第36話 見学開始。
シュートと話し合った後、街の外で訓練をしてからベッドでぐっすり眠り、翌日目を覚ますと顔を洗い、ダイニングに行くとシュートが用意した朝食を食って神楽へ向かう事に。
今日はゼギア制作の技術を見学するのだ!
その他にも兵器や車の製造も見れるらしい。
神楽に向かう車の中。
「キジ丸」
「ん?」
「俺にも煙草をくれ」
「ほい」
インベントリから取り出し、運転中のシュートに手渡す。
指先から小さな火を出して煙草に火を点け、煙を吐き出すシュート。
「美味いな」
「俺特製の煙草だ」
「あぁ、店で売ってたやつか」
「そうそう、シュートも煙草を吸うんだな」
「街中で売ってる煙草は買って吸ってたぞ。現実でも吸ってたし」
「そうなんだ。この煙草は、身体に良い煙草なんだよね」
「ほう、どうりで身体が軽く感じる訳だ」
ゲームの時は吸えば、数分間自動でHPが回復するアイテムだ。
煙草もまだ残ってるし、素材もインベントリに大量に残ってるから作れる。
が、いずれ無くなるだろう。
この世界にもあるかな?
と思い、シュートに煙草はあるのか聞くとあるらしく、どの国も作ってるそうな。
「煙草は民間会社が作ってるが見学に行くか?」
「ん~……素材が欲しいだけなんだよね」
「煙草の葉か? 買えば良いだろ?」
「外に自生してないかな?」
「あぁ、全部街中で生産してるからな。外で発見した植物を街中で生産してるんだとさ」
なら自生してるのもあるはず。
今度採取に行こうかな?
ルップ草の代わりになる物があれば良いんだけど。
ちなみにルップ草は、ゲームで煙草制作に使う素材の1つで、毒素を抜く効果がある植物だ。
街とか住人がこっちの世界に来てるなら、植物が来てる可能性もある!
なんて話をしながら神楽に到着すると昨日と同じようにロータリーで降り、建物に入るとエレベーターで地下へ向かう。
到着したのは地下10階で扉が開くと廊下がずっと伸びており、左右にはガラスの壁があって中には、白衣を着た研究者達が忙しそうに動いてる様子。
ガラスの向こうは、数十メートルの幅がある空間で、オフィスのように机が並びPCが置かれ、そこで作業をしてる人達も居る。
まさに研究所だな。
奥の壁には両開きの扉が等間隔にある。
シュートが歩いて行くので後を付いて行くとガラス扉の前で止まり、身分証を扉の横に付いてる機械の前に持っていくと『ピッ』と鳴って扉が開く。
おお~、ちょっと感動。
すると近くのデスクで作業をしてる若い男に声を掛ける。
「おい」
「はい? あっ、将軍、お疲れ様です」
「邪魔して悪いな」
「いえいえ、それで?」
「これを調べてくれ、なるべく早く」
そう言ってインベントリからスーツを取り出し、男に手渡すシュート。
「これは?」
昨夜襲撃者が来ていたバトルスーツだと説明し、その仕組みを調べるように指示を出す。
「分かりました。すぐ調べます」
「助かる。何か分かったら連絡してくれ」
「はい」
そう言って男は、奥の扉から出て行った。
奥がどうなってるのか聞くと、いろんな機械が設置された広い空間になってるそうだ。
そこで日々研究をしてるとの事。
「じゃあ、先にゼギアの製造してる部署に行こうか?」
「おっ、頼む」
そうしてまたエレベーターに戻り、更に地下へ向かう。
到着したのは、地下49階。
いったい地下何階まであるのか尋ねると「地下50階」が最下層らしい。
とんでもなく深く高い塔だったんだな。
49階でゼギアは作らており、政府の者でも一部の者しか入れない区域で、軍の者でも将軍と一部の上官しか入れないとの事。
それだけ極秘のようだ。
まあ、兵器を作ってる所だもんな。
当然と言えば当然だ。
ちなみに俺が入っても良いのか聞くとレインが許可してるので、問題無いそうな。
エレベーターが到着して扉が開くとそこは、備え付けのクレーンや、足場が組まれたドッグが幾つか奥まで続いており、製造途中のゼギアが吊るされていたり、立った状態の物まである。
「スゲー、アニメの世界だ」
「だよな? 俺も初めて見た時はそう思った」
「ん? ここは何も無いのか?」
何も置かれていないドッグがあり、気になったので聞くと。
「そこは次のゼギアを組み立てる準備をしてる最中だな」
そう言って上を見ると、足場の上で何やら作業服を着た者達が、クレーンで吊るした状態の何かを弄っていた。
「あれは?」
「ゼギアの骨格を作ってる最中だ」
「ほう……」
「よし、順番に説明していくぞ?」
「ああ、よろしく」
その後俺は、シュートの説明をじっくり聞きながら、たまに質問をしてゼギアの作り方を教えてもらう。
ゼギアは、特殊金属で骨格を作り、そこに別で作った腕、足、胴体を組み立てていくらしい。
そして頭部を付けた後、最後にコアを入れるそうだがこのコアを組み込む際、魔力を使って機体とコアを繋ぐそうだ。
「じゃあ、魔力を使える人がやってるのか?」
「いや、そのための魔道具を使ってる」
話しによると、魔物の魔石を使った誰でも魔力を流せる魔道具を、レインが作ったとの事。
ゼギアを作るための専用道具だな。
組み立ての方法は分かったので今度は、各パーツの作り方を学ぶため1つ上の階へ移動して教えてもらい、最後にはコアの製造方法を教えてもらうために最下層へ向かう。
コアは極秘事項なので、最下層で作られており、限られた者しか入れない。
最下層は、体育館4つ分の広さがあり、全長10メートル程ある液体の入ったカプセルが並んでいた。
他にも円盤のような機械が置かれている。
「あのカプセルは?」
「次元コアを浸けるための物だ」
漬物?
と一瞬頭を過るがすぐ追い出し、詳しくコア製造の方法を聞く。
スキラスのコアは、綺麗な球体で中心が空色で外側がエメラルドグリーンになっている。
球体にはティアラのような物が2つ一周して付いており、それからコードが伸びているのだ。
ゼギアのコアにするためにはこのコアを、魔物の魔石を砕いて混ぜた液体に浸けると完全な青色になり、コアのエネルギーが安定するとの事。
その後コアに術式を刻むと、ゼギアのコアとして完成。
コアに刻む術式とコアのサイズで出力が決まるそうで、術式を見せてもらったら魔法陣が幾つか刻まれており、魔導書の知識のお陰で何となく理解出来た俺は、術式を自分用に改造しようと心に決めた。
ふとカプセルの中にあるコアを見て思う。
錬金術で合成出来ないのかと。
シュートに聞くとレインが試したらしいが、無理だったらしい。
原因を調べても分からないそうで、諦めたんだとさ。
これは、研究のしがいがあるな。
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