第75話 裏がある?
クレナイに刺されたが錬生術で死ぬ事は無く、倒れたまま様子を伺っていた。
しかし、身体に違和感を感じる。
……あっ、血が出てない。
胸を刺されたのになぜ?
身体は……動かないな。
どういう事だ?
錬生術が発動してそろそろ動けるようになるはずなんだけど……もしかして死んでない?
血が出てない傷、動かない身体……ん?
この感じは……次元エネルギー?
まさか、刺した刀に次元エネルギーを流して血を出さないようにしてる?
俺を殺す気が無いのか?
いや、それならなぜ動けないんだ?
「ウル、キジ丸はまだ死んでない」
「生きてるの!? じゃあ、さっさと殺せよ!?」
「良いのか? 今なら縛りを付け、従わせる事が出来るぞ? 最強を従わせたいんだろ?」
なるほど、それで俺を生かしておいたのか。
「最強でもサーガの方が強いからなぁ……まあ、強い駒は欲しいから強制契約をしようか」
そう言って近づいてくるウル。
「前から思ってたが、そんなに駒を集めてどうする気だ?」
「サーガには言ってなかったっけ?」
「何も聞いてない」
「フフフ……アバッテ王国、カリムス王国、そしてヴァルハラ。この辺りの国を全て手に入れるためだよ」
「ん? エインヘリヤルはヴァルハラ王直属の組織だろ?」
「分かってないなぁ……ここは現実だよ? 歳を取らない僕には、永遠の王座が似合うでしょ?」
「国を裏切るって事か」
「いや、裏切るんじゃなくて本来あるべき姿に戻すのさ」
へ~、てっきりヴァルハラのために動いてると思ってたけど、結局は自分のために動いてたって事ね。
まあ、その方が分かりやすいけど。
とにかく、身体を動けるようにしないとな。
このままじゃ駒にされてしまう。
身体が動かないのは次元エネルギーの影響か?
……いや、これは不動金剛術を次元エネルギーでやってるっぽい?
だから魔力制御じゃ解けないんだな。
さっきからやってるのにまったく解けないんだよね。
次元エネルギーを使ってるならこれは、相性の良いエーテルでやれば解けるかも?
と思い、魔力とマナを混ぜてエーテルを練り、全身に流していくと微かに身体が動くようになってきた。
次に胸にエーテルを集め、刺し傷を覆ってそこにある次元エネルギーを包み込み、移動させると血が流れ出したのですぐエーテルで体内に印を書いて傷を治す。
そこでウルが俺の横まで来て口を開く。
「さて、元最強プレイヤーを僕の駒にしよう……『
右手を俺に向けてそう告げると、掌から青白い無数の糸が伸び始める。
こいつのユニークスキルか。
糸が俺に触れる瞬間、俺の姿はその場から消え、ウルの背後に立つ。
はい、空蝉術です。
「消えた!?」
「後ろだ!」
オーズが叫び、ウルが振り向こうとするが遅い。
右手に持つ刀を振り抜き、奴の首を斬り落とそうとするが直前で、クレナイの刀によって止められる。
「サーガ!」
「油断するな。こいつは最強だぞ?」
「もう良い! さっさと殺せ!」
「キジ丸……よく俺の不動金剛術を解けたな?」
俺は刀で押しながら鍔迫り合いをし、笑みを浮かべて答えた。
「次元エネルギーを使うとはね。相当鍛えたようだな」
「お前に不動金剛術を初めて掛けられた時、解除方法を教えてもらったよな?」
「あぁ、ゲームの時な」
「あれから俺も必死に鍛えた。そしてこの世界に来て次元エネルギーを知り、それを操れるようになるため、血の滲むような訓練をして習得したんだ。それを……なぜ解けるんだよ」
「はは……この世界に来たばかりの俺なら解けなかっただろうな。だが俺もいろいろやってるんでね」
そこで背後からオーズが剣で襲い掛かって来る。
「止めろ!」
「死ね!!」
オーズが振り抜いた剣は俺をすり抜け、残像が消えるとオーズの背後に瞬間移動した俺は忍者の姿で立ち告げた。
「拙者を駒にしようとしたのが間違いだったな。あのまま殺しておけば、こうはならなかったかもしれんぞ?」
「このっ!? 動けない!?」
「……チッ」
「な、僕も動けない!? 何をした!? サーガ、何とかしろ!!」
2階の通路に居る連中も動けず固まっている。
はぁ~、まさか死んでないとはなぁ。
せっかく錬生術を確かめられると思ったのに、これじゃちゃんと発動するのか分からん。
さて、全員動けなくしたけど、どうしようかな?
勿論不動金剛術だがこれは、エーテルを使った不動金剛術だ。
俺でも解くには、かなり時間が掛かる。
ってか、エーテルを使えない者には解けないかも?
と、そんな事よりこいつらをどうするか。
ウルが人質を取ったのは、別に何とも思ってない。
戦略面からしたら普通の事だしね。
まあ、相手を考えないのは馬鹿だと思うけど。
見ていた感じからしてウルは、本国を裏切ってる。
クレナイは、それに加担してるとは知らなかったようだが、オーズは知ってたっぽい?
心眼で本音が視えたら楽なんだけど、精神耐性や魔力制御が高い者は視えないんだよねぇ。
これはたぶんだけど。
悪魔も視えなかったし、はっきりとした原因は分かってない。
クレナイは、忍者だからってのもあるかも?
3秒程考え込んでいるとクレナイが口を開く。
「キジ丸」
「今はハンゾウだ」
「チッ」
舌打ちしやがった。
「さっさとこれを解け」
「教えただろ? 制御で解けると……まあ、これはエーテルを使えないと難しいだろうがな」
「エーテル? 次元エネルギーの事か?」
「違う」
ちなみに声は、ハンゾウに変えてるぞ。
「とにかく俺だけでも解け」
「おいサーガ、何を言ってる?」
「お前は黙ってろ」
ウルに対して怒りを見せるクレナイ。
うむ、これは何か事情があるのかな?
とりあえず話を聞いてから決めるか。
「そのまま話せ、お前を解くに値する理由をな。でなければ……この場で全員始末する」
そう言ってエーテルによる威圧を放つと通路に居る者達は気を失い、ウル、オーズは呼吸が荒くなり、今にも気を失いそうになりながら小便を漏らす。
クレナイは、次元エネルギーを頭に流し、何とか耐えているようだ。
「くっ……お、俺は……ウルを…ウルの、動向を……見張ってたんだ」
ちゃんと話せないようなので少し緩める。
「動向を見張ってた?」
「はあ、はあ……ヴァルハラの王の依頼だ」
ほうほう、つまり王の依頼でエインヘリヤルに入っていた?
これは詳しく聞く必要があるな。
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