第60話 次元コアの研究。

リックと話をしていると料理が来たので乾杯してからまずビールを飲み、おすすめのトンカツにソースを掛けて一切れ口に運ぶ。


「っ!? 美味い!」

「ここのトンカツは最高だろ?」


衣がサクッとして肉の甘い油が口一杯に広がる。

そこにビールを飲めば……これはたまらん。

いくらでも食えそう。

勿論、ご飯にも滅茶苦茶合うぞ。


あっという間に食い終わり、食後の一服をしながらリックに、最強がどこに居るのか聞くと。


「いや、それは知らねぇよ。センジュに聞くしかないだろうな」

「確かに……」


現在センジュはどこに居るのか聞くと、ターゲットと一緒に会社にいるとの事。

うむ、是非会いたいが今は、別次元のエネルギーを調べる方が先か?

それとも、サクッと行って話を聞きに行くか……悩むな。

もしかしたら戦闘になるかもしれないし、今日は研究してセンジュは後日にした方が良さそうだ。


一応会社の場所を聞いてマップに情報を入れておく。

これでいつでも行ける。


「じゃあそろそろ行くか、奢ると約束したからな。支払いは俺がする」

「マジか?」

「ああ、勘定を頼む」

「今回はお礼だからタダで良いですよ」

「俺まで良いの?」


頷く店員。

ならお言葉に甘えよう。


「必ずまた来る。次はちゃんと払わせてもらうよ」

「お待ちしております」


そう言って店を出て帰ろうとしたところで、リックに男達の事を言われて思い出す。

すっかり忘れてた。


店の前から移動して路地裏に行き、そこで男達を影から出すと男達は、魔糸にグルグル巻きにされながらクネクネ動く。


「こいつら、どうするんだ?」

「アジトに連れて行って話を聞く。うちの名を語った目的が気になる」

「糸はどうする?」

「あぁ、人を呼ぶからちょっと待ってくれ」


するとリックは、スマホのような物を取り出し誰かに連絡する。

暫くして男が2人来ると、魔糸を解除してロープで縛り、男達を連れて路地裏の奥へと消えていくリック達を見送り俺は、その場で特殊空間へと転移した。



洞窟のような広い空間に行くと俺は、自分の影分身を20体出し手分けしてスキラスの解体を行う。


影分身のお陰で3時間程で約100体の解体を終わらせ、土で作った台の上にコアを幾つか並べ、コアを見ながらどうやってエネルギーを抽出するか考える。

この間も影分身は、スキラスの解体を続けてるぞ。


「ん~……抽出……」


錬成印で試してみよう。

抽出用の錬成印で……やっぱダメか。

薬効成分を抽出するのとは、訳が違うよね。

今回抽出したいのはエネルギーだからなぁ。


タンパク質みたいなエネルギー源なら抽出出来ただろうけど、魔力のようなエネルギーを抽出するのは難しい。


……魔力?

確か吸収スキルがあったよな。

それを使えないか?

魔力ではなく次元エネルギーを吸収……は無理そうだ


この中に次元エネルギーがあってそこに、別次元のエネルギーが混ざってるって言ってたな。

とりあえず次元エネルギーを取り出す……にはどうすれば?

コアを破壊してみるか?

いやいや、爆発したら最悪。


神楽で見せてもらったコアは、魔石を砕いて混ぜた液体にコアを浸けて使えるようにしてたよな?

あれはそうしないと次元エネルギーは、そのままだと使えないという事だ。

魔力か……。


俺はそこで置かれた小さいコアに触れ、魔力を糸状にしてコアへ流す。

人の身体に魔力を流して解呪する時と同じ方法。

これが上手くいけば……っ!?


次の瞬間、コアに触れていた右腕の肘から下が弾け飛ぶ。

本来血肉が周囲に飛び散るが、血の一滴も残らない程に掻き消された。


肉片すら残らない程に弾け飛ぶとは、しかし一瞬感じたあの感覚。

あれが次元エネルギー?

何と言うか……魔力が水のような液体なら次元エネルギーは『空気』のような感じだ。


軽くてどんな形にも収まる空気。

水よりも存在が薄く、それでいて空気よりも濃い存在。

上手く言えないがこれは……空間そのものって感じだな。

流石次元エネルギー。


体内に印を書いて腕を再生させるともう一度、コアに触れて試してみる。

すると今度は、先程よりもハッキリと感じる事が出来た。

が、腕は当然のように弾け飛ぶ。


何だか魔力を重ねる訓練をした時を思い出すな。

あの時は、皮膚が裂けて血を噴き出していたけど。

これは、次元エネルギーに俺の身体が耐えられないのかそれとも、別次元のエネルギーが強すぎるのか?


……感覚的には次元エネルギーの影響っぽいが、人間の身体には強すぎるエネルギーって事かな?

続けたら耐えられるようになる?

先程より感じる事は出来たけど、耐えられるイメージがまったく湧かない。


強化すれば大丈夫かも?

と思い試すが、先程と変わらず弾け飛ぶ。

なんだろう、機械で規格の違う部品を無理やり付けようとしてる感じ?

まったく耐えられる気がしないぞ?


「……ん?」


そう言えば、スーツも次元コアを使ってるって言ってたな。

と思い、インベントリから1着スーツを取り出す。


色は黄緑の蛍光色。

これはコアを何かに浸け、人間が使えるようにしてるはず。

スーツを通してだが人間を強化する技術。

この色に何かある?

ゼギアのコアは空色でこっちは黄緑。

……うむ、分からん。


「って違う!」


使えるように変えるんじゃなく、次元エネルギーをそのまま体内に取り入れ、別次元のエネルギーを調べたいんだよ俺は。


そこで横にある少し小さいコアを見てふと気付く。

大きさでランクが決められており、強さも変わる。

なら小さいコアの次元エネルギーなら、体内に取り入れられるんじゃ?



さっそく一番小さいコアを探して試す。

すると手が弾け飛ぶ。

肘から下ではなく、手だけが弾け飛んだ。

つまりもっと小さいコアなら、次元エネルギーを取り入れられる?


って事は、腕が弾け飛んでいたのは、次元エネルギーの影響じゃなく『その量』によるもの。


なるほど、コアが大きいと出力が高いので、一気に流れ込んで来るから弾け飛んでいたのか。

そうと分かればもっと小さいコアで試そう。


そうして一番小さなコアを見つけ出し、触れて魔力を流すと皮膚が裂け、全身から血を噴き出し意識を失った。

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