第78話 戦闘終了後。

キジ丸が地下に到着した頃、店内に残っていたアキオとシュートは、のんびり飯を食っていた。


「マジで美味いなこの店」

「だよな。組織の隠れ蓑にしてる割には、しっかり美味い物を提供してる」


なんて話をしながら食事を楽しんで暫くすると、アキオが食い終わり、お茶を1口飲んで言う。


「話し合いはまだ終わらないのか」

「プハァ~……終わったら連絡がくるだろ? それまでお前も酒を楽しませてもらえよ」


アキオは、警察の者として任務中に酒を飲むのはどうかと、控えていたがシュートが美味そうに飲む姿を見て一杯くらいなら良いかとビールを注文。


キジ丸が戦っている最中も2人は、のんびりと酒を飲んでいると暫くして、突然姿を消した。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



今までユニークスキルは、技にしか使っていなかったが今後は、いろんな攻撃に使ってみる事に決める。


死んだウルの頭上でそんな事を考えていると、クレナイがこちらへ歩いて来て話しかけて来た。


「何をしたんだ? まったく見えなかったが」


戦闘が終わったのでキジ丸の姿に戻り一言。


「殴っただけ」

「殴っただけでこうなるか普通?」

「そこは極秘だ」

「技か……悪いな。助かった」

「何が?」

「本当は俺が始末しないといけなかったが、キジ丸にやらせてしまった」

「詰めが甘いからだ」

「あいつが暴走するとは思わなかったぜ」

「その様子だと、弟子にも甘そうだな。だから俺に勝てないんだよ」

「よし、もう一度勝負しようか、次は殺す」

「止めとけ、今の俺は先程より強いぞ? と言っても、さっきも本気じゃなかったんだけど……と、それよりあれってお前のユニークスキルだよな? 短剣が2本消えてたけど?」

「あぁ、あれは……」


クレナイが言うには、『秤上現武』というユニークスキルは、対価を払って現象を引き起こすスキルらしく、先程短剣2本を対価にして攻撃をしたそうだ。


「本当ならあれで動けなくするはずだったんだがな。まさか殆どの攻撃を耐えるとは、相変わらず化け物だな」

「スキルの内容を言って良かったのか?」

「問題無い、知られても対処が出来るようなスキルじゃないからな」


まあ確かに、何を対価にすればどんな攻撃になるのかなんてまったく分からん。


「クレナイもどんな攻撃になるか分からないのか?」

「んな訳ねぇだろ」


そりゃそうか、そんなスキルだとゲームでも使いづらいよね。


「さて、じゃあこれからどうするか……」

「そもそもキジ丸は、なぜここに来た? 捕まえた奴が俺と話をしろと言ったらしいが、どういう事だ?」

「話をする気があったのかよ」

「あの時は、ウルが居たから仕方なくだ。で?」

「それならシュート達も交えて話すか」

「シュート? まさかカリムス王国の将軍の事か?」

「今は上でビール飲んでるぞ。って、シュートの事知らなかったっけ?」

「将軍の事は知ってるが?」


ゲームの時にもって思ったがクレナイは、大会に出てなかったなと思い出す。

精霊魔王と戦った時も、クレナイは居なかった。


「まあ、とりあえず上に、ってこいつらは……始末するか」

「待て待て、オーズは別に良いが他は俺の弟子だから止めろ」

「うむ……とりあえず縛って放置だな。シュート達と話をしてからどうするか決めよう」

「上に行くのか?」

「いや、あいつらをこっちに連れて来る。のんきにビール飲みやがって羨まし過ぎるだろ!」


俺の言葉に苦笑いを浮かべるクレナイ。

それを横目に俺は、2人の影に潜ませている影分身と感覚共有をし、2人を影に沈めると影渡りで俺の下へ連れて来ると、ビールジョッキを片手にポカーンとして地面に座る2人。


「よう、美味そうだな」

「キジ丸?」

「あれ? 店に居たのに何で……」

「話し合いというか戦闘が終わったので、ハンゾウに言ってこっちに運んでもらった。でだ……エインヘリヤルのトップを始末してナンバー2で俺の……フレンドだったクレナイと話をするため、お前らも加わってもらう」

「ナンバー2!?」

「こいつが!?」


そう言ってジョッキを放り捨て立ち上がり、距離を空ける2人。

こいつら、酔ってんのか?

今更遅いだろ。


「とりあえず落ち着け、酔ってるなら覚ましてやるぞ?」


そう言って指をボキボキ鳴らす。


「だ、大丈夫だ。酔ってはいない酔っては……ただ混乱してるだけだ」


シュートはちょっと酔ってるっぽい。


「俺はまったく酔ってないぞ? それで? どういう状況?」


アキオの質問に俺は、経緯を簡単に説明し、クレナイがなぜ俺が来たのかという話をするとクレナイが。


「なるほど、確かにキジ丸なら出来るかもしれないが……」

「捕まえた女も言ってたが、何の話だ?」


アキオがそう聞くとクレナイは、少し考えて答える。


「……俺は別にヴァルハラの人間じゃないが、ヴァルハラの北側に魔物の巣があるらしくてな。それをどうにかしようとしてるらしい」

「魔物か……そう言えば、クレナイはどうやってこっち側に来た? 古代都市って通れないんだろ?」

「お前がそれを聞くか? お前も行けるだろ?」


あぁ、やっぱり忍者なら行けるって事ね。


「ヴァルハラ以外の国には行ったか? ゼルメアは? どうなってる?」


クレナイなら北側の事を知ってるはずと思い聞くがクレナイは、この世界で目が覚めたのは古代都市の中だったらしく、スキラスを撃退したながら北上してヴァルハラに到着。

その後、俺やクランメンバーが居ると思い北を目指そうとしたが、北に住み着く魔物が居て辿り着けなかったとの事。


クレナイでも勝てない魔物が居るのかと思っていると。


「クチナと後、見た事ない魔物が居たな」

「クチナ!? クチナが居るのかこの世界!?」

「ああ、間違い無くあれはクチナだった」

「クチナ? クチナってあの魔の領域に居たクチナの事か?」


シュートがそう聞くと頷くクレナイ。


「あっち側に居なくて良かった」


とはアキオの言葉だ。

クチナは、ゲームでは精霊に近い存在で滅茶苦茶デカくて強い魔物である。

手を出せば、辺り一面焼け野原になるほどの魔物だ。


クチナが居るとなれば、落星か神星じゃないと倒せないかも?

大陸に大穴が空くな。

あぁ、クチナが近くに居るなら安心して暮らせないよねぇ。

いつ焼け野原になるのか怯えながら暮らしてるのか、ヴァルハラの人達は。


それで古代都市の機能を停止し、南側の国が攻めて来たらって心配してたんだな。

そりゃ北に引けないとそうなるか?


「まあでも、クチナは手を出さなければ何もしない無害の存在だろ? って事は、見た事無い魔物っていう方が重要っぽいな」

「もう一体は、3つの頭を持つドラゴンだ」

「三頭竜!? そりゃ確かに見た事ねぇな」

「ゲームでも見た事無い魔物だ」


3人が話しているのを聞きながら俺は、心当たりを思い出していた。

クラスアップクエストで、影の神が用意したダンジョンに潜った時に戦った魔物。

あの時は、2つの頭のドラゴンだったがそれが3つになった魔物。


ゲームでは確か二頭竜は、地上に存在が許されないとして神(管理AI)によってダンジョンに封印されていたはず。

それが1つ増えて地上に居るって事は、かなりヤバいのでは?


……是非とも戦ってみたい!!

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