第114話 異世界の首都トウリン。
ゆっくり走り出し外に出るとそこは、アスファルトのような舗装された道になっており、木に挟まれた道が続いていた。
祠を出て後ろを見るとこちら側の祠は、山の斜面にしっかりコンクリートで出入り口が作られている。
街に近いから?
「見張りは居ないのか?」
「カードが無いと転移は出来ないからな」
専用カードキーが必要なのか。
現代っぽい。
舗装された道だからなのか、あちら側を走っていた時よりもスピードを出し走っていると森がすぐ終わり、開けた場所に出る。
岩と土の大地に所々草地があり、木々も点々と生え、なだらかな斜面の大きな山というか丘のような山に挟まれた平地に一本だけ真っ直ぐ通っている道路。
地球の海外にもありそうな感じだが、決して地球には無いものが見える。
それは……。
「あれは骨?」
「ああ、ずっと昔からあるらしい。何でも、覚醒者が倒したとかって噂だ」
山より高い生物の骨。
骨の下は大地が窪み、肋骨の部分と微かに尻尾らしき部分の骨が残っているが他はおそらく、土の中に埋もれてるんだろう。
もしこれが生きていたら全長は、約500メートル以上はあるはず。
あれを倒したのか。
俺ならどうやって倒すかな?
最初は刀で斬れるか試し、一通り技を喰らわせて生きてるなら最後はやっぱり、落星か神星?
「ほら、後ろの山の向こう側に、大きな山が見えるだろ?」
バックミラー越しにそう言うので後ろを見ると、確かに俺達が出て来た山の遥か向こうに、高い山が見える。
「あの山が転移する前に居た辺りだ」
「なるほど」
かなり離れてるな。
って事は、後ろの山の向こう側に、神の民が居るのか。
「と、街が見えてきた。あれが首都トウリンだ」
「ようこそ、仁皇国へっす!」
真っ直ぐ続く道路の先に、まだ先の方だが横に走る高い山があり、その後ろに更に高い灰色の壁が見えた。
話を聞くと大昔、山を防壁に使っていたらしく、その名残で山を削って壁を建てたそうな。
天然の防壁ね。
道路を走って数分後、徐々に近づく壁はスカイツリーよりも高く、自然の岩壁と人工壁が融合したような壁が、左右に数キロ続いていた。
道路は、高さ約30メートル、幅約20メートル程ある大きな整備された入り口の中へ続いており、中に入ると数百メートル進んだ所で巨大で頑丈そうなゲートの前に辿り着くと停車。
すると少しして右側の壁の一部が横にスライドして開くと、特殊部隊が着るような恰好をした兵士っぽい者が2人、アサルトライフルのような銃を持って出て来た。
前の兵士が周囲を警戒しながらこちらへ進み、後ろの兵士は散歩でもするかのように歩いて来る。
レバックが窓を開けて挨拶を交わす。
「お疲れさん」
答えたのは後ろを歩いていた男。
「ようレバック、もう帰って来たのか? 昼過ぎになるって言ってたよな?」
「ああ、いろいろあってな」
そう言って後ろを親指で指すと、兵士が後部座席を覗き込み俺を見るとニヤッと笑い。
「ナンパか? お前も好きだねぇ」
「街の外でナンパなんてするかよ。ってかナンパなんかした事ねぇよ!」
「で? そちらのお嬢さんは?」
「魔境を超えてやって来た侍のシズキさんだ」
するとヘルメットから覗く目が鋭くなり、真剣な表情になる。
「それは本当か?」
「ああ、話しを聞いたら本当っぽい」
「お嬢さん、魔境の向こうから来たってのは本当か?」
「ああ、武者修行で魔境の魔物を狩って北上してたらこちら側に出てな。拙者も初めての土地で、右も左も分からず迷っているところ2人に会ったんだ」
「なるほど……身元保証はお前がするのか?」
「トズだと何かあっても責任取れないからな。俺しか居ないだろ。だが、南方の情報が入るんだ。優遇されるだろ?」
兵士は首をすくめ、どうなるかは分からないと言った具合だ。
「仲間が1人、途中ではぐれたらしくてな。北上を続けてるはずだからいずれ街に辿り着くはずだ」
「あぁ、見張りに言っとく。お嬢さん、何か問題を起こせばレバックが責任を負う事になる。大人しくしてろよ? 役所で身分証を発行してもらえれば、自由に動けるようになるからな?」
「分かった。ただ、絡まれた時や手を出して来た時は、それ相応の対処をするぞ?」
「はは、そういう奴らは痛い目に合わせてやればいい。ただやり過ぎるなよ? あと街中で刀は持ち歩くな。それだけで逮捕されるからな」
銃刀法違反か。
「分かった」
「よし、通って良いぞ」
そう言うと兵士がゲートの方に向かって手を上げると、ガコッと一瞬音がすると大きなゲートが真ん中で割れ、ビービーとサイレンを鳴らしながら開いていく。
車が通れる程開くとレバックは兵士に挨拶をして車を走らせ、ゲートの隙間を通って中に入ると変わらない道が続いており、数十メートル走ると右へ緩やかなカーブになってすぐ真っ直ぐの道に戻ると、正面にトンネルの出口が見え外の光が溢れていた。
すぐその光の中に入りトンネルを抜けるとそこは、高速道路のようになっており、車が一台も走っていない。
「おお、都会だな」
「これが首都トウリンだ」
「綺麗っしょ?」
「ああ」
なんだか懐かしい感じだ。
日本の現代っぽい。
まあ、所々異世界っぽいのがあるけど。
おそらく魔法を使ってるんだろうが、点々と浮いてる直径約5メートル程の球体がある。
それと道路沿いには、等間隔で魔法陣が刻まれたモニュメント。
「あの球体は?」
「あれは、監視用の媒体だな」
「あれで犯罪が起きないように見張ってるんすよ」
監視社会か。
魔法陣が刻まれたモニュメントは、緊急時に結界を張るための物らしい。
カリムス王国とはまた違った発展の仕方だな。
この国もプレイヤーが関わってるはず。
じゃないとこの街並みはありえない。
「どこに向かってるんだ?」
「俺達の事務所に向かってる。そこで上司と話をしてくれ」
「話してる間に身分証を作ると思うっすよ」
「何を話せば?」
「いろいろ聞かれると思うから答えてくれ、南方がどうなってるのか、どんな国があるのか、魔境の中がどうなってるのかだな」
「その程度なら答えよう」
「助かる。あと5分で着く」
「分かった」
何とか街に辿り着けたし、この国も日本語が使われるようで良かった。
看板には日本語が書かれてる。
他に知らない文字も所々使われてるけど。
この世界の元からある文字だろうな。
ってか、英語まで使われてるんだが?
ここが仁の国なら知り合いのプレイヤーが居るはず。
まだ来てない可能性もあるが、住人も居るかな?
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