第74話 サーガとの戦い。

俺は脇差を収納し、刀の鞘を取り出すと腰に装着。

続けて脇差しも取り出し右腰に装着する。

これが侍の時の、俺の戦闘スタイルだ。


更に、服装もGFWで来ていた白シャツとズボンに忍換装の要領で瞬時に替え、準備完了。


「サーガ」

「何だ?」

「ここからは訓練ではなく、戦闘だ」

「だろうな」

「ウルの駆け引きで萎えた。あいつ、面白くねぇな」


肩を窄めて「さあ?」とやるサーガ。


「おいキジ丸! 本当に良いんだな!? お前がハンゾウだってバラすぞ!?」

「先にあいつを殺して良いか?」

「それはやらせない。その前にお前を殺す」

「そこまで俺を殺したいとはね。本当に誰だ? キジ丸としてもハンゾウとしても結構殺したけど、エデンのメンバーか?」

「いや、違う」

「エデンじゃない? だとしたら裏組織?」

「さあな。それより、自分の心配をしたらどうだ?」


すると次の瞬間、足元の影から手が出て来て足首を掴まれ、気付くと目の前にサーガの姿が。


「死ね!!」


振り抜かれる短剣の刃が俺の首を通り過ぎると、俺の姿は消えサーガの背後に瞬間移動をする。

空蝉術です。


ハンゾウだとバレてるなら、忍者スキルを使っても問題は無い。

キジ丸の姿で忍者スキルを堂々と使うのは、初めての経験だな。


奴の背後に移ってすぐ、刀を抜きざまに斬り上げ奴の右腕を斬り落とした瞬間、姿が消えて俺の背後に移動。

奴も空蝉術を使ったようだ。


頭目掛けて左足の蹴りが迫って来たので屈んで避けながら、身体を捻って右足で奴の腹に蹴りを打ち込むが、奴は吹っ飛ぶ事無くそのまま伸ばした俺の足首を短剣で斬ろうと両腕の短剣を振り抜いて来たのですぐさま引っ込め避ける。


そこから奴は、踏み込んでくると流れるような動きで、両腕の短剣による猛攻が始まった。


俺はギリギリ避け、弾き、受け流し、防ぐ中、サーガに問いかける。


「お前……そんなに俺を殺したいのか?」

「何を……今更!」


そして俺が体勢を崩した瞬間、奴の蹴りが腹に入り、後方へ吹っ飛ぶ。

10メートル程飛んだ所で着地すると既に目の前に来ていたサーガの短剣が、俺の腹に突き刺さった。


そこから続けて短剣で、俺の全身をサクサクと刺し、最後は後ろ回し蹴りで俺の頭を蹴り、吹っ飛び壁に激突。


「よし! 良いぞサーガ! そのままやれ!!」

「任せろ」


サーガは、自分の頭上に直径約3メートル程の火球を作ると、俺に向けて放つ。

俺が魔力で体内に印を書き、傷を治したところで火球が着弾し、大きな爆発と熱波を周囲に撒き散らした。


「いやぁ、危ない危ない」

「チッ、影に逃げたか」

「今ので死なないのか!?」


離れた場所に影から出ると皆驚くが、サーガは見抜いたようだ。


「次で終わらせる」

「ん? ほう、どんな手を使うのか見させてもらおう」


そう言うとサーガは、全身に金色の光を纏い始める。

これは……ユニークスキルか。

本気という訳だな。

俺も気合入れないとやられる可能性があるね。

でもちょっと試したい事があるので……。


サーガは、纏った光を周囲に放ち、俺が入るようにドーム状の領域を広げた。

範囲攻撃か?


秤上現武しょうじょうげんぶ


サーガがそう呟き、両手に持つ短剣を上に放り投げると2本の短剣が粒子になって消滅。

すると突然、危険察知が発動したので咄嗟にマナで全身を硬質化した瞬間、全身に無数の衝撃が走る。


硬質化した事で金属のような音が連続で鳴り響き、衝撃によって俺の身体が徐々に浮いて行く。


そんな中、硬質化しているのに身体の所々に、切り傷が生まれ血が飛び散る。

何だこの攻撃は、サーガは何もしてないのに攻撃が止まらない。


約30秒続くと最後に、目の前から気配がしたので腕をクロスして防ぐと両腕が切り裂かれ肩から腹に掛けて深く斬られてしまう。

硬質化してるのに斬られるとはね……。



約5メートル程連続の衝撃によって浮いていた俺は、斬られて地面に落ちるが何とか身体を回転させ、片膝を突きながら着地。


「短剣2本で仕留められないとは……だがこれで終わりだ」


サーガはそう言うとその場から姿を消し瞬時に、俺の背後へ移動したのですぐさま振り向きざまに刀を振り抜くが奴に当たる直前、手を止めてしまう。


その理由は、目の前に居るのが長い黒髪を縛って、毛先がぼさっとしたちょんまげにしている男だったからだ。


「……お前」

「驚いたか?」


そう言うと奴は、いつの間にか右手に持っていた刀で俺の胸を突き刺す。


「ぐっ……久し、ぶり…だな」


俺は胸に刺さった刃を左手で掴み、抜けないようにする。


「これでやっと因縁を果たせたぜ」

「あぁ……いつか、倒すって…言ってたもんな」

「どうだウル? これで良いだろ?」

「ああ、流石だ。これで邪魔は居なくなる」


俺は一歩踏み込みながら右手の刀を離し、奴の肩を掴む。


「満足…か? クレナイ」

「ああ、お前を殺すためにこの50年、鍛えてきたからな」

「そうか……そいつは良かった……」


そう言って笑いながら俺は、その場で倒れ絶命。

したように思うだろうが、ユニークスキルの錬生術で死んでいない。

錬生術を試すためにわざと受けたが、現実でも錬生術が有効だとは確認出来た。

でも完全復活まで少し時間が掛かりそうだ。


この場に居る者達は、俺が死んだと思っているようで話を聞く事に。

それよりもやはりサーガは、クレナイだったな。

こいつらが俺の正体を知ってるのは、クレナイに聞いたんだろう。

忍者で俺の正体を知ってるのは、クランメンバーと同盟クランだけだ。


ちなみにクレナイは、俺のクランメンバーで元プレイヤーだ。

初めの出会いは、PKをしていたクレナイを倒し、その後にまた襲って来たのを返り討ちにし、フレンド登録をした後、俺が作ったクランに誘って入った数少ないプレイヤーのメンバーである。


いつも、いずれ俺を倒すと言って鍛えていたからな。

まさかユニークスキルを習得してるとは思わなかったよ。

でも……ちょっと気になる事があるんだよねぇ。


それはクレナイが、本気で俺を殺しに来たのかという事だ。

後で確かめよう。


「ウル、これであいつは解放してやれよ?」

「分かってるさ。それより君は、このまま僕の配下として居てくれる契約だよね?」

「ああ、それで良い」


ほう、誰かを解放してやるために従ってるのか?

これはしばらく動かず、様子を見た方がよさそうだな。

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