第80話 異界の里のメンバーとして。

俺の笑みを見て引くクレナイ。

落ち込んでいるオーズは、気付いてない様子。


すると黒ずくめ達も目を覚まし、口を開く。


「し、師匠……」

「ん? あっ、師匠」

「何が……」

「すみません師匠」


クレナイを見ると苦笑いを浮かべながら告げる。


「お前達、今までご苦労だった」

「師匠?」


首を傾げる黒ずくめ達。

こいつもしかして。


「俺はこの組織を抜ける。依頼で潜入してただけだからな……今後は自己鍛錬を積め、そしていつか……」

「ちょっと待ったぁ!」

「何だ?」


目を見開いて見て来るクレナイ。

思ったとおりの事を言いやがって、ふざけてんのかこいつ?


「お前、こいつらの師だろ?」


頷くクレナイ。


「だったら最後まで面倒を見ろ、それが師としての責任だろうが」

「はっ? いや、俺はもう……」

「この組織を抜けるってか? 馬鹿かお前?」

「あぁ? なんだとコラ?」


凄むクレナイを無視して続ける。


「せっかく組織内部に入り、長年掛けて育てた弟子も居る組織を抜けるとか、馬鹿の極みだろ」

「喧嘩売ってんのかお前?」

「クラン異界の里マスターとしてメンバーであるクレナイに任務だ。エインヘリヤルをお前の組織にしろ」

「は? ……いやいや、何言ってんだお前? 確かにクランメンバーだったがそれはゲームの時の話しだろ? ここは……」

「クランマスターとしての命令だ」

「っ!?」


軽く威圧する。


「俺にとってはお前も他の奴らも、クランのメンバーだ。例え世界が変わってもな……まあ、忍者という特殊な組織だが」

「キジ丸……」

「お前は忍者だろ? 使える物は使え」

「はぁ~、威圧してまで言うか?」

「お前、こっちに長く居すぎて忍者としての自覚が無くなったんじゃねぇの?」

「うるせぇよ」


どうやら納得したようだ。

すると黙って聞いていたオーズが申し訳なさそうに聞いてくる。


「キジ丸が異界の里のマスター?」

「ああ、そうだけど? あっ、これも言うなよ? お前らもな?」


黒ずくめ達は、よく分からずキョトンとしてるがオーズは、目を見開いて固まっていた。


「あの異界の里のマスター……」


俺のクランは、そんなにデカくはないが、謎の多いクランとして結構有名だったな。

そのマスターが目の前に居るとなれば、この反応になるのか?



一旦落ち着いたところでクレナイが口を開く。


「まあ、不老ではなくなったが、爺いになるまでには、俺の組織にしてやるよ」

「よし、良く言った。それでこそ異界の里のメンバーだ。褒美として不老にしてやろう」

「はい?」

「ん? いや、だから褒美に不老にしてやろうって言ったんだよ」


目をパチクリさせ固まるクレナイ。


「……いやいやいや、ちょっと待て、何でお前が不老に出来る!?」

「あれ? 言ってなかったっけ? 俺は時空属性を持ってるから不老なんだよ」

「何だそれ!?」


クレナイではなく、オーズが驚いてる。

するとクレナイは、目を瞑って少しすると目を開けて真剣な表情で答えた。


「本当に出来るのか?」

「やった事は無いが出来る事は分かる」


これもキジ丸としての記憶のお陰だろう。

スキルを魔力操作や身体操作として理解してるからこそ、分かった事だ。


「あ、あの、俺もお願いします!」


オーズが言うので黒ずくめ達も見ると首を縦に振る。


「お前らも? ん~、どうしようかなぁ?」

「俺は役に立ちますよ!? お願いします!」


オーズの言葉を無視して黒ずくめ達を見て問う。


「お前達は何のために不老を求める?」


すると1人の男が答える。

マスクで顔は見えないが全員男だ。


「もっと強くなるため、です」

「私もです」

「僕もです」

「俺も」


俺はその答えを聞いてニコっと笑う。

良いね。


「よし、お前らはクレナイの下で鍛えろ、そのための時間をやる。ついでに縛りも付けるからな」

「「「「ありがとうございます!」」」」


グルグル巻きで地面に横になったままの見た目だと面白いな。


「お、俺も、俺も強くなるためです!」

「……まあ、縛りがあるから良いけど、お前は今後、クレナイの下に付くんだ。良いな?」

「了解です!」

「あっ、そうそう、裏切った場合……俺の拷問フルコースをお見舞いしてやるからそのつもりでな? ちなみに俺の拷問は、忍者でも耐えられないぞ」

「あっ、はい」


顔を青くするオーズ。

そこでふと思い出す。


以前クレナイの弟子らしき者達を始末した事を。

なのでその事を伝えると。


「あぁ、あの馬鹿共か、あれ程手を出すなと言ったのに、どうりで連絡がつかない訳だ」

「カリムス王国にまだ居るんだろ?」

「退かせるか?」

「いや、何もしないなら情報収集目的で置いといても問題は無い。ただ……カリムス王国に手は出すな。これでも一応特別顧問なんでね」

「そんな肩書があるのか……分かった。数人残して後は退かせる」

「お前はエインヘリヤルを立て直せ。俺は北へ行く道を探す」

「ん? キジ丸なら行けるだろ?」

「俺だけが行けても意味無いだろ。誰もが通れる道を探す……または作る」

「了解。じゃあ俺は他のメンバーを集めて話をする。ウルが死んで契約が切れた奴らがどうするのか、意思確認してからまた連絡する」

「おう、あっ、ヴァルハラに行ったら連絡出来ないんだよな?」

「あぁ、どうする?」


うむ……どうしよう?


「衛星があれば連絡出来るんだがなぁ」


衛星?

地上から星の外にある衛星に魔力を飛ばし、そこから離れた場所に居る人に送って通信を可能にする。

と、簡単な絵で思い浮かべた瞬間、ふと思いつく。

要は衛星のように中継地点があれば良いのだ。

俺のイメージどおりにすれば出来るはず。


「それなら良い方法がある」

「なんだ? 衛星でも打ち上げる気か?」

「なんでだよ……俺の特殊空間を中継地点にすれば良い。そうすれば高炉の影響は受けない」

「特殊空間?」


俺はクレナイに、特殊空間を使った連絡方法を詳しく説明する事に。

これなら北側に居ても連絡が取れる。

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