第47話 繋がり。

魔物と契約していた男から得た情報を、レインとシュートに伝える。

エインヘリヤルという組織、古代都市を止めるのを阻止しようとしている事そして……。


「北側とこちら側が繋がっているらしい」

「ホンマに!?」

「……つまり、北へ行ける道があるという事か?」

「ハンゾウの話では、奴らが北と繋がってるらしいからな」


古代都市に安全に通り抜けられる道があるのかも?


「そんな抜け道があったんやなぁ……でも、古代都市の次元高炉を止めた方がええのは間違い無いからこのまま向かうで」

「ああ、いろんな影響が出てるしな。それで2人に聞きたいんだけど、エインヘリヤルって北欧神話の何だっけ?」


するとレインが答える。


「エインヘリヤルって確か、神話の中じゃワルキューレによってヴァルハラの館に集められる『戦士の魂』の事やで」

「よく知ってるな」

「いろんな神話を読んだ事があるからね」


戦士の魂か……ん?


「ヴァルハラの館に集められる?」


頷くレイン。


「ゲームの時、北側と南側の中間にプレイヤーがヴァルハラっていう国を作ってたよな? そこと関係あんじゃね?」

「あぁ~、あったなそんな国、随分前の事で忘れてたが、あったような気がする」

「ヴァルハラ……あったっけ? 大陸の南側でしか活動してへんかったから知らんなぁ。ってか忘れたわ」


レインは300年こっちに居るからな。

忘れててもおかしくはない。

シュートも100年以上経ってる。

俺はつい1週間程前の事だから覚えてるけど。


「ヴァルハラっていう国の名前とエインヘリヤル、名前的には繋がってるよな? ……ん? もしかして、繋がってるってそういう意味か?」

「どういう事?」

「襲撃者が、北側にあるかもしれないヴァルハラって国と繋がってる。そういう意味か?」


シュートの問いに頷く。

心眼で視た繋がってるってのは、てっきりあっち側とこっち側を行き来してる事だと思ってたが名前的に『北側の国と繋がってる』って意味なんじゃね?

だとしたら、あいつらが古代都市を止める事に反対する理由は……。


「国を護るため?」

「なにが?」

「……そうか、古代都市を止めて通れるようになれば、ヴァルハラは南側からの脅威を気にしないといけない、だから通れない状態を維持したいのか」

「たぶんだけどな」


そこでレインが少し考えて言う。


「それでも、古代都市を止めるのは人類のためやから止めるで」

「そうだな。じゃないと拠点に帰れねぇし」

「じゃあ俺はハンゾウと一緒に、船内に居る人達を確かめてくるよ」

「よろしく!」

「潜入してる奴が居れば、出来るだけ生け捕りで頼む」

「了解」


そう言って俺は、エレベーターで甲板へ下りた。



そこからはひたすら心眼を発動させ、変装している者は赤く、そうでない者は青く光るようにして職員を見て回る。

これは心眼の使い方で、条件を付けて当てはまる者とそうでない者を見分ける事が出来るのだ。


じゃあ怪しい女をなぜこうして視なかったのか?

それは、俺自身の認識によって変わるので、あの時女を視ても青く光っていただろう。

今は分からないけどね。


なので船内を見回りながら潜ませている分身で女を視てみると、青く光っていた。

つまり変装はしていない。

じゃあ、あの変な気配はなんだったのか?

あの時、他に誰か近くに居たのかも?

一応女には、まだ分身を付けておく。

心眼は、万能ではないからな。


魔力感知と空間感知で人を探し、心眼で見て回る事数時間。

船が大きいし人も多いので、全員を見て回るのに随分時間が掛かってしまった。

日が沈み、晩飯の時間になった頃、シュートから飯を一緒に食おうと連絡が入ったので了承し、最上階へ向かう。


今回はエレベーターで最上階へ上がり、エレベーターを降りると食事用の長いテーブル席に着いたレイン、シュート、そしてミツキの姿があった。

勿論後ろには、ソウが控えてる。


「おう、ミツキも来てたのか」

「お疲れ様です」


一応ミツキも変装かどうか心眼で視ると青だったので、本人だと安心する。


ミツキの隣にある椅子に座りながらミツキに、どこで何をしていたのか聞くとどうやら、俺達が船に乗る前から乗り込んでおり、ずっと船内を楽しんでいたそうだ。

魔物が現れた時も、気にせず娯楽施設で遊んでいたとの事。


「あの状況でよく遊べるな?」

「ゼギア部隊が居るので、それに……師匠も居るので問題無いかと」

「そこは弟子として真っ先に動くもんだろ」

「次からは、私が出ます!」

「いや、ゼギア部隊に任せろ」


と、シュートが言うのでミツキは「では今後も、ゼギア部隊に任せましょう」とすんなり受け入れる。


「お前、戦う気無いだろ?」

「ギクッ……」

「ギクッて自分で言うなよ」

「ははは……空中戦って苦手で」


そう言って苦笑いを浮かべるミツキ。

まあ、陰陽師は空中戦を得意とする職業ではないけど、式紙や術を使えばいくらでも戦いようはあると思うが……。


「よし、じゃあ今後は、空中戦の訓練も入れようか」

「えっ……本気ですか?」

「当然、最強の陰陽師を目指すんだろ?」

「……分かりました、やります!」

「空中戦かぁ。俺もどっちかっていうと苦手だな」


と、シュートが言うのでならシュートも一緒にやるか聞くと了承した。


「ほなそろそろご飯食べようか」


既に最初からテーブルの上に並んでいる料理の数々。

食べないと冷めてしまうからな。


全員頷いて頂きますをしてから、それぞれ食い始める。

料理はステーキ、サラダ、スープ、ご飯だ。

当然ビールもな。



飯を食いながら全員に、船内に変装した奴は居なかったと報告し、ふと気になった事を聞く。


「そう言えば、アキオとサイオウとラメリに会ったけど、一緒に食わないのか?」

「あぁ、ちょっとな」

「あたしの事を避けてんねん」

「違うだろ」


レインの言葉にシュートが即ツッコむ。

何か理由があるのかと思い聞くと、以前は一緒に食っていたらしいが、いつも仕事の話になるので止めたそうだ。


あぁ、その気持ち分かるぞ。

なぜか仕事の話になってしまう相手って居るよなぁ。


「まあ、話がある時は一緒に食うけどな」

「なるほどね……もうすぐ目的地に着く頃か?」

「そうやねぇ……あと2時間くらいかな?」

「ならそれまで、訓練でもするか?」


そう言ってシュートとミツキを見ると2人が頷いたので、さっさと飯を食って始める事に。



訓練は、分身のハンゾウを使い影渡りでミツキとシュートも一緒に地上へ行き、しっかり訓練をして約2時間後、レインからそろそろ到着すると連絡が入ったので訓練は終了し、最上階に付けた印へ影渡りで戻る。


ようやく古代都市だ。

初めて行く場所は、ゲームでも現実でもワクワクするな!

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