第26話 ゼギア部隊の戦い。
Sランクの魔物が現れ、全ゼギア部隊が出撃した。
『前方2キロに魔物を視認。全長562メートル』
「よし、全部隊左右に分かれて位置に着け、俺達は正面から行くぞ」
『隊長、もし仕留めたらボーナス出ますかね?』
「将軍からボーナスを出すと約束を貰ってるからな。全力でやるぞ」
『了解!』
『俺が仕留めてやる!』
「ちゃんと連携を取れよ? Sランクは今まで一度も倒せていないんだ」
部隊を指揮してる隊長『ジャボック』少佐。
ゼギアのパイロットになって8年のベテランパイロットである。
ゼギアのベテランパイロットは珍しい。
殆どのパイロットは、大型魔物、Sランクの魔物と遭遇すれば、殉職する事が多いのだ。
全部隊が魔物に近付き、射程距離に入ったので一斉に攻撃が始まった。
空中と地上からマギアと呼ばれる武器を打ち出す。
魔力を凝縮し打ち出す兵器で、魔力を使えない者でも扱えるよう設計されている。
魔物は全身黒く、硬い皮膚に覆われ関節や所々が赤く光り、身体の周囲の景色が熱で歪む。
ゼギア部隊が一斉射撃したマギアライフルの弾が魔物に着弾。
しかし身体のサイズが大き過ぎてライフルの弾は、豆鉄砲のようなもの。
それでも弾は魔物の表面の肉を抉り、僅かに血を噴き出させる。
雨のような弾丸が魔物に降り注ぐ中魔物は、全身に走る赤い部分を更に光らせると次の瞬間。
「全員退避!!」
ジャボックが指示を出すと同時に、魔物から赤い光りの衝撃波が放たれた。
もの凄い速さで衝撃波が広がり、飲み込まれたゼギアは、機体の表面を微かに熱で溶けながら衝撃波によって吹っ飛んで行く。
殆どの隊員は、ゼギアに搭載してある魔力の結界を張って何とかその場で耐えるが、熱によって機体の所々が溶ける。
「コルストまだか!?」
すると数秒の間を空けて通信機から声が聞こえてきた。
『すみません遅くなりました。準備完了です』
「撃て!!」
『発射!!』
その瞬間、ジャボック達の遥か後方から、幅6メートル程ある青白い光線が空中に居るジャボック達の下を通過して魔物に直撃。
光線が魔物に当たると当たった部分の肉を抉り、魔物の心臓に近い腹の部分を貫通して穴を空ける。
「よし!」
『次弾の準備に入ります』
「ああ、全員攻撃の手を休めるな! 奴の動きを止めるんだ!」
『自分はもう動けません!』
『こっちも無理です!』
「動けない者は、機体を捨てて退避しろ! 他の者は攻撃して援護!!」
そう言うとジャボックも攻撃を始め、退避する隊員の援護をしながらコルストという隊員の次の攻撃までの時間を稼ぐ。
ゼギアの操縦は、装置に手を置いて思念操作で機体を動かしている。
初期のゼギアは、街に居ながら思念操作で操縦し、人が機体に乗る必要が無いように作られたがそれだと、思念が届く距離に限界があり、街から遠く離れる事が出来ないので、機体に乗って直接触れ、思念で操作するように作られているのだ。
そのお陰で自分の身体のように機体を動かす事が可能で、動きは人間に近く細かな作業も出来る。
『装填完了!』
「撃て!」
数秒で次弾装填が完了し、先程と同じ光線が魔物の心臓部分に着弾。
『GAAAAAAAA!!!!』
血を噴き出し、身体を捩る魔物。
「効いてる」
ジャボックは、初めてSランク魔物を倒せると思った次の瞬間。
魔物の身体に空いた穴が、急速に塞がっていく。
「チッ、やっぱり再生しやがったか」
『装填完了!』
「待て」
『どうし……再生……』
Sランクの魔物は全て、傷を負っても再生する事は知られている。
これまでいろいろ試してきたが、再生する魔物を倒せた事が一度も無い。
「あのデカさじゃ、一撃で全身を消滅させるなんて出来ない……やはりSランクは倒せないのか?」
そんな中、未だに攻撃を続けている隊員達。
マギアライフルからボシュッ! と空になった棒状のマガジンが飛び出し、機体の太腿部分から新たなマガジンを取り出すと装填してまた打ち始める。
ジャボックはここで倒す事は諦め、追い返す事に頭を切り替え、隊員達に打ち続けるよう指示を出し、コルストにも撃ち続けるように言う。
コルストは、ジャボックの後方1キロにある高い岩場で、大型マギア兵器を打ち出していた。
大型魔物用に開発された兵器。
全長26メートルある銃身。
ゼギアで腰に抱え、打ち出す事しか出来ない大型兵器だ。
1発でマガジンを1つ消費する程の威力を持ち、その威力は、核以上の破壊力がある。
それでもSランクの魔物は倒せない。
その理由は、超速再生能力のせいだ。
傷が塞がった魔物は、全身の赤い部分を光らせると今度は、口から赤い光線を周囲に居る隊員達に向けて放ち、地面に着弾すると大きな爆発と共に赤い炎が天に上る。
『ぐあっ!』
『結界じゃ防ぎきれない!!』
「退避しろ!! このクソ魔物がぁああああ!!」
ジャボックはマギアライフルを撃ち続け、魔物の気を引こうとするがまったく気にも留めず、ドスンッ! 一歩踏み込むと身体を捻り、一番近くに居たゼギア部隊に向かって尻尾で薙ぎ払い、数体のゼギアが吹っ飛ぶ。
ゼギアは全長12メートルだ。
魔物の尻尾はそれ以上にデカい。
尻尾で殴られれば簡単に吹っ飛んで行く。
「くっ……全員撤退!! 撤退しろ!!」
『すみません隊長、もう動けません』
『私も、吹っ飛ばされた衝撃で身体が動きません』
ジャボックは、引き際を間違えたと頭を過るが、今はそんな事はどうでもいいと頭から追い出す。
何としても隊員達は生かして帰る。
それが部隊を預かった者の責任だと思っているジャボック。
すると魔物が近くに倒れて動かないゼギアを見つけ、大きな足を上げて踏み潰そうとしていた。
「止めろ!! 俺が相手だ!!」
魔物の近くまで飛んで行き、顔に向けて撃ち続けるジャボック。
それでも魔物は、ゼギアに向かって踏み込んだ。
しかし次の瞬間、魔物が悲鳴を上げしりもちを突く。
『GYAAAAAAA!!!』
「はっ?」
ジャボックは、あの巨体がしりもちを突くなんて事があるのかと思い、何があったのか確かめるため、倒れていたゼギアに目を向ける。
「……何だ? 何か居る?」
『隊長、英雄が助けてくれました!』
「英雄!? 将軍か? ……いや違う。あれは……誰だ?」
ジャボックが見る先には、刀を抜いた黒髪の若い男が立っていた。
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