第107話 魔の領域越え開始。
魔の領域の入り口である岩山の手間にギンジと転移した俺は、周囲を警戒しながら行動方針を伝える。
「北側へ行くのが目的なので魔物は基本無視だ。もし逃げられない場合は、俺が足止めするからギンジは先に北へ抜けろ」
「それなら僕がやります」
「いや、強い魔物の場合、ギンジだとやられる可能性がある。なので俺が戦う」
するとギンジは、悔しそうな表情をしながら頷く。
「リングを使わずに念話は出来るか?」
「はい」
「よし、なら問題無い。指示を送ったら即行動しろよ」
「了解です」
魔の領域の方を見るとまだ日が完全に上がってないので、薄暗い荒野が広がっている。
とりあえず、血穴を超えないとな。
「行くぞ」
「はっ!」
そう言って影に潜るとまず影渡りで移動出来る限界の、1キロ先にある影へ転移し、影の中から周囲を確認。
まだ荒野なのですぐさま次の影へ移動。
ただ移動するのも勿体ないので、雑談をする事に。
『なあギンジ』
『はい?』
『お前も看破は持ってるよな?』
『はい、持ってますがそれが?』
『才能って何か分かる?』
『あぁ、あれですか。僕も見た事ありますがまったく意味が分かりませんでした。そもそも才能になぜ職業なのかと思います。スキルなら分かりますが』
確かにそうだな。
なぜ才能が職業を表してるのか……。
『親がその職業だったとか?』
『いえ、元プレイヤーか元住人なら分かりますが、この世界の人も同じような情報でしたから、親は関係無いと思います』
『この世界にも職業システムがあるとか?』
『だとしたら今も残ってるはずですが、そんな話は一度も聞いた事がありません』
うむ、だとしたら……分からん。
才能に職業……。
『今まで見た才能の中に、見た事無い職業ってあったか?』
『いえ、全部GFWにあった職業ですね』
『教授を見た事はある?』
『はい、赤の魔女ですがそれは、見る前に聞いていたので』
『その時も才能だった?』
『いえ、赤の魔女は職業で、他にも才能に魔法使いと錬金術師がありました』
元プレイヤーで錬金術師?
おかしい。
錬金術師は住人専用の職業だったよな?
なぜ……って、現実になった影響か。
何か職業に就く方法があるのかも?
『教授に才能の話をしたら、ただその人に適正がある職業なのではないかと言ってましたね』
適正がある職業……つまり就けるって事だ。
『それと、僕がGFWの元プレイヤーだから、分かりやすいように情報がそうなっていたのかもとおっしゃってましたよ』
あぁ、それは何となく分かる。
才能か……。
『まあその内……っ!? 散開!!』
影の中を移動して森に入り暫くすると物凄い殺気と魔力が迫るのを感知し、ギンジに指示を出しながら俺も離れた場所へ転移する。
その直後、殺気と魔力が方向を変えて俺の方へ向かって来た。
『師匠! 何か来ます!!』
『先に行け!』
『はい!』
すると次の瞬間、別の方角から巨大な魔力が弾丸のように迫り、すぐさままた別の影に移動した次の瞬間、魔物が俺が潜っている影に向かって拳を振り下ろすと地面が弾け飛び、影が無くなって外に弾き出されてしまう。
土や岩が舞う中見たのは、人型の魔物。
全長約2メートル、全身白い肌に金色の模様が入った筋骨隆々の魔物だ。
額全体から頭に沿って太い角が伸びており、盛り上がった額の下に白目の部分が黒く瞳が金色で鼻の部分に穴が2つ空いてるだけ。
その下に鋭い牙を揃えた大きな口がある。
『師匠、追い付かれたので応戦します!』
空間感知と魔力感知、気配察知で周囲を探ると1キロ程離れた場所に、ギンジが魔物と居るのが分かった。
あっちも影から出されたようだな。
そこで俺は、魔物が作ったクレーターの中に着地。
『応戦するな。とにかく北を目指せ、俺が足止めする』
『ですが……』
『師匠命令だ』
『分かりました』
ギンジが縮地で移動し、影に潜ったのを感知で確認すると地面を殴った魔物が、地面を蹴って俺の目の前に一瞬で姿を現し、右拳を打ち込んで来る。
俺はギリギリ後ろに跳んで避けるが地面を殴り、その衝撃波で弾かれてしまう。
なんて殺気だ。
そしてあの動きと魔力。
……かなり強い。
看破で見ると。
『【種族】原初の末裔
【特徴】超速再生、適応』
これだけが頭に浮かんだ。
原初の末裔?
何だそれ?
原初の悪魔か?
やっぱりこいつも再生を持ってるようだな。
適応ってなに?
一瞬で思考を巡らせているとギンジからの念話が届く。
『逃げられません! 移動した先に奴の仲間が……っ!?』
『どうした? おい、ギンジ』
弾き飛ばされた状態から身体を捻り、地面に着地すると空間感知、魔力感知でギンジが居た方に全力で広げ探ると、こいつと同じような魔物にギンジが殴り飛ばされて木を何本もへし折っているところだった。
これは非常にマズい。
目の前のこいつを始末してすぐギンジの所へ行かないと、ギンジは死ぬ。
『GUOOOOO!!!』
魔物が全身に力を入れて叫ぶとそれだけで、全身がピリピリする。
「良い殺気だ」
魔物はそうでなくちゃ。
だが、今は時間が無い。
俺は加重を解き、閻魔鉱の装備を収納し、忍者姿の分身を1体影の中に作り、ギンジの方へ向かわせると同時に縮地で魔物の背後に移動すると刀を抜きざまに首目掛けて振り抜き、奴の首を落とす。
奴の首がドサッと地面に落ち、俺は納刀するとギンジの方へ向かわせた分身と感覚共有し、ギンジの方に居る魔物に向かって影の中を移動してると次の瞬間、本体の視界が一瞬ブレると物凄い速さで飛ばされてる事に気付き、徐々に背中に痛みが広がっていく。
俺も何本か木を折りながら吹っ飛ばされている中、空間感知と魔力感知で奴を確かめると、切り落とした首から肉が盛り上がり、元の姿に戻っていく最中だった。
ようやく何本目かの木にぶつかり止まって地面に降りると、俺が吹っ飛ばされて出来た森の中の道の先に居る奴を見る。
すると奴は、完全に元の姿に戻り、すぐさま腰を落とすと物凄い速さで移動を開始。
再生持ちでも、首を落として死なないとか反則だろ。
そういう事なら、再生出来ないようにしてやる。
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