第37話 人工魔石。

次元コアをゼギアのコアに転用する方法を教えてもらった俺は、他にもいろいろ使える可能性を感じ、テンションが上がってしまう。


車のエンジンにも使えるのでは? と思い聞いてみると。


「車に使ったらバケモンみたいな車になるぞ?」

「バケモン?」

「出力があり過ぎて、ちょっとアクセル踏むととんでもないスピードで発進する事になる」


あぁ、制御が難しいのか。

……うん、事故る未来しか思い浮かばないので止めておこう。

という訳で次は、魔導エンジンの作り方を見せてもらう事に。


魔導エンジンは、地下32階で制作しておりその構造は、地球のエンジンとはまったく異なる。


周囲の魔力と魔物の魔石を使ったエンジンでピストンなどは無く、魔力自体が車体全体に供給され動く仕組みらしい。

そしてエンジンの作り方は、魔力を溜めるための人工魔石を使い、それに術式を刻むだけだった。


人工魔石とは、魔石に似た性能を持つ結晶体で、魔力を溜める事に特化した物だとという。

魔物の魔石を使うと車は、数分動かすだけで燃料切れになってしまうので使えない。

なので代わりに、燃費の良い人工魔石を作ったとの事。

術式で調整出来ないのか聞くと、どれだけ術式を弄っても、魔石の容量に限界があるので難しいそうだ。


エンジンの作り方も分かったし、これで俺も車を作れる!



そして最後にシュートが、兵器も見せてくれるというので見せてもらう事にした。

兵器は、地下47階で製造しており、ゼギア専用の武器と人が使う兵器も同じ階で作られているそうだ。


広い工場のような造りになっており、奥には大きなライフルが吊るされ、手前では人が使う兵器を作っているらしく、ベルトコンベアで流れ作業をしている人達が居る。

所謂ライン製造ってやつだな。


歩きながら作られている物を見ていると、短い棒のような物を発見。


「あれは?」

「ん? あれは所謂ビームサーベルって奴だ」

「おお、SFで見るあれか?」


頷くシュート。

軍人は必ず携帯してる装備らしく、後は警察も使うらしい。

基本軍も警察も銃を使うが、弾切れを起こした時や接近戦になった時用との事。

魔力を使える者は、自分の魔力を消費してサーベルを作るが、使えない物はバッテリーの人工魔石を使うそうな。


「まあ、滅多に使う事は無いけどな」

「ほう、それは勿体ない」

「中には好んで使う奴も居るが、相手が銃を持ってるなら意味が無い」

「シュートなら使えるんじゃ?」

「俺はキジ丸に作ってもらった武器があるから大丈夫だ」

「あっ、今度メンテしてやろうか?」

「おっ、頼む。偶に鍛冶師に見てもらってるが、研ぐくらいしか出来ないからな」


まあ、Sランクの武器ともなると、魔力が無いと手入れは難しいだろう。

ゲームでもメンテナンスをして技術のある者が使わないと、簡単に折れたり刃こぼれしたりするからな。



その後、銃を見せてもらったが魔力弾は、人工魔石のマガジンに込められた魔力を消費して撃つ仕組みで、実弾も一応あったがこちらは基本、警察が使うらしい。

人間相手には実弾が有効なんだとさ。

魔力が使えない相手ならそうだろうね。


金属類はどこで採掘してるのか聞くと、南にある国からの輸入とスキラスの金属部分を溶かしてリサイクルしてるとの事。

この辺りに鉱山は無いそうだ。


この世界には、ゲームの時には無かった金属もあり、それがゼギアに使われてるという。

他の金属と混ぜれば、軽く耐久力が高く錆びない金属になるらしい。


「未知の資源か、良いね」

「一番の未知は、古代都市だけどな」

「出発の準備は進んでるのか?」

「ああ、武器、食料、人材、それらすべて集めてる最中だ。たぶん出発は、1週間後になると思う」

「結構早いな」


というのは、カリムス王国がこの大きな街1つなのが理由だ。

他に街があるなら人を集めるにも時間が掛かるが、全てこの街に居るし有るからそれ程時間は掛からない。



兵器の見学をしているとそろそろ昼飯の時間になり、神楽の中にある食堂へ向かう事に。

エレベーターで地上1階へ向かい、1階ロビーを歩いて店を目指していると右前方から、ミツキが歩いて来るのが見えた。


こんな所で何してんだ?

と思い、声を掛けようとしたらシュートが。


「おいミツキ!」

「ん? あらシュートさん、って師匠まで何してるんです?」

「師匠?」

「ミツキがなぜここに?」

「レインちゃんに頼まれてた事をちょっと」

「レインと知り合いなのか」

「ちょい待てキジ丸、いつミツキの師匠になったんだ?」

「えーっと、3日前くらい?」

「ですね。私が師匠に頼み込んで鍛えてもらってるんですよ」

「っていうか、シュートもミツキと知り合いだったんだ」

「何も話して無いのかミツキ?」


ミツキを見るシュート。


「態々女王と友達って言うのもダサいかと思いまして」


あぁ、有名人と友達だぜ! っていうあれね。

分かるぞその気持ち。

確かにダサい。


「細かい話は飯食いながらでどうだ?」

「良いんですか?」

「良いよな?」


シュートに聞かれたので頷く。

そうしてミツキと式神のソウが合流して一緒に飯を食いに。



食堂はショッピングモールにあるような、フードコートのようになっており、壁沿いにいろんな店が並び、注文して席に持っていくシステムとなっていた。

俺はとりあえずビールとトンカツ定食を注文し、シュートはうどんを注文。


ミツキはオムライスを注文してカウンター前で料理が出来るのを待つ間、ミツキとシュートがどういう知り合いなのか聞くと。


「ミツキはレインの友達だからな。それに、土地の鑑定をしてもらったり、浄化してもらったりしてるからそれで知り合いになったんだ」

「なるほど、陰陽師としての仕事で知り合ったのか」

「それだけじゃないですけどね」

「軍のお祓いもしてもらった事があるな」

「それよりも、キジ丸さんがシュートさんと知り合いだとは思いませんでしたよ」


俺とシュートが見合ってからミツキを見て答える。


「ゲームの時からフレンドだぞ?」

「俺の武器はキジ丸に作ってもらった」

「えっ、あのSランクの武器ってキジ丸さんが作ったんですか!?」

「レインとはこっちで初めて会ったけど……ほら」


俺はリングのステータスを見せる。


「特別顧問……流石最強プレイヤーですね」

「それよりキジ丸に鍛えてもらうとは、今度俺と摸擬戦してみるか?」

「いえいえ、私なんてまだまだですから」

「初めて会った時のあの勢いはどうした?」


ん?

気になるフレーズが。


「止めて下さい! あの頃の私は、まだ若かったんです」


ほう、これはあれだな?

厨二病を発症していた頃のミツキっぽい。

後でじっくり聞こう。


なんて思ってると料理が出来たので、トレーを持って近くの席へ着く事に。

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