第84話 魔の領域について。

ソファに場所を移し、教授とギンジが一緒に座り、対面に俺が座って話を続けた。


教授は魔の領域の研究のため、何度も入ってるらしい。

ちなみに魔の領域に入るのは、当然地上からだ。


ゲームの時の魔の領域は、広大な森だったがこの世界は、森、山、雪、湖、荒れ地、遺跡といろんな場所があるとの事。


「私が行ったのは森だが、森まで後200メートルという所まで近付いた時点で、即引き返した。その理由は、私達が近づいている事に気付き、森の中で大量の魔物が待ち受けていたからだ」

「感知系の能力を持った魔物か」


どんな魔物だったのか聞くと種族はいろいろ居たという。

狼のような四足歩行の魔物や二足歩行の魔物。

遠くから見ても分かる程の大きさで、近くに行けば小さい魔物でも全長約3メートルはあったそうな。


その後、データを集めるために荒れ地や雪のある領域に向かい、その都度魔物の待ち伏せを受けた。

だが、そんな中でも3回だけ入る事に成功した事がある。


そのお陰で魔の領域がどうなっているのかある程度知れたんだがその結果魔の領域には、人型の魔物も居る事が判明。


「しかもそいつ、言葉を理解していたのだ」

「魔物が言葉を理解ねぇ」


ゲームにも居たけど、クチナがこの世界に居るならゲームの魔物が居てもおかしくはないか。


「ほら、これがその時の映像だよ」


そう言ってリングを起動し、空中にホログラムで画面を出して映像を映し出す。

そこには、4人の特殊部隊員っぽい格好した人が映っており、ライフルを持って岩山の間を忍び足で進んでいた。


「私はこのカメラの後ろに居て後方を警戒しながらデータを集めていたんだが……あの岩の先」


映像に集中して見ていると大きな岩が前方に見え、徐々に近づいて岩陰に隠れながら覗き込んだ瞬間、素早く岩陰に隠れる。


どうやらこのカメラは、隊員の胸に着けたボディカメラのようで、咄嗟に隊員が隠れた事で一瞬しか映らなかったが、ハッキリ見えた。

教授が映像を巻き戻し、岩の先に居る者を映し出したところで停止。


「これが人型の魔物だ」


そこには、肌黒い全身に服は着ておらず、筋骨隆々の身体をして所々に金色の血管のようなものが通っており、顔には口と鼻だけで目が無い魔物。

額から頭頂部に掛けて触覚というか角のような物が生えている。


そんな魔物が6体。

しゃがんで何かやってたり、別の方向を向いてる魔物も居るがこちらを見てる魔物が2体。


「この後、こいつらが近づいて来たから即座に撤退、領域を出るまでに護衛の者が2人殺された」

「ん? そんなに魔物が多くないように見えるけど? これだと入れるんじゃ?」


すると教授は首を横に振り答える。


「いや、私達もそれで足を踏み入れて撤退する事になったんだが、どうやら魔の領域には、定期的に魔物の数が減る時があるようでね。だが奥に行けばいつも以上の数が待ち受けているのだよ。だから入れない……奥にはね」


更に教授は、この魔物は銃が効かず、魔力を使う教授でも倒せなかったとの事。


「そんなに強いのか?」

「ああ、消えたと思うと近くに居て殴り飛ばされたよ。まあ、咄嗟に結界を張ったから助かったけど、一撃で結界を砕かれたからね。全力で魔法を放って撤退したってわけさ」


教授は魔法使い系の職業らしい。

話を聞く限りじゃ、近接タイプの魔物。

その撤退の時の会話をその魔物は、理解して行動していたそうな。


そこでギンジを見る。


「僕でもあれは倒せないですよ」

「遭遇したのか?」

「僕は森から入りましたがその時現れたのが、先程の魔物です」

「森にも居るのか」


魔の領域全域に居そうだな。

ギンジの話では、強さはゲームに居たSクラスの魔物以上らしく、その攻撃は防いでもダメージを受ける程重いという。

Sクラス以上ねぇ。



俺はそこでふと気になり、教授に雨の日はどうなのか尋ねる。

環境が変われば魔物の動きも変わるはず。


「雨の日に行った事は無い」

「データを取ってないと?」

「機械を使うし雨だと視界が悪くなる。そんな状況で行けば死ぬ確率が高くなるだけだからね」

「なるほど……じゃあ、雨の日に行ってみるか」

「ふむ、雨の日か……確かに普段と変わる可能性は高いが相手は魔物。雨程度で変わるとは思えないが、試す価値は有りそうだ」


普段行けば、大量の魔物が居て入る事は出来ないが、定期的に奥へ引っ込む時がある。

その時は、奥に行けばいつも以上の数が居て余計に入れない。


うむ……定期的に奥へ引っ込む理由が気になるな。

魔物が領域を移動するのは、繁殖や脅威が現れた時か後は……食事。


「教授、魔物が定期的に奥へ引っ込むのは、どれくらいの期間か分かる?」

「バラバラだが、だいたい3日くらいだな。1日で戻る奴も居れば1週間戻らない奴も居る」

「それはどうやって調べたか聞いても?」

「魔力を検知する装置を使った。それで半径200メートルの魔力を把握出来る」


ほう、そんな装置を作ったのか。


「そうそう、その装置で分かった事だが、領域の奥、魔物が集まってるさらに奥には、一際大きな魔力を検知した事がある」

「それはどれくらいの?」

「ん~、説明しにくいが……Sランクの魔物以上と言えば分かるかい?」

「Sランクってこの世界の魔物のランクだよな?」


頷く教授。

マジか、あの倒した魔物よりデカい魔力?

って事は、ゲームでいうSSクラスの魔物よりデカいって事ね。

それはヤバいな。

出て来たら確実に国が滅ぶレベルだ。


「それでも行くのかい?」

「ん? あぁ、当然行く」

「はは、流石最強だね」

「僕も一緒に行きましょうか? 役に立てるか分かりませんが」

「いや、俺とハンゾウだけで良いよ」


後はカゲと夜叉も居るしね。

と思っているとギンジが驚いた表情をし、慌てた様子で言う。


「えっ、あの、ハンゾウが居るんですか!?」

「ああ、居るけど?」


すると教授が前のめりになり口を開く。


「最強忍者のハンゾウが居るのかい?」

「……ハンゾウ」

「はっ」


俺はソファの横に忍者の分身を出した。


「おお、ハンゾウ氏まで居るとは、これなら……」

「あの、ハンゾウさん、お願いがあります!」


凄い勢いでテーブルに手を突き、ハンゾウに話し掛けるギンジ。

なので分身で答える。


「何だ?」

「僕を弟子にして下さい!」

「はっ?」


やば、ハンゾウで素を出してしまった。

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