第28話 実戦訓練。
怒りの形相を浮かべ大きな赤い瞳で俺を睨む魔物。
こっちが小さ過ぎて逆に戦い難いだろうな。
なんて思ってると赤い部分が光り、奴の身体からボコっと肉が生まれ、形を変えていき奴の小さい姿へと変わっていく。
小さいと言っても全長10メートル程はある。
それが次から次へと生まれて来るのだ。
「マジか」
分裂する魔物はゲームでも戦った事あるけど、このサイズは初めてだな。
「フゥー……」
本体の前に分裂した奴を相手にするか。
と気合を入れ、ドドドドドドドド……と大量の小さい魔物が押し寄せる中俺は、刀を納刀し、居合切りの構えを取る。
集中……もっと深く……神気をもっと増やして…………。
アリが群がるように大量の魔物が迫り、跳んで襲い掛かって来た瞬間、俺を中心に半径100メートル範囲に居る魔物が全て、その場で上から何かに潰されるよう数体がグシャっと圧死すると同時に地面もボコっとへっこむ。
影明流・皇庭
残った魔物の動きが止まると俺は、その場で刀を横一閃。
圧縮された神気の斬撃が、動けない大量の魔物を両断。
身体がズレて血を噴き出す魔物。
うむ、良い感じだ。
もっと範囲を広げられるように今後は鍛えよう。
すると次の瞬間、上空から気配が迫って来たので避けようとしたが見ると、目前にデカい影が迫り、間に合わないと思い咄嗟に影に潜ってギリギリ避ける。
本体の尻尾攻撃だ。
目前に迫るとビルのようなデカさで、避ける暇が無い。
見てる人は俺が叩き潰されたと思うだろうな。
そのまま影渡りで尻尾の根元に転移し、影から出ると神気を練り、刀を抜きざまに尻尾の根元に向かって振り抜く。
影明流・魔閃
神閃は、魔閃の神気バージョンで、その威力は魔閃の時よりも数段上である。
神気と魔力は、神気が陽で魔力が陰だ。
それぞれ使い方で強さは変わるが、魔閃を魔力でやると、魔力の刃で間合いが伸び、相手を切り裂くが神気の場合、どうやら神気の刃が飛ぶらしい。
先程足の裏を斬った時は距離が近かったから分からなかったが、尻尾の根元まで50メートル以上あるので気付いた。
しかし神気の魔閃は、距離が離れれば離れる程斬れ味は落ち、魔力は逆で離れれば離れる程、斬れ味は増すようだ。
神気の場合は影明流・
神気の刃が奴の尻尾の根元に入り、半分程入った所で止まって四散。
切断するまでは行かないか。
尻尾の根元の太さは、約100メートル程。
70メートルくらいしか斬れなかった。
もっと訓練しないとね。
『GYAAAAAAAAA!!!!』
「痛いだろ?」
すると奴は、足を動かしてその場で暴れ回り、俺を踏み潰そうとするが、既に俺は影に潜って奴から20メートル程離れた場所の影に移動し、外に出て次の手を考える。
あの巨体をどうにか斬れないかな?
ん~、忍者ならあの技を使えるんだけど……。
と、考えてると奴の赤い部分が光った瞬間、全身に衝撃が走り、後方へ吹っ飛ばされる。
続けて背中側から衝撃が走り前に弾かれ、また前から衝撃が走り後方へ弾かれる事が数十秒続き、最後に奴の足が迫り、踏まれてしまうが少し遅れて影に潜ったので問題は無い。
全身に神気を流し常に強化しているので潰される事は無いが、滅茶苦茶重いな。
それより今の衝撃は何だったんだ?
奴の赤い部分が光ったと思ったら吹っ飛ばされてたんだが?
……空気を圧縮させて俺にぶつけた?
魔法を使ったのか?
なんて考えてると奴の足が上がり、影の中から見ていると奴が周囲をキョロキョロし、俺を探し始める。
もっと斬れるようにならないとなぁ。
……ん?
魔物の傷が徐々に再生してる?
早くね?
っ!?
そうか、俺の神気を取り込んで回復してるのか。
斬った時、奴に流したからな。
神気、マナは生命力。
他人のマナを自分のものにするとはね。
つまりこいつは、魔力じゃないと倒せないと……やってやろうじゃん。
影から出て神気を解除すると全身に魔力を流し、納刀して刀にも魔力を流すと鞘ごと青白く光る。
影明流・斬気
斬るという意思、イメージを魔力に流し、斬撃力を上げる技だ。
俺はその場で腰を落とし、技を発動。
影明流・瞬斬気
その瞬間、奴の全身に斬撃が走り、あっちこっちから血を噴き出す。
『GUAAAAAAAA!!!』
奴は身体と腕を動かし、小さな俺を振り払おうとするが既に俺は、元の位置に戻り納刀していた。
やっぱりデカすぎて切断まではいかないか。
だがまだまだこれからだ。
もっと……もっと研ぎ澄ませろ……静かな水面のように乱れを無くす。
深く集中して斬気を解き、魔力本来の使い方に集中する。
陰の魔力は、神気と違って真逆の使い方。
斬気は対象を斬るという意思とイメージで斬撃力を上げていたが、魔力の場合それではダメだ。
己を斬る……もっと内へ……。
するとジッとしてる俺を見て奴が左足を上げ、俺を踏み潰そうとして来た。
巨大な足が迫る中俺は、集中を途切れさせず更に深く集中していく。
奴の足が地面を踏み、ドンッ!! と地面を揺らすが次の瞬間、踏み込んだ足が膝下で切断され、前のめりに倒れる巨大な魔物。
『GUAAAA!!!』
俺は倒れた奴の左側に立ち、刀を横に振り抜いた体勢で止まっていた。
奴の足を右側へ素早く移動し避けると共に、刀を振り抜き奴の足を切断。
「よし、斬れた」
だが一度斬るだけで続けて斬る事がまだ出来ない。
もっと訓練しないと。
常にこいつを斬れるようになって、一撃でスパッと両断出来出来ないとな。
まだまだ先だけど。
もう一度集中して今度は、奴の首を落とそうと準備をしようとした瞬間、奴の赤い部分が光り、高温の熱波が奴の身体から放たれ、近くに居た俺は思いっきり弾かれ数百メートル吹っ飛ばされてしまう。
滅茶苦茶熱い!
と、すぐさま体内に印を書いて回復すると高い岩山に叩き付けられ数メートル埋もれた所で止まる。
「っつ~」
あの衝撃波というか熱波は近くで喰らうとヤバいな。
ん?
あの野郎、マジか。
岩山の中に挟まった状態で前を見ると、赤い光が迫っていた。
奴が口から放った光線だ。
俺は咄嗟に神気で作った竜の鱗を全身に纏う。
視界が赤い光りに染まり、熱で周囲の岩山が溶けていくのが見える。
……分かった。
訓練はここまでだな。
奴の足を斬れたので今回は、これで良しとしよう。
ここからは訓練ではなく、戦闘だ。
本当の俺を見せてやろう。
俺は忍換装し忍者になると未だに光線を吐き続けてる奴の近くへ転移し、遁術を発動。
影明流忍法・五式轟雷雨
その瞬間、空から奴に大量の白い雷が降り注ぐ。
『GYUAAAAAAA!!!』
さて、始末するか。
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