第46話 エインヘリヤル。

古代都市に手を出させないために動いてる事が判明した事で、その理由を探るべく質問を何度か繰り返す。


「誰の依頼だ?」

「依頼主を言う訳ないでしょ」

『居ないけどな』


こいつらの組織が、古代都市を止められると困るのか?


「お前達の組織の名は?」

「そんなものはありません」

『エインヘリヤル』


エインヘリヤル?

って確か北欧神話だっけ?

なんだっけな?

……分からん。


「他に仲間は?」

「さあ?」


……心眼で視えないって事は、本当の事を言ってる。

まあ、こいつも他の仲間の存在を知らされていない可能性が高いけど。


「古代都市を止められるとなぜ困るんだ?」

「っ!? 何の事ですか?」

『なに? 当てずっぽうか? 目的を知ってる? いや、そんなはずは無い』


古代都市を止められると困るって事は……。


「お前らは、古代都市に住む者か?」

「いいえ? あの街に人が住めるんですか?」


本当の事を言ってる。

なのに古代都市を止められるのを阻止しようとするってのは……その向こう側?


「お前らは、北方から来たのか?」

「違いますが?」

『繋がってる事はバレないはず』


繋がってる?

こちら側とあちら側を行き来出来るのか?

これはシュートに伝えないとな。


「そうか、だいたい分かった。後は軍の者に任せよう」


そこで窓の外に見える魔物の左の羽が兵器によって弾かれ千切れる。

すると男がそれを見て回復しようとするが、回復しない事に気付く。


「っ!? なぜ……」

「お前の魔力を縛ったから魔力は使えない。では、暫く寝てろ」


そう言って首トンをして気絶させると魔糸でグルグル巻きにし、影に沈めて本体の下へ戻った。



男を影に入れたまま分身を解除し、シュートに連絡をする。


『術者を捕らえたぞ』

『流石だ。生け捕りにしたのか?』

『当然、まあ、俺を襲ってきた奴らは始末したけどな』

『襲撃だと!?』

『ああ、スタッフに変装して潜り込んでいた奴らだ。後で死体を渡すから調べてくれ、おそらく変装術を使ってる可能性がある。とハンゾウが言ってた』

『忍者が潜り込んでんのかよ。これはマズいな』


忍者はゲームだと、中忍になってから変装術を取得する。

あいつらは下忍程度なのに、変装術を使ってる可能性が高い。

じゃないと潜入は無理だしな。

下忍の実力で変装術が使えるのは、ここが現実世界だから……そうか、俺もキジ丸で忍術を使っても、ハンゾウに教わったと言えば問題無さそうだ。


『とりあえずそっちに行く』

『ああ、魔物も始末したが警戒は続けてくれ』

『了解』


リングを切ると影に潜り、影渡りで塔の最上階へ移動。

部屋の隅にある影から出ると護衛の軍人が反応し、シュートがこちらを見て気付く。


「早いな。ハンゾウか?」

「おう、それよりこいつを先に渡しておく」


そう言って影から捕らえた男を出すと驚くが、ハンゾウが影に潜んでいる事を言うと納得。

シュートとレインが床に転がる男に近付き、顔を覗き込む。


「こいつは……知らない顔だな」

「あたしも知らんわ」


すると護衛の男が。


「この者、確か『ロイック』の親戚だとか言ってました」

「ロイックの? ホンマか?」

「はっ!」

「すぐロイックをここに」

「ただいま……すみません陛下、繋がりません」

「もう逃げたんか?」

「こいつを手引きした事がバレる前に、姿を消したって事か」


……もしかしてと思い俺は、収納しておいた襲撃者の死体をその場に出す。


「「「「っ!?」」」」

「この中にロイックって居る?」

「何やこれは!?」

「俺を襲って来た奴らだよ」

「キジ丸さんを? ……どうや? ロイックは居るか?」


レインが護衛に聞くと護衛は、1人1人の顔を確かめ、最後の1人の死体を見てそいつがロイックだと告げた。

最後まで生き残っていた黒髪の男。


「なんでロイックがキジ丸さんを襲撃するんや?」

「いやレイン、こいつらは忍者らしい。ロイックに変装してる可能性があるぞ」

「ん? つまり全員、偽物って事?」


頷くシュートと俺。


「じゃあ、本物のロイックは?」

「既に殺されてる可能性が高い」


俺がそう言うと苦虫を噛み潰したような表情になるレイン。

変装して潜り込むなら、本人は邪魔になる。

なのでこういう場合本人は、始末するのが忍者だ。


その後、捕らえた男から情報を引き出すため軍人が連行し、レインに忍者の変装を見破る方法は無いのか聞かれた俺は、少し考えてから方法を伝える。


変装術は肉体をそのまま変えている。

これは、ゲームの時から現実になった今もそのままだ。

だからゲームの時は、変装術を見破る方法が殆ど無かった。

ステータスを見て見破るしか無かったが、今はそのステータスを見る事は出来ない。


なので方法は、本人にしか答えられない質問をする事。

もしかしたら魔法や魔術で見破る結界を張れるかもしれないが、自分の変装術に関する記憶からしてそれはほぼ不可能である。


「……という方法しか無い。ハンゾウもそう言ってる」

「マジか」

「それは厳しいなぁ……」


部屋の中に重い空気が流れる。

しかし、忍者の変装術を見破るのは、本当に困難だ。

一番良い方法は、毎日合言葉を決めておく事だな。

その合言葉が漏れたら意味無いけど。

今のところ、方法はこれしか無いがもう1つ、方法はある。


「合言葉か……」

「それから、ハンゾウなら変装を見破れるらしいぞ」

「本当か!?」

「ホンマ!?」

「ハンゾウは、心眼を使えるからな」

「それはええな! ほなハンゾウさんに船の中に居る人らを見極めてもらってもええかな?」


まあ、他に方法が無いし、目的地に到着するまで時間がある。

それまでに全員見てやろうじゃん。

既に潜り込んでいる忍者が他に居ないとは、言い切れないしな。


あっ、聞き出した情報を伝えておかないとね。

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