第73話 人質作戦?

シュートとアキオを人質に取り、俺を従わせようとするウル。


「映画やドラマで人質を取られて主人公が、悪い奴に従ってるのを見てよく考えてたな」

「ん? 何の話かな?」

「ドラマとかだと物語を面白くするためや人質を見捨てないために、主人公や警察が従ってるけどさ。俺が現実に大事な人や友達が人質に取られた時、どうするのか考えてたけどいつも同じ答えだった」

「……その答えって?」


俺は周囲を見回し、最後にウルを見て答える。


「全員殺す」

「「「っ!?」」」


答えると同時に、周囲に威圧を放つ。


「よく悪い奴が人質が死ぬのは、従わないお前のせいだとか言ってるけど、責任転換をしてるだけなのな、主人公達はいつもそれで従うんだよね。そんな時いつも馬鹿だなぁって思ってたよ……人質が死ぬのは、悪い奴が手を下して殺すんだから、そいつの責任だろ? そう思わないか?」

「……あ、あいつらが、死ぬぞ?」

「だから、死ぬのはお前らのせいであって俺のせいじゃ無いよな? ほら、さっさと殺せよ。その後お前ら全員殺してからヴァルハラも潰してやるから」


すると冷や汗を流し、身体を震わせながら右側に居る女、サーガがウルに言う。


「ウル……私の忠告を無視したからこうなったのだ……どう責任を取る?」

「はは……だって最強を従わせられるチャンスがあれば……やるでしょ普通?」

「これのどこがチャンスだ? 正面から戦って勝つ。そう言っただろ?」

「最強相手に勝てるのかな?」

「おいお前ら、そんな事はどうでも良いから、この状況をどうにかしろよ」


と、オーズが冷や汗を流しながら告げたところで俺は、威圧を解く。


「とまあ、本来なら既に全員殺してるところだが……この茶番をいつまで続ける?」


威圧を解いた事で全員肩で息をし、何とか落ち着こうとする。


「はあ、はあ……ふぅ~……茶番? どういう事かな?」


落ち着いたのかウルが聞くので笑いながら答えた。


「人質作戦はお前が考えたのか? なら相手を間違えたな……シュートとアキオが簡単に人質になると思ってる? そこの2人は、忍者が変装してるんだろ? バレバレだ」

「ほう、良く分かったね。流石最強といったところかな?」


シュートとアキオは、今も食堂で休憩してる最中だ。

2人の影に潜ませた影分身で、2人の状況は把握済みである。



さてと……。


「話を聞きに来たけど、どうやら俺と戦う気らしいね……やろうか?」

「サーガ、本当に勝てるのか?」

「ああ、勝てる……今回は必ず殺す」


ん?

サーガってナンバー2だよな?


「お前が忍者達の師匠か、今回は殺すって以前戦った事がある?」

「流石に気付かないか……ほら」


そう言うとサーガの姿が、エムに変わった。


「あぁ、あいつがお前だったのか……いや、その前にも俺と戦った事があるって言ってたよな? 誰だお前?」

「俺に勝てたら教えてやる。まあ、勝てないだろうがな」

「ん~……分からん。じゃあ、勝って教えてもらおうか」


するとウルがサーガに。


「全力でやれ」

「当然だ」

「負ければ契約は破棄だ」

「……任せろ」


そう言ってウルとオーズは、後ろへ下がり観戦するようだ。

契約ねぇ……まあ、良いか。

今はこいつとの戦いに集中しよう。


「それが本当の姿か?」


エムの姿をしたサーガに問うと。


「さあ? どうだろうな!?」


と、サーガが素早く走り出し、俺に迫ると短剣を両手に持ち、走り抜けると同時に首目掛けて斬りつけて来たので頭を傾げ避けると背後で地面を蹴って身体を捻り、背後から回し蹴りを打ち込んで来る。


俺は振り向きながら上体を屈め、蹴りを避けながら奴の腹に回し蹴りを入れ吹っ飛ばす。


「動きは良い。ただ……まだ本気じゃないな?」


身体を回転させ着地するとサーガは、笑みを浮かべて答える。


「最初の攻撃を簡単に避けるとは、流石だな。まさか魔力で伸ばした刃まで避けられるとは思わなかった」


そう、奴の短剣から伸びた魔力の刃。

攻撃の瞬間に伸ばしていたのだ。

戦闘訓練で分身によくやられた手だな。


「さっさと全力で来い」

「50年間鍛えた力……見せてやる」


するとサーガは全身に、赤い光を纏い始める。

強化系かな?


「……行くぞ? 簡単に死んでくれるなよ?」


サーガは、笑みを浮かべながら言うと次の瞬間、その場からスッと姿を消したと思うと俺の懐にしゃがんだ状態で入っており、下から首筋目掛けて右手に持つ短剣が迫る。


何とかギリギリ避けるが微かに首が斬れ、血が舞う。

続けて左手の短剣が横から迫り、上体を反らして避けるが胸元の服が微かに斬れた。


そこからサーガの猛攻が続く。


「どうした!? 避けるだけか!?」


避けるが小さな傷が顔や肩に出来ていく中俺は、奴の攻撃を観察して気付く。

全ての攻撃に魔力の刃を使ってるが先程は、それを読んで避けたが今は、それを超えて伸びている。


それを可能にしてるのが奴のスピード。

振り抜くスピードが速ければ速い程、その分刃も伸びるのだ。

魔閃と似てるな。


しかし、奴の動きには何か違和感があるぞ?

何だろう?

今回も分身?

いや、本体なのは間違い無い。

でも……。


「これがお前の全力か?」


避けながらそう聞くと。


「フッ、安心しろ。まだまだだ!」


その瞬間、背後から更に殺気が迫って来たので右手に刀をインベントリから取り出し、その場で一回転。

サーガと背後から迫って来た殺気を弾くと背後から迫っていたのは、サーガの分身で弾かれてもすぐ回転し着地すると本体と一緒に迫って来た。


俺は加重を解き、左手に脇差を取り出すと右手の刀で振り抜いて来た本体の短剣を防ぎ、脇差で分身の振り下ろして来た短剣を鍔で受け止め、動きを止めた瞬間に溜気で2体を弾くと、縮地で吹っ飛んだ分身の背後に回り、刀を背中から心臓を一突き、それで分身は霧のように四散して消滅する。


弾かれた本体は、身体を捻って回転すると着地し、笑みを浮かべながら口を開く。


「これでも無理かよ」

「嬉しそうだな?」

「んな訳ねぇだろ」


そこでウルが告げる。


「ねぇキジ丸、いや……ハンゾウと呼んだ方が良いかな?」


ニヤニヤ笑うウルとオーズ。

俺がハンゾウだと知ってるとはな……つまりこいつらの仲間に、俺の事を知ってる者がいる。

……たぶんあいつだな。


「誰に聞いた?」

「誰でしょう? ……それより良いのかな? 大人しく死ねば、君がハンゾウだって黙っててあげるよ?」

「おい、ウル」

「君は黙ってろ」


サーガの言葉を遮るウル。


「はぁ~、ここはGFWじゃないんだぞ? 言いたければ勝手に言えよ。その代わり……お前らは全員始末する。あまり舐めてると、本気でやるぞ?」

「何を……ん? あれ?」

「どうし……なんだ? 身体が震えてる?」


魔力による威圧だ。

このウルって奴は、さっきから駆け引きをしようとしてるが、下手過ぎる。

何も分かって無い。


正直言ってこいつは……面白くない。

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