第54話 アルティメットの戦い。
現状、次元高炉を停める方法が無い以上、ここに居ても仕方ないのでカリムス王国へ戻る事にしたがその前に、幾つか質問して分かった事は、今の状態でいつまで持つのか?
『僕のエネルギーが無くなれば僕も消える。そうなれば高炉は完全に暴走し、世界は飲み込まれるだろう』
エネルギーを補給する方法は?
『端末に魔力を流せば、補給は可能』
そう言って床から10センチ程の細長い金属の棒が出てきた。
『それを握って魔力を流せば、僕に流れる』
試しに俺が流すとちゃんと補給出来たようで、今後は定期的に流す事にする。
そして気になっていた事を聞く。
それは、スキラスを生み出しているのを停められないのか?
『抑えきれないエネルギーを発散するため、対魔物生物兵器を生み出しているので停めると抑えきれず、完全に暴走する危険があるので停められない』
他に発散する手段は無いのか聞くと、高炉から溢れる次元エネルギーを効率よく輩出するには、対魔物生物兵器、所謂スキラスを生み出すのが一番効率が良いらしい。
それを聞いて俺は、次元エネルギーがどれ程のエネルギーなのか、大まかに把握した。
ゼギアを動かすために使われている次元コア。
あれは次元エネルギーから作られている。
無限に溢れるエネルギーって感じだな。
それを抑えているあいつは凄いね。
ちなみに名前を憶えていないと言うので今後は『ブラファ』と呼ぶ事にした。
ついでにロボットの方は『D1』だ。
適当です。
そして最後ブラファに、必ずいつか高炉を停止して解放してやると約束し、皆でその場を後にした。
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キジ丸達が、最上階へ到着する少し前まで遡る。
建物の手前に残ったシュート達4人は、キジ丸達が入って行った建物へ続く幅50メートルはある3車線の大きな道と、その手前の一般道との広い交差点の中心に立ち、スキラスが来るのを待っていた。
「なあシュート」
「なんだ?」
「暇だな」
空を見上げ、高層の建物の間を飛んでいる鳥型のスキラスを眺めながら言うアキオ。
彼らがここでスキラスを引き付けようと待機しているが1体もスキラスが来ず、ひたすら待機している状態が続いていた。
「ゼギア部隊の方は、かなり増えてきたっぽいがこっちはまったく来ないな」
「今から中に入るか?」
「それはダメだろ、ここが俺達の持ち場だ」
と、サイオウが言うとラメリも同意するよう頷く。
「俺達、かなり楽をしてる気がするんだが?」
「アキオ、今後どうなるか分からないんだ。下手したら全てのスキラスがここに来るかもしれないぞ?」
「シュート、そうなったら俺達は確実に死ぬぞ?」
「高炉を停めるまでの耐久戦だ。スキラスが現れるまで、休憩しとこう」
「……そうだな」
そんな会話がされている頃、キジ丸達が最上階へ到着し、少ししてから柱に攻撃を仕掛け、警備システムが作動した瞬間、都市の中に居る殆どのスキラスが中央の建物へ向かって動き出す。
シュート達が交差点の中心に座り込み、本を読んだり携帯ゲームをしながら時間を潰していると、ふと地面からの振動に気付く。
「地震か?」
「……お前ら、来たぞ」
「ん?」
「あっ」
「うわぁ~」
「よし、戦闘準備……継続戦闘を視野に入れて無駄に体力を使うな。最小限の攻撃と魔力と動きで仕留めるんだ」
「「「了解」」」
そう言って正面道路の先から迫るスキラスの大群を見つめ、武器を構える4人。
「サイオウは右、ラメリは後ろ、アキオは左、俺が正面を止める」
「任せろ」
「了解」
「やるわよ」
シュートは腰の黒い剣を抜くと剣にバチバチと雷を纏う。
アキオは、青い剣を抜くと剣に青白い光りを纏う。
サイオウは、赤い剣を抜き炎を纏う。
ラメリは、白い剣を抜き黄色い光を纏う。
シュート達は全員、魔法剣士系の職業だが誰一人として同じ職業の者は居らず、各々が得意な属性や戦い方を持つプレイヤーである。
シュートは『魔導剣聖』
アキオは『魔王剣帝』
サイオウは『源魔剣王』
ラメリは『魔法剣聖』
最強を目指していたクラン・アルティメットのメンバーは全員、1人でも十分戦える実力を持つ者達なのだ。
100メートル程の距離まで近づいて来たところで4人は、一気に攻撃を始める。
シュートは剣を両手で持ち、魔力を剣に流しながら縦にまっすぐ振り下ろす。
するとその瞬間、雷を纏った直径6メートル程ある斬撃が道路を切り裂き、周囲に雷を撒き散らしながら走って行き、迫るスキラスの大群に直撃。
着弾して数瞬間空くと、ゴーストタウンと化した街の中に、耳の横で鳴ったかのような雷鳴が鳴り響き、高層ビルの影になっている部分も一瞬明るくなる。
雷が広範囲に渡って広がり、大量のスキラスを焼き殺す。
身体の一部が機械故に、雷を受けて死ななかったスキラスは、痺れてその場から動けなくなっていた。
アキオは、70メートル程のところまでスキラスが来ると剣を横一閃。
その瞬間、幅約10メートルの青白い光りの斬撃が放たれ、道路スレスレを飛んで行くと通り過ぎた道が全て凍っていく。
この氷は全てを凍らせ、普通の火では溶ける事が無い。
太陽光でさえも反射し、溶かせない。
凍った部分を触れるだけでも触れたものを凍らせる氷だ。
斬撃がスキラスの大群に直撃した瞬間、ある程度切り裂いていくと斬撃が弾けるように消え、広範囲に冷気が色がり大量のスキラスを凍らせる。
サイオウは、100メートル程の所までスキラスが来ると、剣を上に掲げた瞬間、剣を覆っていた炎が渦を巻きながら伸びて行き、先が竜の形へと変わり、迫るスキラスの大群へ向かって突撃。
炎の竜が道路スレスレを走って行くと道路が熱で、ドロッと溶けていく。
信号機やポールなども、熱により溶けてぐにゃッと曲がる。
そんな炎の竜がスキラスに直撃すると、炎が周囲に広がり、溶岩のようになってスキラスを飲み込んでいく。
サイオウが動くと同時にラメリは、キジ丸達が入って行った建物に続く道路に剣を突き刺す。
すると地面をボコボコと盛り上げながら地中を何かが物凄い速さで進み、スキラスに到達した瞬間、広範囲の地面が一気に崩れ、直径約60メートルの大きな穴が空き、大量のスキラスが穴へ落ちていく。
穴の底は見えない程深く、殆どのスキラスが途中まで落ちたところで穴の壁が徐々に狭くなり、数秒で穴は塞がる。
かなりの数を仕留めたがそれでも、次々と迫るスキラス。
シュート達はここからは持久戦に切り替え、足止めをしながら確実に仕留めていく。
そんな戦いが暫く続いて約10分後、段々と数が増えて行きスキラスに押され始めた頃、スキラスの頭上から大量の白い雷が降り注ぎ、殆どのスキラスが絶命。
「これは……ハンゾウか」
スキラスの爪攻撃を受け止めながらそう呟くシュートに対し、声が響き渡る。
『撤退するぞ!!』
「撤退?」
次の瞬間には、シュートの背後に居た獣型のスキラスの頭が落ちると。
「シュート殿」
「ハンゾウか」
「撤退するぞ」
「分かった」
シュートが了承するとすぐさま影に沈め、他の者達も同時に沈めるとその場から撤退した。
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