第99話 魔女スキル。

教授にスキルを教えてもらうため、ハンゾウを呼び出し特殊空間へ転移する。


「ほう、これが特殊空間というやつか、今度私も作ってみよう」

「それで、ざっと全ての職業スキルのやり方を教えてくれ」

「ざっとで良いのかい?」


魔法系は、デスロードさんの魔導書があるからね。

原初魔法がどんなのかまだ知らないけど。

理解は出来るはず。


「ああ、頼む」

「では、原初魔法から……原初魔法は無形魔法とも言われ、魔力制御でどんな魔法も行使出来る。勿論、相応の魔力は必要になるがな」


教授の話によるとゲームだと【魔法】と同じようにイメージして放つらしいが、現実になった今は、イメージよりも魔力制御が重要らしい。

ちなみに原初魔法は色によって特化を表してるだけで、基本は同じとの事。


「それなら誰でも出来そうだな」

「いや【原初魔法】と【魔法】の魔力制御はまったく異なる」


どう違うのか?

それは、イメージが違う。

本来魔力制御にイメージは必要無い。

が、原初魔法はイメージ必要になるそうだ。


先程イメージより魔力制御が重要だと言ったが、どうやらそれは間違いではなく、魔力制御にイメージを添えるような感覚だという。


「詳しくは後で説明しよう。次は【魔法陣】についてだが……」


ゲームの時の魔法陣は、設定画面でオリジナルの魔法陣を作るが今は、魔法陣を生み出そうとすれば数年、数十年単位の時間が必要になるらしい。

デスロードさんに貰った魔導書の記憶でも、そうなっている。


「魔法陣に掛かれた1つ1つの文字が魔力の流れを作り、空気中に存在する魔素と化学反応を起こして魔法が発動する。それが魔法陣というものだ。なので新たに作るとなれば、空間との化学反応を観察して生み出さなくてはならない」

「確かに時間の掛かる作業だ」

「ゲームの時は設定画面ですぐ作れたんだがな。ゲームシステムが欲しいよ」


ゲームではすぐ生み出していた魔法陣の記憶は、現実の記憶ではどうなってるのか聞くと、神(管理AI)に認められると魔法陣が使えるようになるようになってるんだとさ。


「流石に管理AIは、この世界に来てないか」

「どうだろうね? もしかしたらどこかに居るかもしれないよ?」

「管理AIが居たら、それこそこの世界の神になるんじゃね?」

「はは、だとしたらクラスアップをしてほしいものだ」


そうだよなぁ。

ゲームの時にクラスアップ出来なかった人は、結構居るだろう。

試練を乗り越えたら神に力を授かる……どっかに祠を作って祈れば、クラスアップが出来れば良いんだけどね。



【魔法薬】は、魔力とマナで生み出すスキルで、魔力制御とマナ制御、俺で言う神気の制御だな。

それとイメージで生み出す事が出来るが、俺はダンジョン由来のスキル【物質生成】を持ってる。

これも魔力とマナで物質を生み出すスキルだ。


しかし、話を聞くとどうやら物質生成とは違い、水や鍋を用意する必要があるらしく、鍋に入った水に魔力とマナを注ぎながらイメージして暫く混ぜていると、魔法薬が完成するとの事。


「まさに魔女って感じだな」

「だろ? よく拠点で怪しい煙を出しながら作ってたよ」


そう言って少し遠い目をする教授。

妹や友達と作っていた頃の事を思い出してるんだろう。


「今は作ってないのか?」

「いや、たまに作ってる。若返り薬などを作って売れば、良い金になるからね」


小遣い稼ぎか。


「で、最後の【環境創造】だがこれは、かなり難しいぞ?」

「分かった」

「まず、魔力とマナを練るのだが同時に練るのが難しい、そしてイメージを固めて『同時』に周囲へ広げる……どうだ? 難しいだろ?」


……それってエーテルになるんじゃね?

教授は気付いてないようだが。


「一回見せてくれ」


すると頷いて目を瞑ると3秒程して一気に、教授の足元から広がるように綺麗な花が咲いた草原へと景色が変わっていく。

その際微かに、いろんな色の光がキラキラと舞う。


環境が変わっていく際、微かにエーテルを感じる事が出来た。

間違いなくこれはエーテルだ。


教授が目を開けて周囲を見回すと、笑いながら言う。


「どうだい? 綺麗だろ?」

「ああ、綺麗だ……教授」

「なんだい?」

「今何を使ったのか理解してるかな?」

「? 魔力とマナ……って訳じゃなさそうだね」

「これは、間違い無く国を滅ぼせる力だ」


そこで教授は目を細め、真剣な表情へと変わる。

どうやら理解したようだな。


「つまり危ない思想を持った奴に知られれば……」

「ああ、間違いなく大勢の人が死ぬ、下手した他の生物もな」

「ゲームの時もそんな感覚はなかったが……キジ丸氏はこれを知ってるようだね?」

「それは、エーテルだ」

「エーテル? 地球で言うエーテルとはまた違うんだろう?」

「勿論、ゲーム世界でのエーテルは……」


俺は教授に、エーテルとは何かを説明した。


「原初のエネルギー……キジ丸氏は何でそんな事まで知ってるんだ?」

「神、管理AIに聞いたからね」

「管理AIに会ったの!?」

「転職クエストでな」

「転職クエスト? そんな話しは聞いた事が無いぞ」

「最上位職業に転職する時は、神の試練をクリアしないとなれないんだよ」

「はあ~、流石最強プレイヤーだね。そんな隠し要素があったとは……魔女の最上位職業は何だろう?」

「さあ? それよりエーテルは、絶対誰にも知られないように」

「それは分かってるさ……キジ丸氏はなぜ、私に話したんだい?」

「知らずに使ってると危険だからだ。下手したら爆死する危険もあるからな」


俺がそう言うと青い顔をしてブルッと身体を震わせる。


「今まで何度も使って来たが、爆死する危険があったのか……」

「環境創造として使ってるだけなら問題は無いと思うが、ここは現実、ふとした瞬間に違う使い方をする事もあり得る。だから話した」

「……確かにそうだな。いや、ありがとう。今後はエーテルについても研究してみよう」


俺はゲームの時だったから良かったけど現実になったいま、エーテルが暴走したら確実に死ぬ。


「ところでキジ丸氏は、そのエーテルを扱えるのかい?」

「まあ、ある程度は」

「つまり?」


俺はエーテルを練りイメージを固めながら、周囲に展開させた。

その瞬間、俺の足元から花畑だった景色は、黒に近い紫色をした木々が生える、深い森へと姿を変える。


「流石最強だね。既に環境創造が使えるとは……それにしても暗い森だね?」

「ゲームで行った事無い? これはGFWにある、魔の領域の景色だよ」


それも、最奥の魔獄だ。

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