第62話 研究の成果。

風呂に入ってる間、湯船に浸かりながらボーっとしてると、昼間の事を思い出し、アキオに用心棒の事を聞くの忘れたなと思い、風呂を出て服を着てからリビングに戻るとアキオの姿が無く、シュートだけがビールを飲みながらテレビを見ていた。


「アキオは?」

「帰ったぞ。何か用事でもあったか?」

「あぁいや、大した事じゃないからいいや」

「そうか?」


俺も冷蔵庫にビールを取りに行き、冷蔵庫から取り出しながらふと、シュートなら知ってるか? と思い、用心棒の事を尋ねる。


「怪しい用心棒? 何だそれ?」

「火の盃って義賊みたいな事をしてるんだろ?」

「さあ? 俺は知らねぇけどそうなのか?」

「幹部の1人に聞いた。それでそいつが言うには……」


ソファへ歩いて行き、座りながらリックに聞いた話を伝えると。


「ほう、最強の弟子か……キジ丸の弟子じゃね?」

「なんでそうなる?」

「最強と言えばキジ丸だろ? 大会で優勝してハンゾウと戦って勝ったんだからな」

「いやいや……俺の弟子?」


ゲームで弟子にしたのは、サヤ、イチ、クランメンバーの住人と同盟を組んでた和道のメンバーくらいだけど、こっちに居るのか?

ってか俺の弟子なら忍者しか居ないんだが?

用心棒って男だよな?

ならクランメンバーか。

まあ、会ってみれば分かるな。


「明日見に行くわ」

「俺も行こうかな? キジ丸の弟子だろ?」

「さあ? そうだとしたら元プレイヤーか住人になるけど、どんな奴か聞いてないので分からん」

「いや、明日は俺忙しいんだった。帰ったらどうなったか教えてくれ」

「おう」


そこで俺は、ビールを一気に飲み干し、キッチンで缶を捨てて部屋に戻ると特殊空間に転移。



特殊空間では、まだスキラスの解体をしている影分身達が居た。

解体が終わって溜まった素材を収納し、さっそくコアの前に立つ。


エネルギーの塊である魔石に次元エネルギーを流しても、魔石は消滅しない。

俺の考えが正しければそれは、次元エネルギーを魔力の塊で包み込んでいるからだ。


これはおそらく、次元エネルギーの特性だと思う。

何かに包まれると暴走しないという特性。

しかし包むのは、エネルギーじゃないといけない。

なので身体に入った瞬間、暴走して腕が弾けた……たぶん。


とりあえずその考えが正しいのか、今から確かめないとな。

まずは小さなコアに触れ、腕全体に魔力を重ねる。

そこでコアの中に魔力の糸を送り込み、腕に次元エネルギーを……っ!?


腕に流れて来た次元エネルギーが一気に、身体の方へ来そうになったので全力で腕の魔力で包み込む。

すると俺の右腕を、青とエメラルドグリーンの光が覆う。


「…………どうしよう」


ただ光を纏う自分の右腕を見ながら立ち尽くす俺。

腕からは魔力しか感じず、別のエネルギーをまったく感じ取る事が出来ない。

まあ、当然と言えば当然だな。

魔力で包んでるからね。


「そうか」


俺は魔力で包んでいるエネルギーに魔力の糸を伸ばし、それで探る事にした。

しかし、空気のようなエネルギーなので、薄っすらとしか感じる事が出来ないのだ。


うむ、これは困ったぞ?

何とかして次元エネルギーを感じれるようにならないと何か良い方法は、直接触れると暴走するし……いや、待てよ?

これを全身に広げたらどうだ?

もっと言えば、魔力を混ぜるとどうなる?


試しに腕に留めたまま、次元エネルギーを包んでいる魔力を少しずつ混ぜていく。

すると次の瞬間、腕を覆っていた光が赤黒くなったと思うと腕が弾け飛んでしまった。


だが前回と違うのは、血肉が残っている事。

今回は消滅していない。


痛みを我慢してすぐ治療しながら、どういう事か考える。

魔力を混ぜた事で次元エネルギーの質が変わった?

弾けたのはおそらく、覆っていた魔力が薄くなった事で一部に穴が空き、次元エネルギーが漏れた事が原因だ。


……ダメだな。

この方法じゃ次元エネルギーの事は調べられない。

質が変わったら意味が無いからね。

俺は次元エネルギーを感じたいんだよなぁ。


こうなりゃ、身体が耐えられるようになるまで繰り返すか?

今まで訓練してきたように、どれくらい掛かるか分かんないけど。



俺はその後、何度も腕を弾け飛ばしながらも次元エネルギーを流し込み、約100回を超えた頃。

魔力が無くなって来たので神気、マナに変えようとしたところでふと気付く。


魔石に流してって話しだったから魔力でやってたけど、マナで包んだらどうなる?

と思い、試しにやってみると魔力の時とは違い、光が出ない。


「……熱い」


その代わり、腕が滅茶苦茶熱くなってきた。

そこで俺は、腕に溜めているマナと次元エネルギーを壁に向かって放つ。

するとその瞬間、特殊空間の壁に奥行きが見えない程の、深い穴が空いてしまう。

直径約30センチ程の穴で、その部分を消滅させたかのように綺麗な穴だ。


触れただけで消滅させた?

これはとんでもないエネルギーだな。


魔力とマナでは反応が違ったという事は……エーテルでやればどうなる?

今すぐ試したいけど魔力が殆ど無いから、ある程度回復するまで休憩。


土の台の上に座り、煙草に火を点けて一服。

煙を吐き出しながら研究していた事を振り返る。


腕が弾ける事に変わりは無かったけど、何となく耐えられるようになりそうかな?

その理由は、弾けるまでの時間が僅かに伸びてるからだ。


そこでふと横に置いてあるコアを見て、ある事に気付く。

綺麗な球体の中にある次元エネルギー。

なぜコアは消滅しない?

中に次元エネルギーが入ってるのに、なぜ抑えられてる?

特殊な素材なのか?


そもそも次元高炉がなぜ存在出来てるのか不思議だ。

次元エネルギーの性質上、高炉は消滅するはず。

なのにちゃんと存在してるという事は、次元エネルギーを安定させる方法がある。

溢れたエネルギーをコアにしてスキラスを生み出す高炉。

……どんな素材で、どんな方法でコアにしてるのか気になるなぁ。



と、魔力がある程度回復したので今度は、魔力とマナを混ぜたエーテルで試す事に。

腕にエーテルを重ね、その状態でコアに触れると腕に次元エネルギーを流したその瞬間。


腕の中にある次元エネルギーを微かに感じる事が出来た。


「これは……」


感じた次元エネルギーは、まさに空気といった感じでつかみどころが無い。

だが先程までと違い、物凄く安定している。


その中で、僅かにだが別のモノを感じた。

これがおそらく別次元のエネルギー。

しかし、薄すぎて殆ど分からない。


試しにコアに触れてもう少し流すと、先程より僅かに濃く感じる事が出来るがこれは、何だ?


もう少し増やせば、ハッキリするか?

と思い、コアに触れて更に取り入れる。

すると次の瞬間、頭の中に映像が浮かんだ。


大自然の映像が。

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