第29話 世斬り。
雷が降り注ぐ中、奴が生み出した魔物の残りが俺に気付き、物凄い速さで迫って来た。
しかし、訓練はもう終わりなのでサクッと始末する事にする。
ユニークスキル『五法一術』の激化法を乗せ、不動金剛術を発動。
その瞬間、迫っていた魔物達は、その場でギュッと握りつぶされるようにして絶命。
続けて俺は、背中の直刀を抜き、直刀に神気を流しながらユニークスキルの変質法と激化法を乗せ、直刀を縦に真っ直ぐ振り抜く。
影明流忍法・弐層・世斬り
雷を受けギャーギャー鳴きながら暴れていた魔物は、ピタッと動きを止めると巨体が縦に真っ二つ割れ、大きな音を響かせ倒れた。
世斬りはただ神気を直刀に流し、数百メートルの範囲を切り裂く技だが今回は、再生能力を消すため変質法と激化法を乗せたので『弐層』だ。
2つのユニークスキルを乗せたからな。
しっくりくる名前が浮かんだらそっちに変えるかも?
轟雷雨を止めると直刀をヒュッと振って納刀し、影渡りで魔物の死体の近くへ移動して影から出て死体を見上げる。
デカいなぁ。
この肉は食えるか?
看破で見ると一応食えるっぽい。
ゲームの時みたいに名前とかの情報は無いようだな。
まあ、名前とかランクは人間が付けるものだしね。
……ん?
スキラスの時は、名前だけ頭に情報が入ってきたけど……つまり、誰かが作った?
……今考えても答えは出ないか。
と、考えるのを止めて魔物の陰でキジ丸に戻り、魔物の死体に触れてインベントリに収納。
課金でインベントリの収納量は無限にしてあるから、こんな巨体でも入ってしまう。
それにしても、この世界の魔物は強いな。
魔力が使えない人達がよく生き延びれたもんだ。
なんて思ってると空からゼギアが1機近づいて来た。
俺の近くに下りると話し掛けて来る。
『キジ丸様、将軍と陛下が戻るようにとの事です。私が送りますので手に乗って下さい』
「いや、自分で帰るから良いよ。ハンゾウ」
俺がそう言うと背後に、ハンゾウが片膝を突いた状態で姿を現す。
「はっ」
「帰るぞ」
「承知」
当然、俺が出した分身だ。
現実になっても1人2役である。
分身と一緒に影に潜り、シュートとレインが待つ部屋へ転移し、部屋の扉前に影からキジ丸の俺だけ出ると2人はすぐ気付き、シュートが先に口を開く。
「お疲れさん、ハンゾウは?」
「居るよ。ハンゾウ」
そう言って俺の影から分身を出す。
「おお、忍者や」
シュートは嬉しそうな顔をしながら言う。
「やっぱり、ハンゾウもこの世界に来てたんだな。ずっとキジ丸の傍に居たのか?」
「いや、大きな戦闘が行われてるのを察知し、偵察に向かった先で主が戦っていたのだ。主の戦闘の邪魔をしてはいけないと見ていたが……」
分身でそこまで答えながらキジ丸でソファに座ると続きは、本体の俺が答える。
「途中まで訓練をしてたんだけど、十分成果はあったからな。ハンゾウが近くに居ると分かったので始末するように指示を出したんだ」
「Sランク相手に訓練ってお前……」
「クレイジーや」
と、2人に引かれてしまった。
「それにしても、Sランクの魔物を生身の身体で倒すとは、流石最強だな」
「最後に倒したのはハンゾウだけど?」
「あのぶっとい足を斬ってただろ? 本気でやってればキジ丸も倒せてたと思うが?」
まあ、ハンゾウも俺だからね。
でも、侍として倒したかったけどそれは、まだ無理だったな。
「まあね。縛りを解けば余裕で倒せたかも?」
「縛り?」
「SMでもやってたん?」
「なんでやねん……1つの訓練方法で魔力やマナを……」
俺は2人に縛りの訓練方法を伝える。
「……へ~、誓約を自分に課すみたいなもんやね」
「そうそう」
「そんな訓練方法があったのか、さっそく今日から試そう」
「動けなくなる可能性があるから、家でやった方が良いぞ」
「そんなにキツイのか?」
頷く俺。
俺は半日動けなかったからな。
最近縛りの状態にも慣れてきたから、久しぶりに縛りを強くしようと思う。
するとシュートが真面目な表情をして口を開く。
「なあキジ丸」
「ん?」
「ハンゾウにも依頼を出したいんだが、古代都市の件」
「それはええな。最強の2人が居れば確実に成功するやん」
ハンゾウの分の報酬はどうしよう……あっ。
「ならハンゾウの分の報酬でゼギアを1機、貰おうかな?」
「ゼギアを? 乗らんでも強いのに? なんで?」
「ロボットは男のロマンだからな!」
「はははは!! キジ丸の言うとおりだ。なんならキジ丸専用のゼギアを作るか?」
「マジで!?」
「ああ、俺も専用のゼギアがあるぞ?」
おお、それはかなりロマンがあるな。
……いや。
「それは遠慮しておく」
「別に遠慮する事はねえぞ? 国を護った英雄なんだからな」
「そうやで? ゼギアの1機くらい作るで?」
「いや、ゼギアの仕組みを調べて、自分で作りたいんだ」
ゲームでも俺は、物作りは好きでやってたからな。
魔導エンジンを作ろうともしてたが、ゲームじゃ結局作れなかった。
しかし、現実になったこの世界で発展した技術を習得すれば、俺が作りたかった物がいろいろ作れるようになるはず!
「そう言えばキジ丸は、鍛冶師もやってたな」
「ああ、Sランクの武器を作ったんだ。今度はSランクの魔物を倒せるゼギアを作ってみたいね」
……あっ、ゲーム内でいろんなガジェットを作ってたシンスケは、こっちに来てるかな?
あいつならゼギアを作りそう。
「それなら明日、ゼギアを作ってる所を見学するか? 俺が案内してやる」
「良いね。頼む」
「あっ、もう1つの報酬は、数日掛かるから準備が出来たら連絡するわ」
珍しい職業の元プレイヤーだな。
いろんな術を習得するチャンスだ。
その後、ハンゾウの分身も一緒に依頼について話し合い、古代都市へ向かう準備に数日掛かるので出発はもう少し先になるとの事。
その間俺は、ゼギアの仕組みの勉強と術の習得に専念する事にする。
「あっ、軍の連中にも魔力を使えるように講義をしてほしいんだが?」
「それならシュートでも出来るだろ?」
「いや、俺は人に教えるの苦手なんだ」
「まあ良いけど、1回教えたら後は、出来る奴にやらせろよ?」
「分かった。じゃあ講義は……この後からでも良いか?」
この後予定は……特に無いか。
ミツキは縛りの訓練をやらせてるし、行っても問題は無いな。
という訳でこの後、シュートと一緒に軍の連中に講義をする事になった。
「あっ、預かってるゼギアが1機あるから返さないと」
「あの踏まれそうになってたやつか、じゃあ先に倉庫に行って出すか、修理しないといけないしな」
「おう」
そう言ってシュートと一緒に席を立ち、ハンゾウの分身を俺の影に入れて消すとレインが。
「キジ丸さん、今晩パーティーしよう思ってんねん、招待するから出てな?」
「パーティー?」
「初めてSランクの魔物を倒したお祝いやね」
ああ、なるほど。
それなら出させてもらおう。
「美味い料理とお酒も用意しとくからね」
「楽しみにしてるよ」
そう言ってシュートと部屋を後にした。
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