第49話 古代都市。

翌朝、土の中で目を覚ました俺は、のっそり土の中から出て朝日を浴びる。


「気持ち良い朝だ」

「土の中で寝てたのかよ」


振り向くとシュートがサンドイッチを片手に、突っ立って引いていた。


「おは~」

「テントは持ってないのか?」

「ゲームの時から野営はいつも土の中で寝てたよ。結構寝心地良いぞ? 今度試してみてみ?」

「……いや、遠慮しておく」


気持ち良いのにと思いながら全身をクリーンで綺麗にし、インベントリからハンバーガーを取り出して食べ始める。

周囲を見回すと他の人達もテントは既に片付け、出発の準備を始めていた。


「そろそろ出発か?」

「ああ、後10分程で出発だ。キジ丸のテントを探してたらいきなり土から出てきたから驚いたぞ」

「はは……で? どんな作戦? こっそり潜入? それとも正面から?」

「正面からだな」

「こっそりじゃないんだ」

「こっそり潜入しても結局発見される……ほらあれ」


そう言って街の方を見るシュート。

俺も視線を向けると街の上空に、鳥が数十匹飛んでいるのが見える。

シュートの話しによるとあの鳥は、スキラスで空から監視してるそうな。

空からの目があるなら確かに、こっそりは難しいな。

俺だけなら行けるけど。


ゼギア部隊が最初に街へ向かい、スキラスを引き付けている間に俺達は、装甲車で街に突っ込む。

このまま真っ直ぐ進めば以前破壊したゲートがあるらしく、そこから入るらしい。


「もし塞がってたら?」

「もう一回、破壊して入る」

「なるほど、強行突破って事ね」

「ゲートをちゃんと開けようとしても開く事は無いし、その間にスキラスが群がってくるからな。ガンガン壊して次元高炉まで一直線だ」


そこでレイン達もテントから出てきたようでサイオウとアキオも集まり、こちらを見て手を振るのでシュートと一緒に歩いて行く。


テントを収納したレインが振り返り、笑顔で言う。


「ほなキジ丸さん、今日はお願いします!」

「ああ、それよりシュートに聞いたが正面から突っ込むらしいけど、ハンゾウに頼んで影に潜れば、安全に高炉まで行けると思うぞ?」

「そんな事出来んの?」

「出来る、ゼギア部隊がスキラスを引き付けてる間、ハンゾウに高炉まで連れて行ってもらうか?」

「じゃあ、そうしてもらおうかな?」


高炉を破壊出来れば簡単なんだけど、原子炉みたいに破壊して周囲に被害が出る可能性もあるからな。

まあ、そういう装置って大概シャットダウンするための機能があるはず。

と言っても、暴走したらしいから分かんないけど。

最終手段として高炉は、物理的に破壊すれば良いだろう。



レインと話をして影に潜って高炉まで行く事になり、一緒に行くメンバーをどうするかという話になる。


「ハンゾウさんとキジ丸さんは一緒に来て、あたしが作業してる時の護衛をしてほしいんやけど?」

「それは良いけどシュート達も一緒に行くか?」

「俺達は、高炉の手前でスキラスの気を引き付ける」

「そうすれば、キジ丸達の方に行く数は減らせるはずだ」


と、サイオウが理由を付け足したので頷いておく。

ミツキはどうするか聞くと、俺と一緒にレインの護衛に就くとの事。


「じゃあ、もしもの場合……」

「もしも?」


シュートが聞くので頷いて俺が続きを話す。


「もしも、高炉を停止させられなかった時は、俺とハンゾウが破壊する。それも無理だった場合はすぐさま撤退。ハンゾウがシュート達を拾って街を離れる……って事で良いか?」

「停止も破壊もでけへん事なんてあるかな?」


するとシュートが答える。


「いやレイン、高炉は未知の領域だ。最悪を想定しておいた方が良い」

「……そやな。ほなもしもの場合はそれでいこうか」

「やっと拠点へ帰れる」


アキオがそう呟くとシュートが頷く。


「そっか、高炉を止めたらシュートさん達は、北へ帰るんやったな」

「だからって止めないなんて事はするなよ?」

「そんな事はせえへんよ。ちょっと寂しいけどな」

「はは、通れるようになればいつでも会える。人の往来も増えるだろうし、今より確実に賑やかになるぞ」

「そやな……ほなそろそろ準備も出来たようやし将軍、合図を」


レインがそう言うとシュートが頷き、リングを繋ぐと告げる。


「ゼギア部隊、これより古代都市攻略作戦を始める。今回は最強が一緒だ。必ず成功させるぞ……出撃!」

『了解!』


すると待機していたゼギア部隊12機が、地面を滑るようにブースターで突撃。

暫く進むと6機は上空へ飛ぶ。


そこへ街を囲む外壁の上と下からゾロゾロと、いろんなタイプのスキラスが姿を現す。


「戦争だな」


俺がその光景を見て呟くとシュートが俺の横に立ち。


「ああ、人類とスキラス、いや、古代都市の戦争だ」

「だな……じゃあそろそろ行こうか、ハンゾウ」


そう言って背後に忍者の分身を出す。


「シュート達も高炉の手前まで運んやる」

「おう、頼む」

「ハンゾウ、話しは聞いていたな?」

「はっ!」

「頼む」

「承知」


1人2役をして全員を影に沈めると、影渡りで街の中へ向かう。

印が無い時の影渡りで移動出来る距離は、1キロが限界だ。

なので、影を転々と移動し街の中へ入る。


ゼギア部隊とスキラスの交戦の中、影の中を移動し、初めて街中を見て思う。

古代都市と呼ばれてるが中はかなり高度に発展した街並みで、カリムス王国より発展していたようだ。


かなり近未来的で、高層ビルや信号機、車のような乗り物の残骸が転がる街中。

あっちこっち破壊された跡があり、高層ビルの途中が抉られたように破壊されている建物もある。


そして破壊されてゴーストタウンと化した古代都市は、植物が生え放題で自然に覆わていた。


ここまで発展した街が、高炉の暴走で崩壊するとはな。

いったい何があったのか気になるが、当時の事を知ってる人は居ないだろう。

もしかしたらどこかに記録が残ってるかもしれないけど。


なんて思いながら影の中を移動し、事前に聞いていた高炉を目指す。


次元高炉は街の中心にある、巨大な建物の中にあるとの事。

まるで神楽のような太さがあり、宇宙まで伸びてるような塔。

その周囲には、建物を支え寄り添うように立つ高い建物。


街だけ見るとカリムス王国よりも確実に発展し、そして大きかった国なんだろうな。



そして数分後、街の中心にある建物の手前に到着し、シュート、アキオ、サイオウ、ラメリの4人を影から出す。


「気を付けろよ」

「おう」

「危なくなったらそっちに逃げるから頼むぜ」


アキオがそう言うのでサムスアップしながら影に潜ると、建物内へ潜入。

かなり大きく広いので、どこに高炉があるのかまず探さないといけない。


影の中でレインに、どの辺りにあると思うのか聞くと。


「そやなぁ……あたしやったら中層に置くかな?」


するとミツキが。


「高炉って危険だよね? だったら地下に設置するんじゃないですか? もし何かあった時、すぐ埋められるようにとか?」

「それも考えられるなぁ。次元高炉の特性を知ってたら設置場所も分かるんやけど」


まあ、未知の装置だし、分かる訳ないか。

でも……次元高炉というくらいだし、かなりエネルギーは強いはず。

だとしたら……地下が濃厚か……ん?

いや、待てよ?

確か街周辺にも影響があるって言ってたな。

地下ならそこまで影響は出ないのでは?


「よしハンゾウ、1階層から上階を探そう。ついでに分身を放って地下と上階を探ってくれ」

「承知」

「何や、どっちも行くんかいな」

「分身だから偵察くらいしか出来ないらしいけどな」


そう言って俺は、影分身を12体作り、地下と上階へ向けて散開させる。

これで早く見つけられるはず。

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