第38話 珍しい職業。

席に着いて飯を食い始め、シュートがさっき言っていた昔のミツキについて聞いてみた。


「ああ、あの時はビックリしたなぁ」

「シュートがビックリするって何があったんだ?」

「ミツキのその眼帯」

「鬼眼か?」

「その鬼眼の呪いを掛けられてな」

「はは、災難だな」

「そしたらミツキが『左目に封印された邪眼が暴走してる!!』って、目を抑えながら真剣に言うんだぞ? 正直引いた」


ミツキを見ると顔を赤くして俯きながら食べている。

やっぱり、そういう年頃だったんだな。


「俺の時は普通だったが……」


そうして俺との出会いを話し、ミツキが俺の弟子になった経緯を話す。

するとシュートが。


「俺も鍛えてもらおうかな? 生身でSランクと戦える程にはならないと」

「シュートなら十分戦えるだろ?」

「いや、正直Sランクは無理だな」

「今日の夕方からミツキの訓練に付き合うから一緒に受けるか?」

「おっ、マジで? 良いのか?」

「1日受けたくらいじゃ強くはなれないぞ?」

「それは分かってる。ん?」


シュートが急に黙り込み、少しすると。


「この後、珍しい職業の者達を何人か集めたから行こうか」

「数日掛かるんじゃ?」

「一気に全員集めるのは無理があるからな。時間が空いた者達から順に紹介していく事になったらしい」


と、レインから連絡があったそうだ。

そういう事ならと俺も了承。

すると話を聞いていたミツキも、同席したいと言うのでシュートに聞くと問題無いとの事。



その後、飯を食って一服してから地下の訓練場へ向かうエレベーターの中でミツキに、これから職業スキルを教えてもらいに行く事を告げる。


「あっ、式紙を習得した時みたいにですね? 私も何か習得出来るかな?」

「俺も習得してみるか」

「そう言えばシュートの職業ってなに?」

「俺は『魔導剣聖』だ」


これまた初めて聞く職業だな。

剣聖は剣士の上位職だから、魔法剣士の上位職って感じか?

確かめるとそのようで、剣士から始まり後に魔法剣士になったシュートは、クエストをクリアして魔導剣聖になったとの事。


主に剣と魔法で戦うが、魔法剣士のように剣に魔法を込める事を得意とする職業でその威力は、魔法の威力をそのまま斬撃にする事も出来るそうだ。

職業スキルは【魔導剣法】というらしい。


「それも教えてもらおうかな?」

「なら代わりに侍のスキルを教えてくれ」

「侍のスキルか……」


本当は忍者だからなぁ。

侍は【刀術】が基本だが上位職になると【刀法】になったりもする。

と、ネットで見た情報だが、ネットに出せない情報もあるだろう。

この場合、何を教えれば良いのか……。


「刀術とか?」

「いや、俺は剣を使うから刀術は……他に何か無いか?」


他に……侍のスキルって基本斬る事に特化してるからねぇ。

後は住人が考えた流派とか?

それも刀専用だし、剣じゃ使えないか。

……そうだ。


「スキルじゃないが面白い技があるぞ? 刀気って言うんだけど」

「刀気? 刀の気? どんな技だ?」

「何もしなくても刀気を出すだけで、相手を斬る技」

「おお、昔の血が騒ぐ」

「それは剣でも出来るのか?」

「たぶん? それが出来なかったら縮地を教えてやる。侍の基本だ」

「縮地に似たアーツなら持ってるぞ?」

「剣士の【一閃】だっけ?」


頷くシュート。

一閃は、縮地と同じ移動系アーツだが、移動距離が短い。

近接戦闘特化の剣士ならではだな。

ちなみに侍は、近距離と中距離特化である。


「なら縮地の方が使いやすいから教えてやるよ」

「そうか? 一応刀気の方を先に教えてくれ」

「オッケー、で、ミツキ、昔の病気がぶり返したようだが、どうする? お前も教えてやろうか? 刀気、刀を使ってるだろ?」

「お願いします!!」


ビシッとエレベーター内で綺麗に頭を下げるミツキ。

まだ厨二病は、完治してないようだ。



そんな話をしてる間に訓練場に到着し、中に入ると入ってすぐの所で並んで立っている3人の男。

全員軍人だ。


「忙しいのに集まってもらって悪いな」

「女王の指示ならしょうがないだろ?」

「まあ、あの最強プレイヤーに会えるって言うんだから来るだろ?」

「何をするのかは聞いてないっすけど、どうも初めまして、俺は『ゴウ』よろしくお願いしまっす!」

「自分は『タツロウ』よろしくお願いしまっす!」

「俺は『ジュン』よろしく。キジ丸さんの動画は見た事あるぜ。あの大会の動画、マジカッコよかったぁ」


軍人だが元プレイヤーだとこうなるか。


「どうも、キジ丸です」

「もっと軍人らしくしろよ……で? お前らの職業って何だ?」


と、シュートが聞くとこのようになっていた。

ゴウが『呪文師』

タツロウが『糸操術師』

ジュンが『人形師』


全部初めて聞く職業である。

ちなみにゴウは、長い茶髪を後ろで縛っている若い男でタツロウは、黒髪短髪で活発そうな感じの男。

ジュンは金髪で、王子風のイケメンだ。

一応みんなイケメンだな。



糸操術は、魔糸を使うから習得した方が良さそうだな。

呪文師はなんだ? と思い尋ねると呪文師は、いろんな呪文を操って戦う魔法使い系の職業らしい。

呪術師からの派生職業との事。


「なら魔法陣を使った呪術も使えるのか」

「はいっす! でも自分は、呪文しか使わないっす!」

「ほう、例えばどんなふうに使うのかな?」

「そうっすねぇ……例えば『燃えろ』という呪文を唱えれば、意識した対象が燃える、といった感じっす」


何それ、チートじゃん。

これは習得したいね。

最後は人形師だが、これはその名のとおり人形を操るらしいが。


「ただの人形じゃないぜ? 自分で作った人形で戦うんだ。だから人形を作る腕も関わって来る」

「なるほど……その人形ってゴーレムとかでも良いのか?」

「ああ、人形に刻む術式があるんで、それをゴーレムに刻めば動かせる。ただ、土だけで作った人形だと雑魚しか作れないぜ? 人形は、自分の手で心を込めて作らないと答えてくれないんだ」

「もしかして、地球で実際に人形師とかしてた?」

「似たようなもんかな? フィギアを作ってたよ」

「って事は、フィギアみたいな小さい人形を作って戦わせる事も出来ると?」


そう聞くとジュンは、ニヤっと笑い頷く。

そこで俺もニヤっと笑う。

これは面白い。


人形を使ったイメージトレーニングがやり放題じゃん!

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