第77話 新しい使い方。

不動金剛術では、ウルに操られている者を止める事が出来ないようで、アキオとシュートに変装している者も攻撃を仕掛けて来た。


見た目はシュートとアキオだが強さは真似出来ないようだ。

俺を挟むように姿を現し、2人で短剣を振り抜いて来たので竜鱗鎧を発動させ防ぐと左側のシュート(偽者)の腹に蹴りを入れ、右側のアキオ(偽者)の腹に肘を打ち込み吹っ飛ばす。


残り1人の黒ずくめが魔糸で動けなくしている者の影から出て来ると、魔力を込めた短剣を心臓目掛けて背後から突き刺して来る。

だが竜鱗鎧によって防ぐと振り向きざまに裏拳を顔面に叩き込み、壁まで吹っ飛ばした。


「キジ……ハンゾウ、そいつらは操られてるだけだ。手加減してやってくれ」

「ん? 同情か?」

「一応俺の弟子なんでな」

「あぁ……だったらもっと厳しくやろうか」

「なんでそうなる」

「弟子だろ? 甘やかすな。忍者だろ」

「……死なない程度にしてくれよ?」

「それはこいつらの強さによるな」


なんてクレナイと話をしてると、不動金剛術で動けないはずのウルが居た場所から姿を消すと次の瞬間、俺は右側へ吹っ飛ばされていた。


まさか動けるとはね。

左から蹴りが迫って来たので咄嗟に腕でガードしたが、シュートの攻撃より重い。

おそらくユニークスキルを使ってる。


「僕を無視して下らない話をするとは、僕を舐めてるのかな?」

「ああ、舐めてる」

「この……」

「まあ、動けた事は褒めてやるがユニークスキルで自分を操作したんだろ?」

「そのとおり、僕のユニークスキル『生現操思』は、生物、物、力を操る事が出来る……こんな風に」


するとウルは、額に血管を浮き上がらせながらシャツがピチピチになる程身体が大きくなり、バランスの取れた筋骨隆々の姿になるとシャツを自分で破り捨てた。


筋肉、骨格も操作出来るのか。

後は力……つまりエネルギー。

次元エネルギーを使えるようにしたのは、ユニークスキル?


「どうだい? 素晴らしいだろ?」

「うむ、バランスの取れた肉体だな」

「完璧な肉体さ」

「見た目はな」

「言っただろ? 力も操れるって……なっ!!」


ドンッ! と土煙を上げながら物凄い速さで突っ込んで来るウルに対し俺は、エーテルを解除し、クレナイに告げる。


「他の奴は任せた」

「了解」


そこで俺の目の前に来たウルが右拳を打ち込んで来たので、一歩踏み込みながら上体を屈め避けると、奴の腹に右拳を打ち込む。

と同時に溜気を発動。


その瞬間衝撃波が発生し、ウルの身体は弾丸のようにすっ飛んで行き壁に激突。

壁を破壊し瓦礫に埋もれ土煙を巻き上げる。


ん~、ちょっとタイミングがズレたかな?

と、自分の右手を見て殴った時の事を思い返す。

ウルを殴った時、溜気を発動させたが溜気のタイミングは完璧だ。

しかし、俺の試したい事が上手くいかなかった。

次はもうちょっと早くしてみよう。


「おい、今ので終わりじゃないだろ? さっさと出て来い」


俺がそう言うとガラガラと瓦礫の崩れる音がし、ウルが姿を現すと口から血を流していた。

そんなに効いたのか?


「なんてパンチだ。一瞬意識が飛んでたよ」

「まだ全然本気じゃないんだが?」

「まあ、操作でダメージはすぐ消えるけどね」


ダメージまで操作出来るの?

ズルいなそれ。


前に出ると首をコキっと鳴らすウル。

すると奴は腰を落とし、腰に持っていった両手に青白い光を纏う。


「……死ね」


そう言い両手を前に出すと、奴の両手から無数の光の線が放たれ、俺に迫って来る。

操る糸か?

なんて思いながら除けるが途中で軌道を変え、常に俺を追って来るようだ。


縮地で距離を空け壁際に立ち、迫る光の線を見つめ当たる瞬間に影に潜り避けると光の線が壁に直撃するが破壊する事なく壁の中へすり抜けていく。

やっぱり操る糸っぽい。


次の瞬間、線を中心に約2メートルの範囲の壁が、砂のようになって崩れる。

触れたものを細かく砕くように操作してるのかな?


俺は影渡りでウルの影に移り、影から出ると右拳を奴の背中に打ち込み、溜気を発動させた。

その瞬間衝撃波が発生し、奴も俺も弾かれてしまう。


すぐさま身体を回転させ着地。

奴を見ると受け身を取り、地面に手を突いて跳ねると着地していた。


「なんだ今の攻撃は? 何か……いや、それよりよく避けたな」


奴の言葉を無視して俺は、今のタイミングを思い返し、今回はタイミングが速かったなと反省。

もうちょっと遅ければ自分が弾かれる事は無かっただろう。

タイミングが難しい。


「次は外さない」


奴がそう言うとまた光の線を放って来たので、ギリギリまで迫るのを待ち、影に潜るタイミングを見ていると背後に気配が現れ、俺を羽交い絞めにする。

黒ずくめを操って俺と一緒にやるつもりか。


「すまん! 一人抜かれた!」


遅いよ。

それにしても良い手だ。

確実に当てるためには、こうする以外無いだろう。

ただここに居るのが、忍者じゃなければの話しだが。


奴の光の線が俺の胸に入り黒ずくめの胸も貫くと次の瞬間、ウルの四肢が弾け飛び、その場でダルマ状態になり床に転がった。


「っ!?」

「今度は上手くいったな」

「はっはっはっ……」


ウルが短く呼吸をしながら目を見開き、倒れたウルの頭上に立つ俺を見る。


「な……なに、を……」


ウルの光を避けたのは空蝉術だ。


「訓練に付き合ってもらい感謝する」

「くん、れん?」


そこでクレナイと戦っていた奴らは、糸が切れたようにその場に倒れ動かなくなった。

この状態では、ユニークスキルを維持出来ないようだな。


「ああ、拙者のユニークスキルの訓練だ」

「ユニーク、スキル……はっはっはあはあはあ……はあ……はあ……はっ……はっ…………」


ウルは、目を見開きながら呼吸の間隔が徐々に開き、次第には呼吸をしなくなり絶命。


俺が試した事。

ウルに言ったようにユニークスキルを使った攻撃を試したのだ。


俺のユニークスキルは、生物には使えないがスキルや物には使えるという縛りがある。

ゲームの時は思いつかなかったが現実になった今、魔力を使った攻撃ならユニークスキルを使えると思い、溜気で試してみたが上手くいったな。


今回使ったのは、五法一術の1つ激化法である。

溜気に激化法を乗せて使ったらどうなるのか?

本来なら弾く溜気が激化法によって対象の体内を巡り、激化した力が四肢を弾けさせたってところだね。


今後も普通の攻撃にユニークスキルを使った方法を訓練しないと。

まだまだ強くなれる。

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