第58話 数日ぶりの再会。

暫くして復活した店員と職人のおっちゃんは、1000体ものスキラスをどこで狩って来たのか聞かれ、古代都市だと伝えるとまたまた驚かれたが、身分証を見せて納得してもらい、さっそく解体方法を教えてもらう事に。


スキラスの解体は基本、魔物とほぼ一緒だが機械の部分は、整備士のように工具を使って解体していく。

そして一番知りたかったコアの取り出し方は、至ってシンプルで繋がっている全てのコードを切断、あるいは抜いて取り出す。


だがコアを取り出す時、一本でもコードが繋がったままだと、コアがその場で暴走するらしい。

小さく細いコードを見逃すと、終わりなのだ。

一応暴走したコアも使い道はあるらしいが、かなり値が下がる。


ちなみに何に使うのか聞くと、小さな機械を動かす電池のような物になるという。

ゼギアを動かすコアから電池とは、そりゃ安くなるのも納得。


機械の部品は、溶かして兵器から子供のおもちゃにまで使われているとの事。

中には、部品をそのまま組み立てて、全身機械の物を作ったりしている人も居るらしい。


いろんな事を聞きながらスキラスの解体は1時間程で終わり、解体用の工具は道具やで誰でも買えると教えてもらった。

だが俺は、解体作業中に気付く。

工具が無くても錬成印があれば、出来る事に。


解体方法は分かったので後は、普通に解体依頼を出してスキラスの死体を10体お願いし、どれくらいで終わるか聞くと、明日の昼には終わってると言うので受け取りに来る事を約束して店を後にした。



店を出た俺は、シュートの家に帰ろうかと路地裏へ向かう途中、そろそろ昼になる頃だし、どこかで飯でも食ってから帰ろうと思い、リングのマップで周辺の飯屋を検索。


ガッツリ肉を食いたいなぁ……おっ、焼き肉専門店かここにしよう。

昼間から焼き肉、最高だな。


そんな事を思いながら店に向かって歩道を歩いてると、赤信号にひっかかり立ち止まると右側の道から声がした。


「あっ」

「ん? ……おう、久しぶり?」

「密入国なのにもう釈放されたのかよ!?」

「えーっと、名前なんだっけ?」

「リックだよ。まさかこんな所で再会するとはな」

「丁度良い、今から焼き肉食いに行こうと思ってたんだが、この辺りで美味い飯屋を知ってるか?」

「焼肉で良いんじゃね?」

「地元の奴に聞いた方が隠れた名店に出会えるだろ?」

「そんなもんか? まあ、俺も昼飯まだだから良いけどよ」

「よし、なら案内頼む。お礼に奢ってやるぞ」

「こっちだ」


そう言ってさっそく歩き出すリック。

金が無いのか?



店に向かって歩き出したリックの隣を歩きながら、金に困ってるのか聞く。


「会った時も俺をカツアゲしようとしてたよな? 働けよ」

「ちゃんと仕事はしてるぜ?」

「なんの仕事?」

「物を売る仕事だ」

『薬物とかだけど』


心眼で視えた。

薬の売人かよ。


「薬とか売ってたら、警察に捕まるぞ?」

「なんで薬って分かんだよ?」

「何となく?」

「なんで疑問形なんだ? ……まあ、いっても俺が売ってる薬は合法だから問題ねぇけどな」

「あっ、そうなんだ……ん? 薬を売ってるのに金が無いのか? そんなに儲かって無い?」

「今時薬を買う奴なんてそうそう居ねぇよ」

「ほう、ちなみにどんな薬を売ってんの?」

「風邪薬とか傷薬、後は軽い病気の薬だな」

「需要はあると思うけど?」

「何も知らねぇんだな?」


詳しく聞くとどうやらこの街というか世界でも、魔法薬、つまりポーションが主流で普通の薬は殆ど売れないらしい。

買う人は金持ちじゃない人しか買わないらしく、儲けにもならないそうだ。


なのになぜ薬の売人を続けてるのか?


「いや、最近は作ってない。組織の仕事が殆どだ。俺は火の盃で幹部をやってる1人だぜ?」

「マジか!? 滅茶苦茶下っ端だと思ってた。いや、むしろそのへんのチンピラだと思ったな」

「やっぱりそう見えるか」


火の盃って確か、警察と繋がってるという噂がある組織だよな?

幹部はプレイヤーだとか?


「リックって元プレイヤーか?」

「プレイヤー? 何だそれ? 何かのゲームか?」


あれ?

違う?


「火の盃の幹部って元プレイヤーって聞いたんだけどな?」

「ん? あぁ~、それはたぶんマスターとサブマスの事だろ?」

「マスターとサブマス?」


まんまクランじゃねぇか。


「俺達火の盃のトップがマスターとサブマスと呼ばれるスゲー人達で、その下に俺達幹部が居るんだ」


なるほど、マスターとサブマスね。


「火の盃の幹部は、金を持って無いんだな? 悪い事して稼いでんじゃねぇの?」

「俺達は、悪い奴らから金を搾り取るのが決まりなんだ」


義賊かよ。

悪い奴らから金をね。

リックが言うには、最近悪い奴らが悪事を隠す事が巧妙になってきたらしく、中々手を出せないそうだ。


「証拠が無いと動けないなら警察と一緒だろ」

「いや、俺達は確信があれば証拠が無くても動く、だが最近、厄介な用心棒が出て来てな。中々手を出せないってマスターが言ってた」


厄介な用心棒?

物凄く気になる。

強いのかな?


「その用心棒の話し、詳しく聞かせてくれ」

「ん? それよりあんた、IDが無いとまた捕まるぞ?」

「問題無い、既にIDは手に入れたからな」

「はっ? この数日でどうやって!?」

「将軍に貰った」

「将軍? ……っ!? まさか英雄の!? あんた何者だよ!?」

「あっ、こういう者です」


そう言ってリングのIDを表示させ見せる。


「……顧問……特別顧問!?」

「それよりほら、その厄介な用心棒の話し、じっくり聞かせてくれ」

「……あ、あぁ……そこが飯屋だから食いながら話すよ。いえ、話します」

「そんな畏まるなよ。さっきまでと同じで良い」

「はぁ~、あんたの強さ、分かった気かする」

「そうか?」

「あんたも英雄だろ? 英雄をカツアゲしようとしてたとは、俺の馬鹿!」


はは、こいつ面白いな。

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