第30話 最強プレイヤーと忍者。

シュートとレインの執務室を出た後、エレベーターに乗って数秒下りると止まって扉が開く。


「おお~、スゲー」


扉が開いた先は、天井まで50メートル以上あり、奥行きと幅が数百メートル程ある広い空間。

等間隔に太い柱が並び、一角にはゼギアも並んで立っている。

船のドッグのようなものがあり、ゼギアを整備してるようだ。


シュートの話しによるとここは、ゼギアの整備や修理をするドッグで、全てのゼギアがここに集まってるとの事。


エレベーターから出て歩いて行くと、作業をしている人達がシュートに向かって頭を下げ挨拶をする。

流石将軍。


しかし、挨拶をした後俺を見て全員、驚いた表情をしたり、目をキラキラさせる者が居た。

もしや、戦いを見ていたのかな?


なんて思いながら周囲を見回し、シュートの後を付いて行くと空いてるドッグに到着。

ゼギアを出してくれと言うのでインベントリから取り出す。


「将軍、お疲れ様です」

「おう、こいつの修理を頼む」

「Sランクの魔物と戦ってこの程度で済んだのは、幸いですね」

「まあな。他の機体も回収は済んだのか?」

「現在輸送中です」

「そうか……キジ丸、こいつはここの責任者の……」

「初めまして『ザード』と申します」

「初めましてキジ丸です」


ザードは、茶髪をオールバックにし、後ろでちょこっと縛ってるイケメンだ。

服装は白のつなぎを着て黒いブーツを履いてる作業員って感じだな。


「戦い、拝見しました。流石主と同じ英雄ですね」

「主?」

「こいつはレインがゲームの時に作った住人だ」


ああ、俺のイチと同じか。

住人をここの責任者にしてるとは、優秀なんだねぇ。


「主と突然知らない世界に来た時は、混乱しましたが生きてられるのは、主のお陰です」

「以前の世界の事は覚えてる?」

「はい、主に生み出して頂いた時から今までの事は全て」


ちゃんとゲームの時の記憶があるのか。

ならイチもあのままっぽい。

でも、寿命で既に死んでる可能性もあるんだよなぁ。

こればかりはどうしようもないね。



ザードと少し話をした後、ゼギアの事は任せて講義をする部屋へ向かうため、エレベーターへ戻る。

その際、先程シュートに挨拶をしていた者達が、今度は俺に挨拶をしてきた。


「戦い見てました!」

「流石英雄です!」

「握手して下さい!!」

「ファンになりました!!」


など言われ、困惑してる俺にシュートが。


「お前の戦いは全員見てたからな」

「さっきは距離を置いてたのに」

「我慢が出来なかったんだろ」


と言って笑う。


「ほらお前ら! さっさと仕事に戻れ!! この後キジ丸が講義をするから興味のある奴は見に来て良いぞ!!」

「将軍、講義って何の講義ですか?」

「魔力を使う方法の講義だ」

「えっ……」


すると周囲に居る者達が全員ポカーンと固まる。


「英雄の力を使えるようになるんですか?」

「ああ、既に実証済みだ」


そこで別の男が口を開く。


「ですが、我々は整備士ですよ?」

「魔力が使えれば、整備士の仕事にも役に立つぞ? まあ、軍に所属してる者は今後、全員魔力を使えるようになってもらうから覚えておくように……じゃあ行こうか」


そう言って歩き出すシュートに付いて良き、エレベーターに乗る。

皆面白い程ポカーンとしてたな。



エレベーターに乗って数秒すると扉が開くと正面と左右に廊下が続いており、シュートは真っ直ぐ進むので付いて行くと廊下の突き当たりにある両開きの扉を開き、中に入った。


「おお、大学の講義室だな」

「講義はいつもここでやるんだ。連絡しといたから既に人は集まってるな」


リングを使って念話でいつの間にか連絡してたのか。

講義室は、半円になっており、一番後ろが一番高い位置にある。

俺達が扉を開いて中に入ると、全員がこちらを見ると席を立ち頭を下げた。


流石軍人、挨拶はしっかりするようだ。

俺は軽く頭を下げて挨拶をし、シュートに付いて一緒に前へ出ると教壇の上にある何かを取ってシュートが振り返り、耳にイヤーカフスのような物を着けると口を開く。


『よし、よく集まってくれた。忙しいだろうが大事な講義だ。しっかり聞くように』


そう言って別のイヤーカフスを手渡してきたので付ける。

初めて付けるな。


『えーっと、どうもキジ丸です。よろしく』


シーンと静まり返る講義室。

真剣に話を聞いてくれるようだね。


『では今から、ここに居る全員に、魔力の使い方を教える』


そこで初めてザワっとする講義室内。

だがすぐ静かになったので俺は、第一核を破る方法を警察の時と同じように説明し、その場で皆に試してもらう事に。


するとどうだろう、流石軍人と言うべきか10分もすれば全員が僅かだが魔力を解放する事が出来た。

この結果にはシュートも驚いていたが、顔は嬉しそうにしてたよ。


解放出来たら後は、ひたすら魔力制御の訓練だ。

ある程度制御が出来れば、生活魔法くらいはすぐ使えるようになるかも?


そう伝えると1人の男が手を上げたので指すと、席を立ちビシッと真っ直ぐ立って口を開く。


「はっ! 生活魔法とはどのようなものですか?」

『生活魔法とは……』


生活魔法は、火を点けたり、水を出したり、クリーンという綺麗にする魔法だと説明する。


『良いか? この生活魔法を極めると、建物全体を綺麗にしたりも出来るぞ』


そこで別の男が手を上げたので指すと立ち上がり、口を開く。


「はっ! キジ丸様のようになるには、どれくらい掛かりますか?」

『俺のように? 強くって事か?』


頷く面々。


『俺の戦いを見てた者は手を上げろ』


すると全員手を上げた。

全員見てたのかよ。


『ある程度魔力が使えるようになったら、直々に鍛えてやるよ』


そう言うと全員嬉しそうに騒ぎ出す。


「あの! 黒い服を着た人は?」

『ハンゾウの事かな? ハンゾウ』

「ここに」


分身を俺の背後に片膝を突いた状態で出すと、全員更にテンションが上がり騒ぎ始める。


「最強の英雄!!」

「最強の英雄!!」

「英雄!!」

「英雄!!」

「英雄!!」


腕を上に向かって突き出す者達。

シュートを見るとはしゃぐ皆を見て笑ってるだけだった。


参ったねこりゃ。

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