2章 古代都市
第31話 祝勝パーティー。
俺は今、カリムス王国の中心に建つ、太く高い塔、神楽にある広い会場でレインが主催の立食パーティーにて、レインが用意した黒いパーティースーツを着て酒を飲みながら焼き肉や唐揚げを食っていた。
この酒、滅茶苦茶美味いな。
フルーティーな香りと僅かな甘みと酸味、そして喉にくる刺激。
これは止まらない。
講義はあれから上手く行き、今後は魔力を使えるようになった者で教える事が決まり、得意な人は他の人達に教えるよう頼んで終了。
まあ、もっと魔力を使えるようになれば、俺が直々に鍛えると約束したからまた近い内に会うだろうけど。
そして講義が終わった後は、警察にも顔を出し、魔力をちゃんと使えてるのか確認してから軍と同じように、使える人に後の事は頼んで終了だ。
その後は、ちょっと街を観光して今に至る。
酒と料理を楽しんでると人が近づいてくる気配がし、空間感知で確かめるとシュートなので振り返り、挨拶を交わす。
「お疲れさん」
「おう、こいつらの事は分かるか?」
シュートの背後に立つ女と男を見て首を傾げる。
見た事あるような無いような?
グレーのスーツを着た茶髪のイケメンと、薄いピンクのドレスを着た白に近い長い金髪の可愛い女。
「久しぶり、アルティメットのメンバーである『サイオウ』だよ」
「あまり話した事は無いけど私も同じメンバーで『ラメリ』よ」
「……ああ! 精霊魔王と戦った時に居た人だ。随分雰囲気が変わってたからすぐ分からなかった」
「こっちに来ていろいろあったからな」
「ちなみに私達は夫婦よ」
そう言って指輪を見せる。
プレイヤー同士で結婚したのか。
話しを聞くとサイオウは現在、ハンターをやってるそうな。
ラメリは探偵らしい。
ちなみにサイオウが、ハンターギルドのギルドマスターをしてるとの事。
ラメリは、探偵ギルドのサブマスをしてるそうだ。
こっちにシュート達と一緒に転移し、この街に辿り着いてから結婚式を挙げたという。
ゲームの時から実際に会った事は無かったが、ゲーム内で付き合うようになり、現実になったこの世界で一緒になった。
あっ、2人も不老だぞ。
「子供は?」
「息子が1人」
「今は軍に所属してるわ」
「へ~……不老について息子は何か言ってる?」
「まあ最初は、親が老けないからおかしいとは思ってたらしいが、高校生になって伝えたらすんなり受け入れてくれたな」
「自分も私達みたいになれるのか聞かれた時は、どう答えたら良いのか分からなかったね」
英雄の息子ってだけでプレッシャーがありそう。
「息子は魔力を使える?」
そう聞くと首を横に振る2人。
やっぱりこの世界では、核に魔力も封じられる仕組みらしい。
ゲームだとマナだけだったのにな。
ゲームと現実の違いか。
って、そもそも世界が違うんだった。
そこでシュートが、魔力が使えない軍人にも、魔力が使えるようになる事を話し、核の説明をする。
「そんな物があるのか」
「気付かなかったわね」
俺は神気(マナ)を制御する訓練をしてたから気付けたが、殆どのプレイヤーは、ユニークスキルを習得してもマナを制御出来なかったみたいだな。
ソウライさんに感謝!
……ソウライさんもこっちに来てるのかな?
仁の国は、この世界にあるのか気になる。
それを確かめるには、北へ行かないとね。
なんてシュート達を離してると、レインがやって来た。
「楽しんでる?」
「ああ、この酒美味いな」
「やろ? うちの研究班が作った酒やねん。技術はあたしが提供したんやけどね」
「さっきビールも飲んだけど、最高だったぞ」
と、サムズアップすると同じようにサムズアップするレイン。
「ほなちょっとここいらで、皆に紹介しとこうか」
そう言って魔法で声を大きくし、参加者の注目を集める。
『みんさん! 本日はSランクの魔物を討伐したお祝いのパーティーに参加してくれてありがとう! こちらに居るのが魔物を倒したキジ丸さんや! 忍者のハンゾウさんは今居らんけど……2人共うちの友達やからよろしくね!』
するとワーッと拍手が鳴り響く。
俺は横で軽く頭を下げながら挨拶をしているとレインが。
『ほな、キジ丸さんから一言!』
いきなりだな。何を言えば良いんだ?
……よし。
気合を入れて俺も、魔法で声を大きくして話す。
『えー、キジ丸です。魔物と戦って自分はまだまだだと思い知らされました。なので今後は、もっと精進したいと思います』
そう言うと会場内はシーンと静まり返る。
変な事を言ったかな?
するとレインが小声で。
「あれで謙遜されたらそりゃ引くで」
そうか?
やっと足を斬れただけだったぞ?
今後は、一撃でスパッと両断出来るようになりたいと思ったから言ったんだけどな?
『とまあ、キジ丸さんは英雄の中でも最強と呼ばれる1人や。この人を基準にしたらアカンで? じゃあ、パーティーの続きを楽しんで!!』
そこでパチパチと拍手が起こる。
何か納得出来ないんだが?
まあ良いか。
皆がそれぞれの話しに戻ったので俺達も、自分達の話しに戻ろうとしたところで1人の男が近づいて来ると声を掛けて来た。
「レイン・ロード陛下、お久しぶりです」
「ん? ゲッ、またあんたかいな。誰に呼ばれて来たんや?」
「外務大臣の部下の方に連れて来て頂きました」
そう言って挨拶をする男。
長い金髪で紺色のタキシードを着ているイケメン。
レインが『ゲッ』っていう程、苦手な男っぽい。
「あのアホ……で? なんの用や?」
「ええ、我が主からの言伝です……」
「いらんで、どうせまた結婚して下さいとかやろ? 何回断ってると思ってんねん」
結婚?
レインにプロポーズした奴か、これは面白そうな話だな。
「そうおっしゃらずにどうか、主と一度お会いして頂けないでしょうか?」
「そやから言うたやろ? 男やなくて可愛い女の子なら受け入れるって……ええかげん可愛い子を連れて来てほしいわ」
えっ……レインって女好き?
「もしかしてネカマ?」
「ちゃうわ!」
おっと、心の声が出てしまった。
まあ、GFWというかフルダイブ型のゲームは、性別を偽れないからな。
忍者は変装術で異性になれるけど。
「そうですか……分かりました。帰って主にそうお伝えします。本日は手土産があるのでよろしかったら召し上がって下さい」
「ほう、なに?」
男の背後からタキシードを着た2人の従者が、両手で抱える程の箱を持って出て来る。
「こちらは、我が国の名産です」
「名産? もしかして『チーズ』!?」
「ええ、どうぞ召し上がって下さい」
するとメイドが数人、皿に小分けした物をトレーに乗せて運んできたので皆が受け取り、匂いを嗅ぐ。
濃厚な匂いがするチーズだな。
酒に合いそう。
「アバッテのチーズは美味いねんなぁ。うちでは中々作られへんし、かなり高級品やで」
アバッテと言うと、カリムス王国の東にある王国だったな。
そこの名産か、どれ……ん?
俺は誰よりも早くチーズを口に放り込むと違和感を感じ、すぐさま周囲に居る者達全員に、不動金剛術で身体を動けなくした。
チーズを口に入れようとしていたレインに告げる。
「チーズに毒が入ってる」
俺の言葉に全員、身体は動かないが驚愕の表情を浮かべた。
さて、誰の仕業かな?
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