第33話 刺客?

パーティーが再会し、俺達は会場の隅にあるソファに座り、先程の件について話し合う事に。


俺とシュートが同じソファに座り、サイオウとラメリが一緒でレインが1人でソファに座る後ろには、正装の軍服を着た軍人の護衛が2人立っている。

座ってまず俺がレインに、命を狙われる心当たりはあるのか聞くと。


「無いなぁ……強いて言うなら、10年くらい前にさっきの使いが言ってた主の男のプロポーズを断ったくらいかな?」

「その相手って他国のお偉いさんか?」

「ここから東にあるアバッテ王国の第二王子やね」

「断られた腹いせに殺そうとした?」


そこでサイオウが口を開く。


「フラれたからって殺そうとはしないだろ?」

「あなた、そういう男は少なからず居るわよ? ストーカーの典型じゃない?」

「あぁ……確かに、でも相手は一般人じゃなく王子だろ? そんな事をするとは思えないが?」

「分からないわよ? 断られた事で王子のプライドが傷ついたのかも?」

「二人共、あのバカはそんな事はせえへんで、めっちゃあたしに惚れてるからな。そやから10年経っても定期的にああやって使いが来て気持ちを伝えてくるんやから」


そう思わせるための行動かもしれないぞ?

とは言わない。

それに、その王子の使いが持って来たチーズに毒っていうのが引っ掛かる。

明らかに誰かが王子に、罪を擦り付けようとしてる感じだ。


俺はレインに、王子以外に心当たりは無いか聞くがレインは、まったく無いとの事。

だとしたら……。


「狙ったのはレインじゃない?」

「どういう事? あたしじゃなかったら誰を狙ったん?」


レインへの手土産に毒が入ってたからレインが狙われたと思ってたけど、そう見せかけて別の……。


「無差別の可能性もあるな」

「それやと目的が分からんなぁ」


そこでシュートが言う。


「混乱させようとしたとか?」

「カリムス王国を? なんで?」

「混乱を起こして何かしようとした?」

「それこそ意味分からんわ」


混乱に乗じてする事と言えば……街に潜入、盗み、拉致、それくらいか?

しかし誰が?

魔物とスキラスが跋扈するこの世界でカリムス王国は、この辺りの国にとっては大事な国のはず。


まさか、魔物か?

いやいや……無いとは言い切れないな。

後は……スキラスの可能性もある。

むしろそっちの方が可能性は高そう。

そうなると、スキラス側に付いてる人間も居るって事になるが……スキラスも人が作ってる可能性があるんだった。


その後、使いの従者が言っていた女を調べる事と、国に入る者と既に街の中に居る者を徹底して調べる事が決まり、この日のパーティーは解散するとシュートの車で帰路につく。



夜になって殆ど車が通っていない道路を走りながらシュートと、今後の事について話す。

ちなみにお互い、パーティースーツのままだ。


「明日の見学は朝からで良いか?」

「そうだな……ん?」

「どうした?」

「点滅してる」


リングの一部が点滅してるので見せると、メッセージが来てる印らしいので思念操作でメッセージを開くと。


『戦闘訓練をしてほしいのですが、良いですか?』


ミツキからのメッセージだった。

シュートにどうやって返信するのか教えてもらい、ミツキに返信する。


『明日の夕方からなら空いてるぞ』


するとすぐ返事が来た。


『了解です。では明日の夕方5時にあのご飯屋さんの前で良いですか?』

『ああ、問題無い』

『じゃあ明日、よろしくお願いします!』

『オッケー』


それでメッセージを終了。


「本当にスマホみたいな感じだな」

「だろ? レインがスマホみたいなのが欲しいって作ったらしいぞ」


スゲーな。

思念操作が出来るのでスマホより凄いけどね。


なんて話ながら道路を走っていると前方に、工事中で通行止めにされているのが見えてきた。

赤く光る棒を持って左へ行くようにと指示をされたので、左へ曲がって暫く走って右に曲がると今度は、交通事故があったのか車が横転し、真っ直ぐ行けなくなっている。


そのまま左か右に曲がって家に向かえば良いんだろうけど、シュートは軍の者なので一応事故の様子を確かめるため、手前で停車して車を降りようとしたので止めた。


「待て」

「どうした? 事故の様子を確かめないと」

「車の中に人は居ない。その代わり……周囲に11人、こちらを伺ってる奴らが居る」

「ここからよく分かるな?」

「感知系は鍛えてるんでね」

「で? これは誰を狙ってると思う?」

「そりゃ軍のお偉いさんだと思うぞ?」

「いやいや、有名人のキジ丸かもしれないだろ?」

「いやいやいや、狙われる覚えなんて無いんだけど? ゲームの時なら分かるが、この世界に来てまだ1週間も経ってないのに、なぜ俺を狙う必要がある?」

「ゲームの時に買った恨みじゃねえか?」

「それは……あり得る話だな」

「だろ? と言っても、これは俺を狙ってんだろうけどな」

「何だそれ、じゃあ俺は巻き込まれって事か」

「最強プレイヤーを狙うには、数が少なすぎる」


ゲームの時ならそうだろうけど、現実になったこの世界でしかも、ゲームの時には無かった武器が沢山あるんだぞ?

何があるか油断は出来ない。


「それにしても、全然襲って来ないな?」

「俺達が車を降りるの待ってんじゃねぇか?」


周囲の人間? にも動きは無い。

空間感知で形は人だと分かるが何か、全身スーツのような物を着てるな。

顔もシールドで覆われてるが……中は普通の人間っぽい。


このままじゃ進まないので同時に車を降りる事にする。

普通に車を降りるが未だに襲って来ない。


道路の両側に建つ高層ビルの中に潜む者達。

辺りに人も車も通っていない。

人が来ないようにしてあるのかそれとも、この時間だからなのかは分からないが、襲うには丁度良い場所。


シュートが周囲を見回し、横転した車に近付いて行くとその瞬間、一瞬殺気が膨れ上がったので左へ瞬時に移動するがジワジワと胸に痛みが走る。


見てみると右胸に、小さな穴が空いて血が流れていた。

すぐさま回復の印を体内に書き治す。

撃たれた?


「シュート!」


シュートに注意を促そうとした瞬間、シュートは頭から血飛沫を上げ、その場に倒れる。


俺達の肉体を撃ち抜く事が出来る銃があるとはな。

とりあえず、始末するか。

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