第40話 五つのスキル。
神気の時は相手を倒す意志や殺気を乗せた威圧だが、魔力の場合は感情を消し『無の状態』で魔力を放っている。
言わば自分を『殺している』ようなものだ。
相手を倒すとか殺すとかそういう意志や気持ちは一切無く、ただ目の前の事に集中するような感覚だな。
「理解出来たらやってみてくれ。威圧が出来ないと刀気は出来ないぞ」
皆がそれぞれ魔力で威圧をしようと集中しているが、3人は相変わらず面白い。
ただ相手を睨んで力むとか、俺の説明を聞いてなかったのかと思う。
「自分を殺す……」
「ふぅー……」
シュートとミツキが集中して数分後。
微かに威圧が出たのを気配察知で感知するが、ここで声を掛けると解けてしまうと思い、暫く見ているとシュートが目を開け俺を見るとニヤっと笑う。
どうやら掴んだようだ。
俺も頷いておく。
それから少し遅れてミツキも目を開けて俺を見るので頷く。
ソウも出来たようだな。
「それが威圧だ。それを武器に流すんだけど……ちょっと離れてからやろうか、制御出来ないと周囲に被害が出るからな」
「分かった」
「ゴーレムで練習します」
「ああ、シュートはゴーレム出せるか?」
「出せる」
「ならそっちで練習しといてくれ、ゴウ達に教えとくよ」
「おう」
そう言って離れる3人。
俺がゴウ、タツロウ、ジュンの3人に触れて感覚共有の応用で威圧の感覚を伝えると10分程して、何とか出来るようになり、ゴーレムを相手に刀気の訓練をしてもらう。
その間に俺は、3人に教わったスキルの訓練を始める。
呪文、糸操術、人形術を順番に訓練していき、1時間程経った頃。
全員刀気を少し制御出来るようになったようで一旦終わり、ゴウ達が仕事に戻ると残ったシュートとミツキ、そしてソウの3人。
シュートにこの後の予定を聞いて何も無いと言うので、このままここで訓練をする事にした。
まずシュートには、縛りを自分でしてもらうんだが縛りが上手く出来ないらしい。
なので目の前で一度試して貰う事に。
魔力感知でシュートの魔力の動きを観察していると、縛りの素となる魔力の球を体内に保管しようとするが消滅している事が分かった。
どうなっているのかシュートに説明すると、納得したような表情をする。
「魔法剣士の癖で魔力を変換してしまうんだ」
「癖ねえ……ただ魔力を『持って』おくだけなんだが?」
「ん? ……ああなるほど! 合点がいった」
どういう事か聞くとシュートは、縛りの素である魔力の球を維持しようと集中するが気を抜くと、変換されてしまうらしい。
ただそれは、魔力の球体を特別な物として認識していたので起きた事。
自分の魔力だから維持しようとかではなく、ただ体内で持っておけば良いと気付いたという。
試しにもう一度やってもらうと今度は消える事なく、魔力の球体が維持されていた。
と同時にシュートは、その場で片膝を突き動けなくなる。
「キツイだろ? その状態でまずは動けるようになる事を目標にしたらいい。じゃあ、ミツキ、軽く戦闘訓練でもしようか」
「師匠と戦うんですか?」
「いや、俺の作ったゴーレムと戦ってもらう。勿論俺が操作するけどな」
「さっそく人形術を使うんですね」
「当然、俺も訓練するためだ」
「では、よろしくお願いします!」
「ああ」
こうしてシュートとミツキを鍛えながら俺自身も、覚えた術の訓練をしていく。
それから1日置きに珍しい職業の人達にスキルを教えてもらい、いろんな術を習得した。
珍しい職業と習得したスキルはこんな感じだ。
職業:スキル
『幻影武王』:【幻武】幻の拳や蹴りを操る武術家で、幻を纏い威力を上げる事も可能。
『念動術師』:【念力】主に物を動かして攻撃するスキルで、念力で自身を数倍強化する事も可能。
『仙術師』:【仙術】衝撃に特化したスキルで、自身や武器を強化して戦う事も出来る。
『テイマー』:【テイム】魔物や動物を仲間に出来る。
珍しくないが欲しかったので、習得した。
『侍大将・黒』:【黒刀】武器を強化するスキルで、極めると棒でも斬れるようになる程のスキルらしい。
この5つが習得したスキルとなる。
訓練をする時、これらもメニューに加えた。
テイムは別だけどね。
そんな日々を過ごしていると、とうとう古代都市へ出発する日がやって来た。
シュートの家で俺が作った晩飯を食っていると、シュートが口を開く。
ちなみにメニューは、照り焼きチキンだ。
「出発が2日後に決まったぞ」
「……いや、サラッと言うなよ」
「じゃあ……なんと! 出発が2日後に決まったぜ!」
「そうか」
「なんだそのリアクション!? もっと言う事があるだろ!?」
「例えば?」
「とうとうやって来たか……とか?」
「出発するのは決まってたんだし、別に待ちわびてないからな」
「おっ? てっきりキジ丸は、さっさと古代都市に行きたがってると思ってたが? 興味無いのか?」
「いや、興味はあるが、特に急いで無い。不老だしね」
「なるほど……それでメンバーなんだが、ミツキも一緒に行く事になった」
ほう、ミツキもか。
特に問題は無いかな?
「オッケー」
「軽いな……弟子が同行する事に疑問は無いのか?」
「まったく?」
「危険だぞ?」
「それを承知で行くんだろ? 覚悟が無いならシュートかレインが却下してるだろ?」
「はぁ~、お見通しって訳か」
「当然、ここ数日ミツキを鍛えてやってんだ。どれくらい戦えるのかは、ちゃんと把握してる。まあ、古代都市がどんな所か分からないから何とも言えないが、ゲームの時の冒険者と同じだな。危険があるかどうかなんて分からない場所に行くなんて、普通だったし」
と言っても、ここは現実なので死と隣り合わせだけどな。
「最強は言う事が違うな……それでもここは現実、死んだら終わりだぞ?」
「任せろ、ハンゾウが居るからな」
「? ハンゾウも強いのは分かるが、全員を護って戦うのは流石に無理だろ?」
「いや、そういう意味じゃない」
「ん? どういう事だよ?」
俺は食事の手を止め、ニヤっと笑みを深めて答える。
「ハンゾウは、蘇生術を持ってるんだ」
「ソセイジュツ? ……ってまさか、蘇生術!?」
「ああ」
「……いやいや、プレイヤーでも居ないぞそんなスキルを持ってる奴は!? ハンゾウって何者だよ!?」
「最強の忍者だ」
「いや、それは知ってるがそういう事じゃなくてだな……あぁもう良い、とりあえず死んでもハンゾウが生き返らせるって事だな?」
「死んでから10分以内なら確実に蘇生出来るらしいぞ」
「マジかよ」
ゲームの時は使わなかったが、現実になった今なら使う時がくるはず。
俺が使うと変に思われるのでハンゾウが使えるという事にしておけば、問題無いだろう。
古代都市……楽しみだな!
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