第41話 異世界で生産。
出発が2日後だと聞いた翌日俺は、シュートに素材を売ってる店を聞いて朝食を食った後買いに来ていた。
高いビルの1階から5階までが素材専門の店で、品揃えが一番良いらしい。
1階のレジカウンターに居る店員の若い女の子が何やら素材の整理をしていたので、声を掛ける。
「すみません」
「はい?」
カウンターの中で段ボール箱を抱えながら振り返る店員の女の子。
近くの箱の上に置いてこちらに来る。
「どういった御用でしょう?」
「えーっと、ルップ草ってあります?」
「ルップ草? 薬草の一種ですか? それなら1階奥に植物系の素材が置いてありますよ? どういった効能がある植物ですか?」
「毒素を抜く効果がある薬草なんだけど」
「毒素を抜く、解毒効果ですか……」
顎に手を当て考え込む店員。
少しすると。
「あっ、もしかして『リアス草』の事ですかね?」
「たぶん?」
「ご案内します」
そう言って歩いて行く店員について行く。
店内は、本屋のように棚が等間隔に並び、いろんな素材が並べられている。
ホームセンターをちょっと狭くした感じだな。
奥へ行くと園芸用品コーナーみたいになっており、鉢植えやプランターに植えられている植物。
地球では見た事の無い花や植物がたくさん並んでいた。
「こちらがリアス草です」
鉢に植えられた植物を見るがゲームで見たルップ草とは、形が違う事に気付き看破で見てみると、俺が思っていたのと違うので他に無いか聞くが、解毒効果があるのはこれくらいだと言う。
そこで並んでいる植物に看破をしていくと。
『【名前】ルベン草
【ランク】D
【効果】毒素を中和する成分が含まれている。
【詳細】魔力が多い森等の木の陰によく自生している。成分を抽出すると、残った成分が猛毒になるので扱いが難しい。』
ルップ草と少し似てるな。
しかし、これだと癒し効果が無い。
……他と混ぜるか。
「これは?」
「リアス草に似てますがルベン草は、含まれる毒を薬として使います。まさか毒を作る訳では?」
「違います。それから癒し効果がある薬草ってありますか?」
「癒し効果? 気分的なものですか?」
「あぁ、甘いとかそういう感じです」
「甘い……それなら『ミツ草』が良いと思いますが、どうですか?」
「ミツ草? 見せてもらっても?」
「こちらです」
そう言って振り向き、ルベン草の反対側に植えられた植物を指す。
看破で見ると。
『【名前】ミツ草
【ランク】C
【効果】蜂蜜のような甘い汁と香りに癒し効果がある。
【詳細】花の近くに自生している。好んで食べる魔物や動物が多い。』
これを混ぜれば、特製煙草になるかも?
他にも似た素材を買っていろいろ試すか。
それから似た薬草や花、粉末などの素材と煙草の葉を購入して店を後にした。
店を出た後俺は、細い路地裏に入ると体内に印を書き街の外へ転移。
街から少し離れた荒野の岩山に囲まれた場所だ。
ここで良く訓練をしている。
人目が無いので丁度良いんだよね。
さっそく土属性の遁術を発動させテーブルを作ると、買ってきた素材を並べる。
まずルベン草の処理からだな。
俺は錬成印を発動させるとルベン草の上に印が浮かび、薬効のある成分を徐々に抜き取り、続けてミツ草から甘い成分を取り出す。
錬成印は、錬金術の忍者版で細かい作業や魔力消費がかなり抑えられるスキルだ。
現実になった今もそれは変わらず、魔力制御がものを言う。
そこでルベン草から取り出した成分を看破で見ると、猛毒に変わっていた。
「むっ、ルップ草と同じようにしないと無理か」
という訳でルベン草を塩に漬け、薬効成分を抽出する。
その間にミツ草から抽出した成分をしらべると、癒し効果が無いようでこのままだと特製煙草が作れない。
そこで俺は、インベントリに残ってるルップ草を取り出し、癒し効果がある成分だけを抽出しようと塩に漬けようとしたところで気付く。
ルップ草を塩に漬けると毒を中和する成分も出る。
そうなるとルップ草で作るのと変わらないのだ。
「……ん?」
もしかして……。
俺は新しいルベン草とミツ草を取り出し、今度は『一緒に』塩に漬けて抽出する事に。
数分後、抽出した成分を看破で見ると、俺が望んでいた物になったので煙草の葉を錬成印で乾燥させ、いつもどおりに煙草を作る。
紙はインベントリに入ってるのを使い、今後紙の素材も集めて自分で作る事を決め、煙草の制作を進めていく事1時間後。
土で作ったテーブルの上に、5001本の特製煙草が完成。
1本残して他をインベントリに収納し、さっそく一本試しに吸ってみる。
するとゲームの時に作った煙草より甘さが強い。
これはこれで美味いから良いか。
もっといろんな味の煙草を作ってみよう。
ちゃんと煙草を看破で見るとルベン草が毒素を中和し、ミツ草のお陰で癒し効果もあるとなっていた。
続けて俺は、煙草を吸いながら兵糧丸を作成する。
これはインベントリに入れてあった素材で作り、他にも栄養バランス食なども作っていく。
全て俺の店で売っていた商品だ。
現実になったこの世界で俺の店がどうなってるのか、残ってるのか無いのか分からないが、この世界でもまた店をやるつもりである。
とりあえず北側に行って、あっちがどうなってるのか確かめてからだが。
一通り作り終わると昼になっており、この場を片付けてインベントリに入れてあるハンバーガーを食べてから街へ影渡りで戻り、シュートに連絡してどこに居るのか聞くと、神楽で仕事をしてると言うので向かう。
歩いて行くのは遠いので転移し、シュートの執務室の場所を受付で聞いてエレベーターに向かい待ってると声を掛けられる。
「キジ丸」
「ん? おっすアキオ」
「シュートの所か?」
「ああ、そっちも?」
「おう、俺も遠征に同行するんだ」
「アルティメットのメンバーは、全員行くのか?」
頷くアキオ。
まあ、長年一緒に戦ってるパーティーだし、連携も十分だろうな。
エレベーターが来たので一緒に乗り込み、上がる途中アキオが真剣な表情をして言う。
「これはまだ確定じゃないがお前達を襲ったスーツの奴ら、明後日の遠征の時、また襲って来るかもしれない」
「街の外で?」
「いや、狙うなら出る前だな」
「なるほど……狙いは分かった?」
首を横に振るアキオ。
俺とシュートを狙ったのは実験だったとして、毒を盛ったのはなんの為か分かっていない。
警察が街中をくまなく調べ、怪しい人物を何人か発見しただけで何もしていないので逮捕は出来ないそうだ。
一応監視してるらしいが、今のところ目立った動きは無いとの事。
襲うかもしれないという情報は、警察で調べた結果、その可能性があるというだけで確証は無いが、警戒する必要はあるな。
目的が分かれば良いんだけど。
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