞こえてきた。


「よく戻りました」


左手奥にある扉が開き出て来たのは、長袖の白いワンピースで襟元と肩に紫のラインが入ってる服を着た長い黒髪の若い女が出て来る。

可愛らしい子だな。


彼女が出て来ると全員、その場で片膝を突き頭を垂れる。

この女が一番偉い人?


「楽にしなさい」


爺さんは座っていた場所を空け、横にずれて正座すると他の者達も正座をし、女が爺さんの座っていた場所に腰を下ろし、正座をすると口を開く。


「あなた達、転移装置の所へ行っていたようですね?」


それだけで男達は青い顔をして少し俯き、身体が震えだす。


「いまこの者達に、罰を与えようと思っていたところです」


爺さんがそう言って頭を下げる。


「そうですか……ですが」


そこで全員顔を上げて彼女を見ると笑顔で言う。


「今回は不問にします」

「ですが、それだと他の者に示しが……」


爺さんの言葉を手で制し、男を見ながら続けて話す。


「今回は良い人を連れて来てくれたようですね」

「「「??」」」


全員首を傾げる。

すると爺さんが口を開く。


「あの、良い人を連れて来たとは?」

「あなたの影に潜むそこの人、出て来て下さい」


っ!?

俺の存在に気付いてるのか?

マジで?

隠密を発動させて影に潜んでる俺を?

もしかしてこの集落に何らかの結界が張られてるのかも?

それで俺の存在に気付いたっぽい?


「どうしたのですか? 早くその姿を見せて下さい」

「何者だ? 今すぐ姿を見せぬなら今すぐ始末するぞ?」


そう言って立ち上がる爺さん。

男達も立ち上がり、俺が潜んでる男から距離を空ける。

どうやら完全にバレてるようだな。

仕方ない。



俺は覚悟を決め男の影から出ると男は、後方に跳んで距離を空け、近未来風の忍者の格好をした俺を男達が囲む。


「まあ、随分変わりましたね」

「ん? 拙者を知ってるのか?」

「ええ、勿論、お久しぶりですハンゾウ……いえ、キジ丸」

「っ!?」


ハンゾウではなく、俺をキジ丸として認識してる?

何者だこいつ?

クランのメンバー?


「誰だ? クランメンバーか? もしかしてここは、忍びの里か?」


すると女は頷き答える。


「はい、ここは私が作った忍びの里です」

「お前が作った……で? 拙者の事を知ってるようだが、誰だ?」

「どこの忍びか知らぬが、アマネ様に対してその口の訊き方は無礼だぞ? 今すぐ始末してやろうか?」


爺さんが静かにそう言うと殺気を飛ばしてくる。


「やめなさい。この里に居る者で彼に勝てる者は居ませんよ」

「っ!? ライゴウ様でもですか!?」


おっさんが驚いた様子でアマネ? という女に聞くと頷く。


「この者は、最強の忍びですからね」


どこまで知ってるんだこの女?

最強と呼ばれてるのはプレイヤーからだ。

この女も元プレイヤーか?


「アマネ様でも勝てませんか?」


爺さんがそう聞くとアマネは、少し考えて答える。


「そうですね……今ならまだ私でも勝てます。ただし、下手をすれば私も負けます」

「アマネ様と同格という事ですか……お前は何者だ?」

「拙者が先に聞いてる。アマネだったか? 何者だお前? 元プレイヤーか?」

「フフフ、まだ分かりませんか?」

「変装してるなら分からん」

「まあ、この姿を見るのは初めてですね」


なら分かる訳ねぇじゃん。

誰だよこいつ。


「お久しぶりですね。プレイヤーキジ丸」

「っ!? ……その言い方」


まさか……マジか?

あり得るのかそんな事?

いや、カゲや夜叉も口寄せ出来たからあり得なくは無いか?


「もしかして、影の神?」


笑顔で頷くアマネ。

マジかよ。

この世界に管理AIが来てるなんて、どうなってんだ?

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