閑話1:驚きの連続。
キジ丸がレインとシュートが居る部屋から影渡りで転移した頃。
シュートとレインは画面を見てゼギアが踏み潰されそうな状況に、苦虫を噛み潰したような表情で凝視していた。
しかし、魔物の足が地面に着きそうになった瞬間、足が弾かれ巨体の魔物がしりもちを突くのを見て2人は、固まってしまう。
あの巨体を吹っ飛ばす何かが、足の下に現れたという事実に思い至り、シュートはすぐさま振り返るが、そこにはキジ丸の姿は無い。
そしてすぐ画面に目を戻すとそこには、遠くからアップにされたキジ丸の姿が映し出される。
「えっ!? ……おらへん」
「貴重なアイテムを使って移動したんだろ。それにしても、あの巨体を吹っ飛ばすとは、最強プレイヤーってのは知ってるが、ここまでバケモンとは思わなかった」
シュートもゲームを始めた時から鍛えて来たプレイヤーの1人だ。
それでも、明らかに異次元の強さを持つキジ丸を尊敬し、友達で良かったと心底思う。
「ホンマに同じプレイヤーなんあれ? どんな力してんの?」
2人はキジ丸が、腕力だけであの巨体を弾いたと思っているが、決して腕力だけではない。
強化した身体と溜気という技術があったからこその結果である。
更には力で装甲を無理やり剥がし隊員を助け出すキジ丸。
そこへ近づくジャボック。
2人の会話を聞いていたシュートは、すぐさまジャボックに連絡し、キジ丸の言うとおりにするよう指示を出す。
その際、戦闘を見届けたいのでジャボックに、離れて見届けるようにと指示を出した。
そして始まった戦闘。
「なっ!? 魔物を生み出した!?」
「ちゃうで、あれは魔物が小さくなったような形してるからたぶん、分身みたいなもんやろうな」
「あんなSランクは初めて見た……今までの魔物は、ここまでする必要が無かっただけなのか? それとも……」
「それは考えん方がええよ」
「だな……」
シュートは、Sランクの魔物がキジ丸を敵として認めている事にちょっと嫉妬を覚える。
自分が今まで戦ったSランクの魔物は、あんな事はしなかったからだ。
画面を見ていると大量に生まれた魔物がキジ丸に襲い掛かった瞬間、何かに圧し潰されるのを見てまたしても2人は、驚愕の表情を浮かべ固まる。
この時は流石のシュートも、言葉が出なかった。
すると本体が尻尾でキジ丸を叩く。
「あの尻尾はアカンで!? 死んだんちゃうん!?」
「小さい魔物に気を取られて気付かなかったか? だが、あの程度で死ぬような奴じゃ……ほらな」
次の瞬間には、魔物の尻尾を斬っていた。
「どうやって避けたん!? しかも一瞬で尻尾の根元まで移動って、どんだけ速いん!?」
「キジ丸は縮地を使えるからな。たぶん縮地だ」
キジ丸が忍者だと知っていれば、影渡りで移動したと気付いただろう。
魔物が暴れ始めると画面の端にいつの間に移動したキジ丸の姿が見え、2人は黙ったまま成り行きを見守る。
次の瞬間には、魔物の全身に傷が生まれ血を噴き出す。
「うわ、何かしたん?」
「……おそらくキジ丸が斬った」
「へっ? 動いてへんで?」
「あいつの技に、素早く斬る技があるんだ……あんなデカい奴にも使えるとはな」
「はぁ~、流石最強プレイヤーやね」
「ん?」
「キジ丸さん、何してんやろ? 動かへんで?」
「……何か技をするつもりだろう。集中してるな」
なんて話しながら画面を見ていると魔物が足を上げ、キジ丸を踏み潰す。
「っ!?」
「今のは直撃やで!?」
と心配するが画面の中に映る魔物は、そのまま前のめりに倒れる。
「なんや!?」
「っ!? 脚を斬っただと!?」
「あのぶっとい足を!?」
2人はこのままキジ丸が魔物を倒すと思い見ていると、魔物の赤い部分が光り衝撃波と熱波が周囲に放たれ、近くに居たキジ丸が弾丸のように吹っ飛んで行く姿が映し出されていた。
岩山に突っ込んで土煙を上げるキジ丸。
「うわ、今のは効いたやろ」
「どうかな? 俺が全力で殴っても殆ど効かない程の耐久力があるからな」
「はっ!? シュート君の全力やで!?」
「ああ、余裕で耐えてたぞ」
「化け物やん」
そこへ魔物が追撃で光線を放つ。
「あれはヤバいんちゃう?」
「どうかな? ……大会でハクのユニークスキルも避けてたキジ丸だからな」
なんて話してると魔物に大量の雷が降り注ぐ。
「なんやあれ!? 誰か応援が来たんかな?」
シュートはレインの言葉を無視して、画面に映る雷を見ながら思い出していた。
地球に居た頃、ネットで見たハンゾウの動画。
クラン・エデンのメンバーとハンゾウが戦った時に放っていた雷の雨。
シュートは自然と笑みを浮かべ、呟く。
「ハンゾウだ」
「ハンゾウ? って、あの最強プレイヤーキジ丸さんの従者で最強忍者の?」
「ああ、あの雷はそうだ。やっぱりこの世界に来てたのかハンゾウ」
そう言って笑みを深めるシュートと、ポカーンとして画面を見続けるレイン。
こうして最強忍者がこの世界に居る事を知る。
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