3章 アバッテ王国

第57話 通りすがりの一般人?

ドサッ!

と、大きな熊のスキラスが首から血を噴き出し、地面に倒れ絶命。

刀を振って血を掃い納刀する。


「ふぅ~」


これで丁度1000体目だし、そろそろ終わりにしよう。


レイン達が飛空艇で帰った後俺は、1人残ってスキラス狩りをしていた。

古代都市に入るとわんさか寄って来るから、探さなくて良いので楽だ。

倒したそばから収納してるので、死体は転がってない。

まだまだ寄って来るがこんだけコアがあれば、素材としても十分なのでそろそろ帰る事に。


そこで背後から狼型のスキラスが飛び掛かって来たので、影に潜って避けるとそのままシュートの家へ影渡りで帰る。


狩りを始めて約2時間程しか経ってないので、レイン達はまだ戻ってないだろう。

玄関で影から出ると全身をクリーンで綺麗にし、靴を脱いでリビングへ。

ソファにドサッと座り、インベントリから煙草を取り出して火を点け、ソファに深く座り込み天井を見上げながら煙を吐き出す。


「ふぅ~……」


レイン達が帰って来るまで、別次元のエネルギーとやらを調べてみるかと思い、リングの時計を見て時間を確かめると昼まで後、2時間ちょい。

……先にスキラスの解体を頼みに行くか?

魔物なら自分で解体出来るがスキラスは、機械の部分もあるからな。

死体は大量にあるし、教えてもらおうかな。


なんて煙草を吸いながらこれからの行動を考えていると、リングに連絡が来た。

誰かと思い見るとシュートだ。


『ほい、どうした?』

『まだ狩りをしてんのか?』

『いや、さっき終わって今は、シュートの家のソファに座って一服してるとこ』

『家主の俺より先に帰るとは』

『それより、何か用事でも?』

『あぁ、アキオ達にも縛りの訓練法を教えても良いか聞こうと思ってな』

『全然問題無いよ。ってか別に俺の許可は必要無いだろ』

『いや、キジ丸に教えてもらった事だし、一応師の許可は必要かと思って』


律儀だな。


『シュートが身に付けた事を誰に教えようが、シュートの責任でやれば良いと思うぞ?』

『そうか? まあ、それだけ聞きたかったんだ』

『一応言っておくけど教える相手は、ちゃんと見極めろよ?』

『分かってる』

『じゃあ、今から忙しいので切るぞ?』

『おう、あっ、俺が帰るまで家の掃除を頼んだ。家賃代わりにな』

『了解』


そう言って念話を切る。

よし、スキラスの解体を教えてもらいに行こう。


席を立ち玄関で靴を履き、解体してくれる店へ行こうとしたところで、先程言われた事を思い出し、忍者の影分身を5体出して家の掃除を任せてから店の近くへ転移する。



路地裏に移動した俺は、表通りに出て店に向かって歩道をのんびり歩いて行くと、前方50メートル程先にあるお店から、ガラスの割れる音が聞こえてきた。


「なんだ?」


そのまま歩いて行くと、ガラス張りの店から黒いバッグを抱えた黒い服を着た男が2人、凄い勢いで飛び出してくるとその後から、スーツを着たおっさんが飛び出してくる。


「待てっ!!」


男2人は、こちらに向かって走って来たので歩道のど真ん中で立ち止まり、来るのを待つ。


「どけぇ!!」

「邪魔だ!!」


男2人が走りながら拳銃を構え、銃口を向けて来たので縮地で2人の間へ移動すると同時に、2人の腹を殴る。


「っ!?」

「がぁっ!?」


それだけで2人の男は、その場で気絶。


「街中で銃なんか出すなよ馬鹿が」

「ありがとうございます!」


スーツの男が到着し、動けないようにすぐさま倒れている男達に乗っかる。


「この、大人しく……あれ? 気絶してる?」

「あぁ、銃口を向けてきたもんで、腹を殴って気絶させた」

「あの一瞬で……あなたは?」

「ただの通りすがりの一般人ですよ? では用事があるのでこれで」

「あっ、何かお礼を」

「別にいいですよ。勝手にやった事なので、じゃ」

「お名前だけでも!」


俺は後ろ向きに手を振ってそのまま歩いて行く。

この後警察が来て、いろいろ事情聴取されるんだろ?

そんな時間は無い。

俺には、スキラスの解体を覚えるという、使命があるのだ。


この国にもやっぱり強盗とか居るんだな。

人が多いとそうなるか。



そんな一幕があったが無事、以前来た店に到着し、スキラスの解体依頼と教えてほしい事を店員に伝えると。


「解体方法ですか? 職人に聞いてみます」


そう言って奥へ行き、数分程経つと戻って来て授業料を払うなら良いというので了承し、一緒に奥へ向かう。


広い解体場に入ると職人のおっちゃんが煙草を咥えながら近づいて来ると、俺を足から頭まで観察するように見た後口を開く。


「……あんたが解体方法を教えてほしいと?」

「そうです。別に無理なら良いんですけど?」


影分身か使い魔を付け、作業を見て覚えるから。


「いや、どういう奴かと思ってな。あんたはかなり鍛えてそうだな? それなら大丈夫だろ」

「ん? 解体に力が必要なんですか?」

「いや、スキラスの機械部位と肉体の部分を切り離す時、慎重に引き離さないといけないだ。無理に一気に離すと素材がダメになる」

「なるほど、魔物の解体と違う部分ですね」

「なんだ? 魔物の解体は出来るのか?」

「はい」

「ならすぐ出来るだろう。よし、さっさと教えてやるから物を出せ」


そう言われたので大きな台の上に、全長3メートル程あるオーク型のスキラスを取り出す。


「オーク型か、珍しいな」

「そんなに珍しいんですか?」

「ああ、この辺りじゃまず出ない種類だ」


古代都市は、宝庫なのかも?

暇があればあそこで狩りをしようかな?


「解体したらコアを全部持って帰るので、それ以外は全て買い取りでお願い出来ますか?」

「なんだ? コアの買い手が決まってるのか?」

「いえ、研究のために使うので」

「研究? 勿体ねぇな。こいつのコアなら良い値が付くだろうに」

「はは、まだスキラスの死体は1000体程あるので、1体くらいなら売りますよ?」


俺がそう言うと、職人と店員は固まってしまった。

安心してくれ、流石に全てを解体してもらおうとは思ってないから。

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