第35話 奴らの目的は?
どうも、スナイパーからじっくり話を聞いて一服してるキジ丸です。
お話しは、ゲームの時に時空属性で作った空間がこっちでも使えたので、送り込んでみっちり話し合いをしました。
お話が終わった後は、全ての死体は収納して血はクリーンで綺麗にし、土遁で銃弾の後を消したので、ここで何があったのかなんて誰も気付かないだろう。
車の中で煙草を吸って窓の外を眺めていると、運転席に座っていたシュートが目を覚ます。
「……っ!?」
ガバッと上体を起こし前を見た後、助手席で煙草を吸ってる俺を見て周囲を見回す。
「おはよう」
「……襲撃は?」
「終わったよ」
「俺は……」
「頭を銃弾が掠めた衝撃で、気を失ってたぞ。咄嗟に俺の声に反応してズレたからよかったけど、直撃してたら死んでたかもな」
シュートは、バックミラーを見ながら顔を傾け、傷を確かめるが既に傷は治っている。
「ハンゾウに言って治してもらったよ」
「そうか……すまん、恩に着る」
「気にすんな。それより、俺達に効く銃弾があるとは思わなかった。魔鉱弾? ってやつらしいけど」
「魔鉱弾!? それは本当か!?」
「ああ、ハンゾウがごう……尋問したから間違い無い」
「魔鉱弾なら直撃だと俺は、死んでたな」
「魔鉱弾って?」
尋問では、目的と誰の指示とかそういう事しか聞いていないのだ。
シュートの話しによると魔鉱弾は、以前カリムス王国でも製造しようとして没にした銃弾。
その作り方は、魔力を馴染ませた特殊金属で銃弾を作るそうで、その威力は魔物にもスキラスにも効くらしい。
「没にした理由は?」
「コストが掛かり過ぎる」
特殊金属を作り、それに魔力を馴染ませるのに数日掛かるそうだ。
そもそも、特殊金属を用意するにも時間が掛かり、軍で使う分を用意するには、コストが掛かり過ぎるとの事で没にしたとの事。
その代わりに、エネルギーを圧縮した兵器を考案したそうな。
「今回の襲撃者が魔鉱弾を使っていたって事は……」
「身内の可能性もある……が、魔鉱弾を製造してたのはもう50年以上前だ」
つまり、その技術が流出した可能性もあるって事ね。
「とりあえず家に帰るか……ん? そう言えば、襲撃者はどうした?」
「始末した」
「生かして捕らえたかったがまあ、仕方ないか」
「ちゃんといろいろ聞き出してから始末したぞ」
「本当か?」
「ああ、家に向かいながら教えるよ。と言っても、そんな大した情報は無かったけどな」
「そうなのか?」
そう言いながらシュートが車を走らせ始め、横転していた車も既に俺が収納してあるので、そのまま家に向かう。
スナイパーの男を尋問して分かったのは、奴らが上からの指示で俺達2人を狙った事。
「俺でもキジ丸だけでもなく、2人共狙われた?」
「そういう事」
「どこの奴らだ?」
「それがなぁ……あいつら元は、そこらへんに居るチンピラだったんだ」
「チンピラ? ……今回の襲撃のために雇われたって事か」
「そのとおり、ただ……あいつらは3ヶ月の訓練を受けたらしい」
「訓練……つまりどこかの組織って事だな」
「そうらしいがその組織、かなり徹底してるようでね。あいつらに必要最低限の情報しか与えてなかったんだ」
「失敗した時の保険か」
尋問しながら心眼で視てみたが、裏に居る奴らの事は何も分からなかった。
所謂捨て駒だな。
「それと奴らが着ていたスーツがこれなんだが」
そう言ってインベントリから取り出し、ダッシュボードの上に置く。
ちゃんとクリーンで綺麗にしたから血も付いてないぞ。
運転しながらチラチラスーツを見るシュート。
「……その青いのは?」
「最初はデザインかと思ったんだけどさ。調べたら蛍光色の部分には、何かのエネルギーが入ってたんだよね」
シュートは車を端に寄せ停めると、スーツを手に取りじっくり観察する。
「……これはまさか」
「知ってる?」
「詳しく調べないとハッキリしないが……おそらく次元コアが使われてる」
次元コア……あぁ、スキラスから採れるコアか。
「つまり、ゼギアのようにスキラスのコアを使ってる?」
「ああ……しかし、このような使い方は聞いた事が無いぞ」
カリムス王国はゼギアのコアとして使ってる物を、誰かがバトルスーツに応用した。
ゲームの時なら完全にプレイヤーが関わってると思えるが、ここまで発展した世界なら元プレイヤーじゃなくても作れる者は居そうだ。
シュートが明日、研究所で詳しく調べてもらうと言い、スーツを収納して車を走らせる。
スーツで強くなるなんて……カッコいいけど邪道だな!
その後、何事も無く家に到着し、シュートがピザのデリバリーを注文。
届いたピザを一緒に食べながら襲撃者について分かった事を、全て話した。
奴らが訓練を受けたのは、どこか知らない壁の外であいつらに指示を出したのは『キー』というらしいが本名ではない。
「そして奴らが訓練を受ける前に居たのは、アバッテ王国らしい」
「アバッテか……肝心なのは、奴らに誰かが依頼したのかそれとも、奴ら独自に俺達を狙ったのかだ」
……ん?
なんだ今の違和感は……依頼を受けて……独自に……あっ。
「なあ、誰かが依頼したにせよ、あいつらが独自に俺達を狙ったにせよ。おかしいと思わないか?」
「何がだ?」
「俺がこの世界に来て1週間も経ってないのに、なぜ俺が居る事を知ってる?」
「……魔物との戦いを見ていた?」
「だとしたら余計におかしい」
「なぜだ? あの戦闘を見てお前が居る事を知った誰かが、キジ丸を狙ったって考えれば、不自然じゃないと思うが?」
普通に考えればそうだろう。
だが……。
「魔物との戦いを見ていたのに、送り込んだ奴らが弱すぎる」
「っ!? そうか……Sランクの魔物と生身で戦える程のキジ丸相手に、特殊なスーツを着てようと話を聞いた限り、弱すぎるな……何が目的だ?」
車の中で奴らが魔力を使えなかった事も伝えてある。
狙ったけど殺せるとは思ってなかった?
うん、何がしたかったのか分からん。
普通狙うなら、殺すつもりで戦力を送り込むだろう。
なのにそうしなかった。
そう考えると奴らの目的は……。
「実験?」
「ん? 何がだ?」
「いや、奴らが俺達を狙った目的」
「実験? 何の……っ!? スーツか?」
「ああ、そう考えるとつじつまが合う」
魔力が使えない戦力で俺を狙ったのも、スーツの性能を試すため。
だから使い捨ての駒としてチンピラを使ったと考えれば、腑に落ちる。
だとしたら今後、また狙われる可能性が高いな。
「明日レインにも報告しないとな。誰かが動いてる事を」
「あの魔物との戦いは、誰でも見れるのか?」
「いや、軍の者と神楽に居る政府関係者くらいだな」
「スパイが居る?」
「いや、外で直に見てた可能性もあるぞ」
確かに、離れた場所から観戦してたら戦闘中には気付けない。
うむ……ゲームの時から狙われる事はあって訓練に使ってたけど、実験に使われるのは初めてだ。
次は、もっと強い奴が来れば良いんだけどなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます