第69話 ディーライン。
駅に到着し正面入り口の前でタクシーから降り、シュートが会計を済ませて入り口に向かうと入り口横にアキオの姿を発見。
「おは~」
「遅いぞ」
「悪い、引き籠って研究してた」
「丸一日篭ってたらしいな」
「なぜ知ってる!?」
「俺がタクシーの中から連絡しといた」
なるほど。
「さっさと行くか」
アキオに付いて中に入るとそこは、空港ロビーのように広くなっており、沢山の人が行き交っている。
お土産を売ってる店や、コンビニのような店、食事処まであってこの建物内に何でも揃ってそうな感じだ。
等間隔に太い円柱があってそれがエレベーターらしく、その1つに乗って地下へ向かう。
エレベーターで降りている最中、チケットは買わないのか聞くと。
「これで乗れる」
と、アキオがリングを見せる。
スマホで電車に乗るようなもんか。
その後すぐ地下8階に着き、エレベーターを降りると大きな駅のホームみたいに、何本もの線路と列車が止まっており、大勢の人が乗り降りしていた。
こういう大きな駅ってどれに乗れば良いのか、まったく分からん。
ホログラムの看板には、たぶん行き先が書かれているんだろうけど『12番地区』や『5番通り』と書かれているだけで、どんな所なのか想像出来ない。
アキオに付いて行くと『ディーライン・アバッテ王国方面』と書かれたホームに到着し、既に止まっている列車に乗り込む。
列車は、新幹線のように速そうな流線形で色は、白を基調にして銀やグレーで統一されている。
乗り込む際、乗ってすぐの所にあるセンサーに、リングを当てて乗るそうだ。
アキオ、シュートに続いて俺も乗り込み、リングをピッと当てて後に付いて行く。
中は新幹線と同じように座席が並んでおり、窓側と通路側を選べるようだな。
座席は自由で乗り込んですぐの所が空いていたので窓側の席に座り、隣にシュートが座る事に。
「おお、座り心地サイコー。地球でも1回だけ新幹線に乗った事あるけど、それより良いかも?」
「新幹線に乗った事無いから分かんねぇけど、こっちの方が良いのか」
「俺はあるぜ? 確かに新幹線よりこっちの方が良い」
と、通路を挟んで座っているアキオが言う。
その後10分程して列車が動き出し、最初はゆっくりだが数秒で一気に加速。
窓の外の景色が滅茶苦茶速く流れる。
「Gが掛からない」
「そういう術式を組み込んでるらしい。詳しくは知らねぇが」
しかも滅茶苦茶静かだ。
どうやって走ってるんだろ?
と思い聞いてみると、地球のような仕組みではなく、術式が組み込まれた線路で車体が少しだけ浮いてるらしい。
「でも線路は、地球のように2本のレールが敷かれていたぞ?」
「あぁ、2本のレールでバランスよく浮かせてるんだとさ。それに、何かあった時は車輪で走れるようにもなってるそうだ」
「へ~、それにしても凄い景色だな」
「名前は忘れたが、プレイヤーが考えたらしい」
本来地下を走ってるなら暗いトンネルが続くがいま窓から見えている景色は、雲海が広がり太陽がある。
映像らしいが滅茶苦茶リアルだ。
まあ、よく見るとトンネル内の壁が微かに見えるけどね。
外の景色は一定時間で変わるらしく、森の中を走ってるようになったり、街中や山に挟まれた景色などいろいろだ。
そんな景色を眺めていると突然、フッと視界が開ける。
暫くトンネルだったのにいきない視界が開けるとそこには、街が広がっていた。
一瞬これも映像かと思ったが違う。
実際に存在してる街だ。
等間隔に幅約200メートル程ある円柱の柱があり、それなりに高い建物を見える。
そのまま見上げると一瞬空があるように見えるが、これも映像でしっかり天井があるようだ。
穴が所々に空いてるから分かった。
「地下に街があるんだな」
「これがディーラインだ」
「ん? この街が?」
「いや、ディーラインは全て地下にあるだろ? 通っているラインの所々にこうやって人が住んでるんだ」
「へ~」
地下都市。
地球で言うと、宿場町的な感じか?
それにしては、しっかりした街に見えるが。
話しによるとディーラインが出来た時、最初に商人が目を付けたらしく、列車で旅をする人達をターゲットにした商業施設が多かったそうな。
それがいつしか、一般の人も住むようになり、現在の形になったとの事。
今でもディーラインの増設が進んでおり、新たなラインが出来ると土地を欲しがる人が多いらしい。
「魔物やスキラスの影響は無いのか?」
「そこは結界と強化をしてるから入って来れないようになってる」
ディーラインや地下都市の天井、壁、地面は全て結界と強化が施され、定期的に点検が行われてるという。
地球の線路でも同じように点検してるから、それと同じだな。
ふと気になったのでここは、地上からどれくらい深い位置にあるのか聞くと。
「えーっと確か……」
そこでアキオが言う。
「地上まで約500メートルだ」
「そうそう」
「めちゃ深い」
「深い方が魔物の影響は少ないからな」
なるほど、納得。
これは魔力で動いてるから車もそうだが、空気が悪くなる事が無いのが良いね。
だから地下でもこれだけ発展したんだろうな。
すると少しして列車のスピードが落ちていき、駅に到着。
ここで降りるのか聞くと。
「ここはアバッテとカリムスの中間地点だ」
「へ~」
「次の次の駅で降りる……ん?」
アキオが俺の方を見てそう言うと、通路から後ろを見て何かに気付く。
「どうした?」
「……ちょっと待ってくれ」
シュートの問に待ったを掛け、席で正面に向くとリングを起動させ、何かを確かめる。
「……あぁ~、この列車に指名手配犯が乗ってる」
「ほう、高いのか?」
「100万Eだな」
「なあ、何の話をしてる?」
2人で話を進めてるので聞くと指名手配犯が乗っており、100万Eってのは賞金額の事だという。
「ハンターが狙ってるんじゃね?」
「どうだろうな? そうだとしても警察の俺としては、見つけてしまったら無視は出来ない」
まあ、確かに。
「どうする?」
「……どこで降りるのか監視してくる」
そう言って席を立とうとするアキオを止める。
「なんだ?」
「使い魔で監視しとこう」
「バレたら逃げられるぞ?」
「任せろ」
そう言って俺は、ハエのように小さい使い魔を作り、どいつが賞金首なのか聞く。
「こいつだ」
アキオが俺のリングにデータを送って来たので開くと、茶髪のボサボサ頭で無精ヒゲを生やした男の画像が開かれる。
犯罪者顔だな。
顔を確認したので使い魔と視界と聴覚を共有し、後方に居る賞金首の男を探すと画像とは全然違い、グレーのスーツを着て髪をセットし、ヒゲも剃っており、金持ちの紳士にしか見えない。
が、左目の上にある小さな傷跡が同じで、よく見ると画像と同じ男で間違い無い事を確認し、使い魔を天井に張り付け監視をする事に。
身体に付けても良いけど、今付けると下手したらバレる可能性があるからな。
移動する時に付けよう。
列車を降りるまでは、手を出さないらしい。
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