第61話 知らずに危険な事を。

ん?

寝てた?

……っ!?


ガバッと身体を起こすと特殊空間の地面に倒れていたようで周囲には、影分身がスキラスの解体をしていた。


次元エネルギーを身体に取り入れて耐えられず、気を失ってたのか。

全身傷だらけの血塗れだ。

すぐさま遁術で治し、全身をクリーンで綺麗にする。


落ち着いたところで気を失う寸前の事をじっくり思い出し、次元エネルギーの感覚を思い出そうとするが、まったく何も分からない。

ただ1つハッキリしてるのは、次元エネルギーが物凄い強烈だって事だけだ。


しかし、最初は腕が弾けて消滅していたのに今回は、初めて魔力を重ねた時みたいに、皮膚が裂けて血を噴き出したって事は、制御が出来れば体内に留める事は出来るかも?

あれを制御か……出来る気がしないな。

今は、だけど。


これは時間を掛けて制御出来るようにならないとって、なぜ自身に取り入れようとしてるんだっけ?

……あぁ、別次元のエネルギーの事を調べようとして始めたんだ。

レインはどうやって調べるつもりだろう?


コアの中にあるエネルギー、それと混ざった別のエネルギーを調べる方法…………ダメだ、体内に入れて自分の感覚で調べる方法しか思い浮かばない。

それだけを抽出できれば楽なんだけど、錬成印じゃ無理だしなぁ。

やっぱ身体に取り入れる方法しか無いか。


もう一度試そう。

今度はもっと小さい……ん?

今何か引っ掛かったぞ?

何だ今の違和感は?


小さいコア……大きいと出力が強い…………ダメだな。

ちょっと煮詰まったので休憩!


風呂にでも入ってスッキリしようと思い、シュートの家の玄関へ転移するとそこには、二足の靴が既に。

あれ?

もう帰ってるのか?


靴を脱いでリビングへ行くとソファに座ったシュートと、ビールを飲んでるアキオの姿が。


「もう帰ってたのか」

「キジ丸、どこ行ってたんだ? 連絡もつかないしよ」


と、シュートに言われたので特殊空間で、研究をしていたと話しながら俺も、空いてるソファに座る。


「研究?」

「次元コアの研究。次元エネルギーの中にある、別次元のエネルギーがどんなものか確かめたくてな」


そこでアキオが口を開く。


「どうやって確かめるのか聞いても?」

「体内に入れて感覚で確かめるつもりが……」

「はあ!? おまっ! 次元コアのエネルギーを身体に入れたのか!?」

「どうしたシュート? そんな驚く事か?」

「アキオ知らないのか? 次元コアがどうしてゼギアに使用されてるのか? 最初は人に使う研究がされてたが、次元コアのエネルギーを人に流すと、消滅する程強力なんだよ」

「へ~……ん? キジ丸は消えてないけど?」


2人が俺を見るので、エネルギーを流そうとしたら腕が消滅した事を伝えた。


「……腕はあるじゃん」

「まさか、上級ポーションを使ったのか?」

「いや、ハンゾウに治してもらった」

「消滅した腕まで治せるのかよ」

「賢者並みの力だな」


部位欠損はゲームの時も、上級ポーションか上位の職業であるプレイヤーや住人しか治せない程だ。

一応中級ポーションでも治せるが完璧ではない。

傷跡も残るしね。



俺はそこでシュートに、レインが次元エネルギーに混ざった別次元のエネルギーを、どうやって調べるつもりなのか聞くとシュートは、少し考えた後こう答えた。


「ん~、確か次元コアをどうやって使えるようにするかって調べた時な? その時は、魔石にエネルギーを流して調べたって言ってたぞ。今回もそうするんじゃねぇか?」


魔石に流すか……。


「あれ? その場合、魔石は消滅しないのか?」

「しないらしい。なんでもエネルギーの塊がどうのこうのって言ってたが、俺にはさっぱりだ」

「あぁ、そんな事話してたな」

「飲みながら永遠と意味の分かんねぇ話をされたなぁ」


と、2人が思い出話を始めたので俺は、思考に耽る。


エネルギーの塊?

魔石は魔力の塊だけど、それが何の関係が?

魔力の塊……次元エネルギー……ん?

そう言えば、腕が消滅したのはなぜだ?


冷静に考えればおかしい。

どれだけ強いエネルギーでも、血肉や骨が消滅するってのは、その空間から消えたって事になる。

それか、原子まで分解されない限り、消滅はあり得ないよな?

もしかして……次元エネルギーによって別次元に飛ばされた?


いや、それは置いといて、その次元エネルギーを魔石に流すと暴走しないのは……あっ、そういう事か。


「シュート、ありがとう。お陰で分かった」

「ん? 今の話しで何が分かったんだ?」

「別次元のエネルギーの調べ方」


するとシュートとアキオがお互い見合って首を傾げる。


「何か分かる要素あったか?」

「さあ? 俺にはさっぱり」

「じゃあ俺は、風呂に入ってサッパリしたら暫く籠る」

「籠るって、連絡取れるようにしとけよ?」


シュートに言われてどうするか考える。

確かに急用があっても特殊空間だとリングは繋がらないからね。

そこで俺は、テーブルの上にネズミの使い魔を出す。


「何か用事があればそれに話し掛けてくれ」

「黒いネズミだ」

「これは……使い魔か?」


シュートの問に頷く。


「分かった。こいつは持って移動しても繋がるか?」

「ああ、ここじゃなくても繋がるよ」

「よし」


そう言ってシュートがネズミの前に手を差し出すので俺は、使い魔に乗るよう思念操作をし、シュートの腕を伝って肩に乗らせる。


俺が席を立ち、風呂に行こうとしたらアキオが。


「ところでキジ丸。エインヘリヤルのアジトには付いてくるのか?」


あぁ、女から聞いた場所へ向かうんだった。


「いつ出発?」

「3日後」


それまでには研究も、ある程度進んでるかな?


「勿論俺も付いて行く、ナンバー2がどんな奴か気になるし」

「了解。じゃあ3日後の朝6時出発だ。中央の駅で待ち合わせだから遅れるなよ?」

「オッケー」


女から聞いたアジトは、隣国のアバッテ王国にあるらしく、魔導列車で行くらしい。

実に楽しみだ。

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