第45話 拷問の結果。
忍者だと指摘した時の襲撃者達の反応を見れば、こいつらが忍者である事は間違い無い。
魔力を使えてるようだが実力は、せいぜい下忍程度。
しかし『魔力を使える』という事が重要だ。
こいつらの師匠、もしくは上の者が魔力を使えない原因を知っていて、使えない者を使えるようにする方法を確立してる。
これは詳しく話を聞きたいが、忍者として訓練を受けてるならそう簡単には口を割らないだろうな。
だが、それで良い。
拷問の練習にもなるしね。
警戒して動かない奴らを見て告げる。
「じゃあ、じっくり話を聞かせてもらおうか?」
そこで体内に印を書いて発動。
すると男達の下に印が現れ、一緒に特殊空間へ転移する。
突然景色が変わった事で辺りを見回す男達。
声は出さず意外と冷静なのは、忍者としての訓練を受けてるからだろう。
俺は続けて不動金剛術で男達の動きを止め、全員を見回してから告げた。
「……じゃあ、拷問の訓練に付き合ってもらおうか、あっ、暫くは喋らなくて良いからそのままにしておくぞ」
そう言ってニヤっと笑う。
「どこまで耐えられるか、全部試すまで付き合ってもらおう」
動けない状態で男達は、目を見開き冷や汗を流す。
倒れたままの男に魔糸を四肢に巻き付け、空中に張り付け状態にすると拷問を開始。
最初の10分程は、誰も声を出せない状態で拷問を受け、傷だらけになれば回復属性の印で回復し、また別の拷問を繰り返していく。
そして一通り試し終わると今度は、これまでの拷問訓練で思いついた事を試していくのだが、ここからは話せるようにする。
「よし、ここからが本番だ、話したくなれば話して良いからな」
と、空中に張り付け状態にされ、見た目はボロボロだが傷は治してある男達に告げる。
すると青髪の男が口を開く。
「お、俺は……」
「師匠に殺されるぞ?」
「っ!?」
黒髪の男がそう呟くと青髪は、口を閉じる。
師匠がそんなに怖いのか?
……いや、これは掟だな。
ゲームの時はそういうシステムがあったが、現実になったこの世界では、自分達を律するための掟として機能してるようだ。
流石忍者。
「じゃあまずは……他に仲間は乗ってるのか? なあ黒髪?」
しかし、全員目を瞑って黙り込む。
『忍びの掟だ。俺は死んでも喋らない』
と、心眼で心の声が視えた。
これが上忍や熟練者なら見えなかっただろうな。
下忍程度で良かったよ。
そうして拷問を繰り返しながら話を聞く事、約30分後。
黒髪以外は全員死亡し、最後に残った黒髪も瀕死の状態で俺を見て掠れた声で言う。
「師匠に……殺されるぞ……」
そう言って男は絶命。
「最後まで喋らなかったのは褒めてやる」
と言っても心眼でいろいろ視えたので、意味が無いけどね。
だが、幾つか視えなかった事もある。
こいつらの組織が何なのか?
名前すら分からない。
そして他に仲間が居るのか?
そもそもこいつらに、他の仲間の情報を持たせていない可能性もある。
なので他に仲間が居ると仮定して動いた方が良いな。
あと、師匠の事を聞いても名前すら思い浮かべないとは、だがこいつらの師匠が元プレイヤーなのは分かった。
それと、組織の上の者は、ナンバーを持っている事も。
こいつらの師匠はナンバー
ナンバーで序列を決めてるのかな?
厨二臭いぞ?
中身は若い元プレイヤーか?
と、そんな事はどうでも良いか。
分かった事をシュート達に報告しとこう。
死体はそのまま収納し、転移で元居た場所へ戻る。
ちなみに霊視と死霊術で死んだ奴らの魂に話しを聞こうとしたが、死霊があの場に居なかった。
船に戻った俺は、魔物がどうなったのか振り返り空を見るとボロボロになった魔物の姿が目に入る。
「まだ戦ってたのか」
するとそこでシュートから連絡が入った。
『キジ丸、どこ行ってたんだ? 連絡が取れないから心配したぞ』
『すまん、特殊空間に行ってた』
『特殊空間? 時空属性か』
『ああ、それで魔物はまだ片付いてないんだな』
『それがよ、仕留める寸前になると魔物が回復しやがるんだ』
回復?
『再生するって事か?』
『いや、レインも言ってるが再生じゃなく、誰かが回復魔法を施してる可能性が高い』
『この船にそいつが居ると?』
『おそらくな。今探してるところだがキジ丸にも手伝ってもらおうと連絡してたんだ』
なるほど、あの女は……。
先程の女に潜ませた分身と感覚共有して確かめると女は、他の職員と一緒に怪しい奴を探し回っているのが分かった。
この女じゃないのか。
てっきり奴らの仲間かと思ったけど……いや、今は正体がバレないようにしてるだけかもしれないな。
とにかく。
『分かった。すぐ見つけてやる』
『おっ、流石頼りになるな』
『じゃあちょっくら魔物に近付くから、攻撃を中止してくれ』
『はっ? 術者を探すんじゃないのか?』
『だから魔物に近付くんだよ。詳しくは後で話す。とりあえず一旦攻撃を止めてくれ』
『……分かった。10秒後に止めさせる』
『サンキュー』
そして俺は、忍者の分身を1体背後に出し、一緒に影に潜ると攻撃が止まると同時に、羽の付け根の影に影渡りで移動。
影から出て羽に摑まり、背中に回り込むと右手で背中に触れ、魔力を糸状にして流す。
なぜこんな事をしているのか?
この魔物、おそらく誰かにテイムされているか契約しているはず。
そいつの魔力を確かめるために、自分の魔力を流し込み、術者の魔力を探ってるのだ。
一気に魔物の全身に巡らせた魔力の糸が、魔物の首元に別の魔力を発見。
これが術者の魔力か。
魔力を覚えたので俺は、すぐさま影に潜り船へ戻った。
これで術者は見つけられる。
船に戻るともう攻撃して良いとシュートに連絡し、すぐさまユニークスキルを発動。
合成法で魔力感知と追跡を合成し、魔力探査のスキルを生み出す。
と言ってもこの世界では、その方法が頭に浮かぶってだけだが。
魔力探査で船全体を確かめると、先程覚えた魔力の場所を特定。
忍者の分身でそいつの影へ影渡りで移動する。
すると通路の窓から外を眺めている男を発見。
こいつが術者だな。
影から出ると短刀を首に添える。
「動くな」
「っ!?」
あっ、勿論声は渋い低めの声だぞ。
「お前があの魔物を回復している術者だな?」
「あ、あの、いったい何の……」
「魔物の中にお前の魔力があった。言い逃れは出来ない。何の目的でこのような事を? 素直に答えれば命は取らないでおこう」
しかし男は、ゴクッと生唾を飲み込み、覚悟を決めたようだ。
「フッ、流石最強忍者、厄介ですね……あの方があなたには手を出すなと言っていましたが、まさかこんな簡単に見つかるとは」
「何が目的だ?」
「他の者に聞いたのでは?」
仲間がやられた事に気付いてたのか。
「まあ、誰も何も言わなかったと思いますけど、勿論、私も同じです」
「お前もナンバー2の弟子か?」
「っ!? ……それをどこで?」
「あいつらが教えてくれぞ?」
「そんな馬鹿な……」
『あいつらが話した?』
心眼で視えた。
「目的は、レイン殿か?」
「……さあ? 私は知りません」
『古代都市を停止させる訳にはいかない』
ほう、古代都市に何かされると困る奴らが居ると……こいつにはもうちょっと話を聞こうか。
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