第63話 相性の良い力。
頭の中に浮かんだ映像は、大自然の中で見た事のない生物と過ごしている風景だ。
一瞬だったがハッキリと脳に焼き付いている。
「今のは……」
次元エネルギーから流れて来た映像?
それとも別次元のエネルギー?
まあ、どっちにしろ確かめようが無いな。
ただエネルギーに含まれる記憶が、一瞬流れて来ただけだろう。
俺は一旦取り込んだエネルギーを壁に向かって放出し、今日の研究を終わらせる。
放ったエネルギーは、壁に当たるとそこに何も無いように飛んで行き、壁に直径約50センチ程の奥が見えない程の深い穴を空けた。
空間感知で確かめるが、範囲外まで飛んで行ったようで深さは分からない。
これは、地上で放ったらヤバいな。
その後、影分身達を解除し、スキラスの素材を全て収納して部屋に転移。
ベッドに横になり、実験した内容を思い返す。
魔力だと次元エネルギーの制御は難しい。
だが魔力の塊である魔石だと、流しても問題無いと。
マナは、魔力より次元エネルギーを抑え込めるが何か化学反応を起こし、腕が熱くなった。
そして魔力とマナを合わせたエーテル。
エーテルだと次元エネルギーを完全に抑え込める事が可能。
魔力やマナの時と違って次元エネルギーが落ち着いてる感じ?
今後は、エーテルを使っていろいろ試そう。
ゲームの時は、そんなにエーテルを使ってなかったんだよなぁ。
魔力から始まり、神気というかマナを知り、その2つを合わせるとどうなるのか試したらエーテルになった。
その後、管理AIや使徒の半蔵に魔力とマナは、元は1つのエネルギー体であるエーテルだと教えてもらい、長い年月の後、自然と魔力とマナに分かれたエネルギー。
エーテル自体は、物凄いエネルギーなんで扱うのが難しい。
だから普段は魔力かマナを使っていたが、後半は魔力を極めるために魔力の使い方を磨いてたんだよね。
そんなエーテルが次元エネルギーと相性が良いなら、もっと訓練しとけば良かったかな?
しかし魔力はMP、マナはHPを消費するから戦闘で使用するのは、かなりリスキーなんだよなぁ。
何か効率の良い使い方が無いか、この機会にエーテルの研鑽もしてみるか。
エーテルを普段から使えるようになれば、かなり最強に近づけるはず。
まあ、影の神(管理AI)と使徒の半蔵が力は、使い方でどんな力にも変化するって言ってたからな。
……あっ、そうか。
魔力とマナを使った時の反応、あれは俺の使い方が悪かったのかも?
そう考えると、もっと魔力やマナでも試したくなるねぇ。
とりあえずエーテルで、別次元のエネルギーをどうにか出来ないか試すのが先か。
高炉を停止するためにも。
そんな事を考えているといつの間にか眠りに入り、目を覚ますと朝になっていたのでいつもどおり全身をクリーンで綺麗にしてからキッチンへ行くと、既にシュートは出勤したようで誰も居ないがテーブルの上に、パンと卵焼きとスープとコーヒーが光の膜に覆われて置かれていた。
これがラップの代わりか。
流石異世界。
なんて思いながら席に着き、パンを取ろうとして手を伸ばすと光の膜が結界のようになっており、料理に触れられない。
どうやって解除するんだ?
このままじゃ食えないぞ?
ラップの代わりに結界を張ったのか?
結界……あっ、なるほど。
光りの膜に触れて魔力を流すと、スッと消滅した。
これは魔法かな?
それとも魔道具?
と、周囲を確認しながら朝食を食い始め、結局分からないので今日の事を考える。
飯を食ったら用心棒を見に行って、昼にはスキラスの代金を受け取りに行く。
その後は……研究の続きだな。
夜には訓練をして……。
するとそこでリングに連絡が入る。
確かめるとアキオからだ。
『おは~、どうした?』
『キジ丸、シュートから聞いたんだが、用心棒の事』
あぁ、態々話したのか。
『それで?』
『その用心棒の事だがキジ丸、お前の弟子らしいぞ?』
『最強の弟子ってやつか? 俺にはそんな弟子を取った記憶は無いんだけどな?』
『ゲームの時の弟子じゃね?』
『その用心棒って女?』
『いや、男だ』
じゃあ、やっぱり住人の誰かになるな。
『まあ、今日この後、会いに行くからハッキリするだろ』
『お前……用心棒に会いに行くってなぁ』
『最強の弟子だろ? 気になるじゃん?』
『最強ってキジ丸だろ?』
『シュートと同じ事を言うな。俺じゃないかもしれないだろ?』
『Sランクの魔物を生身で倒す奴は、キジ丸とハンゾウ以外知らないが?』
『あっ、じゃあハンゾウの弟子かも? 魔物を仕留めたのは実質、ハンゾウだし?』
そんなの居ないけど。
『とりあえず、会いに行って問題を起こすなよ? この国の顧問なんだからな?』
『戦いを挑まれたら戦うしか無いでしょ』
『……なるべく被害を出さないようにしてくれ、じゃあな』
そう言って念話を切られた。
被害を出さないようにか……まあ、何とかなるだろう。
その後、飯を食い終わり、食後の一服をしてから家を出る。
玄関の鍵は閉めたまま、影渡りで外に出てリックに教えてもらった住所をマップで確認しながら向かった。
のんびり歩きながら街中を見回し、ふと本来なら既にログアウトをしないといけないはずなのに、強制ログアウトも警告も無い。
本当に異世界に来たんだなぁ、としみじみ思う。
観光をしながら歩いて30分程経った頃、ようやく目的地に到着。
いろんな企業が入ってるオフィス街。
スカイツリーより高い建物が建ち並ぶ中に、用心棒を雇った社長の会社がある。
「デカいな」
建物を見上げ、そう呟く。
この建物全てが1つの会社が所有してるらしい。
会社の名前は『フェルデック株式会社』で、車やいろんな乗り物を作ってる会社だと入り口横にあるホログラムの案内板に書かれていた。
自動ドアを潜り中に入ると広いロビーになっており、床や壁や天井は、大理石のようなツルっとした素材でかなり綺麗だ。
入って正面に受付があるのでそこへ行き、受付嬢に話し掛ける。
「すみません、社長は居ますか?」
「アポは取っていますか?」
「いえ」
「では、会う事は出来ません、どうぞお引き取りを」
「今会社に居るって事ですか?」
「お答え出来ません」
『こういう人多いのよねぇ』
「じゃあ、帰るまで前で待ってます」
「警察を呼びますよ?」
『さっさと帰りなさいよ。居るけど教える事は出来ない決まりなんだから』
なるほど。
居る事が分かればそれで十分だ。
「では、今日は帰ります。後日またお伺いさせて頂きます」
「次からは、アポを取って来て下さい」
軽く頭を下げて建物を一旦出ると路地裏へ行き、建物の中へ影渡りで入る。
さて、用心棒はどこに居るかな?
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