第97話 魔力の術理。
雷を受けた魔物は、焼け焦げたり弾けたりして範囲に居た全ての魔物が絶命。
お陰で荒野にぽっかりと、魔物の居ない空間が出来上がる。
俺は刺した刀を抜いて首をコキっと鳴らし、周囲を見回す。
鋭い牙を見せながらシャーシャー鳴いてる魔物達。
あれだけ始末したが未だ大量に残る魔物は、全方位から俺に向かって迫って来た。
徐々に距離が縮まる中俺は、腰を落として意識を集中させると、術理を意識して技を発動。
影明流・瞬殺
すると次の瞬間、俺まで後50メートル程の所まで来ていた魔物達は、全て首と胴体が綺麗に切断され絶命。
全ての魔物が2回の斬撃を受けている。
元居た場所に戻っていた俺は、技の切れを確認して少し修正。
もっと身体を使って斬らないとな。
一番前の魔物が死んだがそれでもお構いなしに後方の魔物が迫る中、続けて技を発動させた。
影明流・魔閃
その場で一回転すると迫っていた魔物達は、刀から伸びた魔力の刃で後方に居る魔物を巻き込み切断。
……なるほど、魔力にも術理は応用出来そうだな。
魔閃で斬る時、術理を意識してやるといつもより、切れ味が増したようだ。
俺はもう一度その場で魔閃を発動させ、迫る魔物達を切り裂く。
……違う、もっと速く流さないと……いや、そうか。
術理を意識して流すタイミングを計ったが、魔力に術理を応用するなら力の『流れ』を作らないといけない。
つまり、魔力の『流れ』を、斬るより『前』に作る。
術理では、力を相手に伝えるための構造や力学が使われているが、魔力はまた別物。
力は身体を使って力の道を作るが、魔力は魔力制御で作れる。
なら力の流れとは別に考え、体内でいつでも『斬れる』状態を作っておけば良い。
力の流れに合わせる必要は無いのだ。
斬れる状態を作り、それを『重ねる』事で、魔力の術理はより高みに行けるはず。
こんな風に。
刀に纏っていた魔力がスッと消え、俺は腰を落として意識を集中させるとその場で、もう一度一回転し、振り切った構えで止まる。
すると迫っていた魔物達に線が入り、2秒程して身体がずり落ち血を噴き出す魔物達。
その1秒後、数キロ離れた岩山もずり落ち、大きな音を響かせ土煙を上げた。
影明流・魔閃、ここに完成。
いや、まだまだ先があるはず。
今後も精進しないとな。
外から見れば俺が刀を振り抜いた時、魔力の刃は見えなかったはず。
極限にまで鋭くした魔力の刃は、空気のように無色透明となり、視認する事は不可能。
ただこれを発動させるには、まだまだ時間が掛かり過ぎる。
連続で使用が出来ない。
もっと瞬時に発動させられるようにならないとね。
周囲を見回し、今の一撃で殆どの魔物が絶命した事を確認。
もう迫る魔物が殆ど居ない。
というか、死んだ仲間の死体を食ってるんだが?
食えたら何でも良いのかよ。
ふと空を見上げるとカゲが、上空で蛇と戦闘を繰り広げている最中だった。
全身を黒い炎にして蛇に突撃し、蛇が放った雷が直撃するがお構いなしに突っ込み、蛇に当たった瞬間、カゲの身体が弾けるように広がり、黒い炎が蛇を包み込んでいく。
蛇は空中でクネクネと動き回るが炎は消える事なく、徐々に蛇の全身を焼き、少しすると力なく地上へ落下を始める蛇。
落下の途中で纏っていた黒い炎が離れて行くと、炎が一か所に集まってカゲの姿に戻る。
あれはカゲのユニークスキル【
自身の身体を火や水に変化させるユニークスキルだ。
魔力感知で落下してる蛇がまだ微かに生きてる事が分かった俺は、地上に落ちたら魔閃で斬ってやろうと準備をする。
だがカゲは、追撃をしようと空中を駆け落下する蛇へ向かい、爪で切り裂こうとした瞬間、ドンッ! と高く土煙を上げながら地中からディルタナが飛び出し、落下していた蛇に噛み付こうと口を大きく開けていた。
そこには蛇に接近していたカゲも居るのでこのままだと、一緒に食われてしまうと思い、刀を横一閃。
ディルタナの胸辺りに線が入り、口を開けたままの状態で切断され血を撒き散らしながら身体が二つに分かれる。
『ありがとうございます』
『後は任せた』
『はっ!』
カゲはそのまま落下中の蛇に近付き、落ちるよりも速く通り過ぎると蛇は、空中で切り裂かれ絶命した状態で地面にグシャッと落ちる。
食える部分が残ってるのか微妙だな。
なんて思ってると落ちたディルタナの死体へ地上に居た魔物達が群がり、食い始めていた。
そこでようやく気付く。
こいつらは、ディルタナの子供じゃない事に。
似てるがまったく違う魔物。
なぜって?
ディルタナは、地中から飛び出す時、地上の魔物達を食いながら飛び出して来たのだ。
死体となった口の中に、地上の魔物の死体が残ってる。
それに、見た目は似てるが、細かい所が違う。
地上の魔物は、ツルっとした頭に小さな穴が幾つか空いてるがディルタナには無いし、爪の形も違うしね。
ってかこの世界の魔の領域は、本当に魔の領域だな。
普通の人が見たら絶対吐く。
既に地上に居た魔物達は、俺ではなく仲間の死体やディルタナの死体に群がり食い漁っている。
今回はこれで終わりかな?
『カゲ、そろそろ戻るか』
『了解です!』
俺が小さなディルタナの死体を数体収納してると横へカゲが下りて来たので跳び乗り、すぐさま上空へ向かって駆け上がる。
どしゃ降りの中、地上を見下ろすとまだまだ広範囲に、地中から出て来た魔物達が蠢いていた。
これ全部を相手にするなら落星か神星を落とした方が楽だな。
しないけど。
魔物達が俺達を追って来ない事を確かめながらアバッテ王国へ向かい、カゲに乗ったまま今後の事を考える。
魔の領域にディーラインを通すのは不可能。
俺だけ抜ける事は可能。
他の人達が北側へ行くには、後は……海しか無いか。
でも、海にも魔物は居るって言ってたしな。
海中かそれよりもっと深くにディーラインを通せば、いけるんじゃね?
……いや、出来るならとっくにやってるか。
やってないって事は、何かしら出来ない理由がある。
やっぱり、一番は古代都市の高炉を停止させるのが一番良いんだろうけど、停止させたらこの星が消滅する可能性があるしなぁ。
…………よし。
海の方を確かめて行けそうなら海から行って、それが無理なら……俺だけでも先に北側へ向かい、あちら側から行き来出来る方法を探そう。
こっち側と違う発展をしてるかもしれないし、もしかしたら何か良い方法があるかも。
そうなるとギンジをどうするか……絶対付いて来ようとするよねぇ。
こうなったら巻物作成で影渡りを取得させるか?
一応試練をやってからの方が良いかな?
……いや待てよ?
印を付けて置けば行き来出来るし、俺に付いて来なくても偶に戻って鍛えてやる事は出来るか。
ん~、試練でクラスアップが出来れば良いんだけど。
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