第25話 女王の依頼と。

カリムス王国女王、レイン・ロードは、綺麗なエルフ。

服装は、白を基調としたローブを着ており、法王って感じだが見た目と関西弁で頭が一瞬混乱した。


「ほら、ソファに座って話そ? お茶も用意してるで?」

「スゲー見た目とのギャップがあるな」

「あっ、この関西弁? よう言われるわ」

「標準語に挑戦したが無理だったんだ」

「ほら、そんな事より座って話そ」


レインに促され、俺とシュートが同じソファに座り、対面にレインが座るとインベントリからお茶の入ったカップを取り出し、俺達の前に置く。


「最強プレイヤー、あの動画見ましたよ? 凄い戦いっぷりやったなぁ。あそこまで強くなれるもんなんやね?」

「まあ、鍛えてるからな……と、自己紹介がまだだったな。俺はキジ丸。よろしく」

「よろしく~、それでどうやったらあんな強くなれんの? 今も変わらへん?」

「感覚では変わってないかな?」

「それなら良かった……キジ丸さんに依頼したい事があるんやけど良いかな?」


さっそく本題か。


「依頼内容と報酬次第かな?」

「じゃあ、先に依頼内容を話すわ……古代都市の攻略を手伝って欲しいんです」

「攻略? 超えて北に行くって事?」


しかし首を横に振るレイン。


「古代都市に乗り込んで、次元高炉を停止させたいんやけど、スキラスが多くて難しいんです。そこで最強のキジ丸さんの力を貸してほしいやけど良いかな?」


古代都市に乗り込むか……。


「それはなんのために?」

「北側と連絡を取れるようにするため」


いずれ行くつもりだし、報酬をもらえるなら行こうかな?


「内容は分かったけど、報酬は?」

「お金ならいくらでも出すけどどう?」

「国を出る身としては、この国の金を貰ってもなぁ」

「じゃあ、何がええの? なんか欲しいもんある?」

「レインの職業ってなに?」

「ゲームの時の? あたしは『霊源師れいげんし』っていう職業やけど?」


霊源師?

どんな職業なのか詳しく聞くと魔力で騎士などを生み出し、それを操って戦う職業との事。


テイマーや召喚師のように、自分ではなく従者がメインの職業だが、生み出した霊源を身に纏い、自身を強化する事も可能らしい。


「しかも、生み出した霊源は成長させる事が出来んねん!」

「成長型か……よし、報酬はその術を教えてくれる事で良いぞ」

「へっ? 他の職業スキルを習得出来んの?」

「出来る」


俺は陰陽術、召喚術、死霊術を習得してる事を話す。


「死霊術も!? ……はぁ~、凄いなぁ、流石最強プレイヤー」

「他にも、珍しい職業の元プレイヤーが居れば、その術を教えてくれるなら、依頼を引き受ける。俺が必ず古代都市の奥まで連れて行ってやるぞ?」

「レインも行くのか!?」

「当たり前やん、次元高炉の仕組みとかシュート君が理解出来る?」

「いや、無理だな」

「まあ、あたしも見てみな分からんけど、あたし以外に適任者が居らへんからね。でも、次元高炉は未知の領域やし、もしかしたら止められへんかもしれへん。そうなった時は、潰してほしい」

「高炉って潰して大丈夫なのか?」

「さあ?」


大丈夫かこいつ?


「なんにしても、見てみないとなんとも……」


そこでシュートが口を開く。


「レイン、魔物が接近中だと報告が今あった」

「どっち?」

「北西、到達まで約20分、ランクはSだ」

「S!?」

「Sなら余裕で倒せるだろ?」


俺の言葉にシュートとレインが目を見開いて俺を見る。


「いやキジ丸、SランクってのはGFWの魔物のクラスとは違うぞ?」


確かに、ゲームで魔物の強さを表すのは『ランク』じゃなくて『クラス』だったな。

じゃあランクSとはどの程度なのか聞くと、全長500メートル以上あってデカい魔物の事を言うらしい。


「500メートルって、壁より高いんじゃね?」

「ああ、だからマズいんだよ。しかも人型なら簡単に壁を破壊される」

「今向かってるのは?」

「幸いにも、恐竜型だ」


ゴ〇ラみたいな感じね。

シュートがとりあえず、ゼギア部隊の出動を命じたらしく、既に出撃してるとの事。


「魔物か、見てみたいな」

「ならここで見ようか?」


すると俺達が座ってる横の壁の中から大きなモニターが現れ、ゼギア部隊が空を飛んでる映像が映し出された。

目線は部隊の隊長が乗っているゼギアらしく、遠くには既に大きな魔物の姿が見える。


「デカ……」


GFWで戦ったシトっていう魔物くらいじゃね?

あんなデカい魔物があっちこっちに居るのか。

1体なら倒せるだろうけど、数匹居ると連戦は厳しいかな?


あれくらいデカいと、大技を使う必要があるしな。

そうすると魔力やマナの消費が多くなる。

刀で斬れれば良いんだけど……まず足を斬って体勢を崩したところで、首をスパッと……いや、あのデカさだと難しいか?

太さが数十メートルのある首。

足はもっと太い。

でも、試してみたい……。


「真剣に見てるな。デカいだろ?」


影明流の技で、斬れるとしたら魔閃と他には……。


「アカン、聞こえてへんで?」

「おい、キジ丸!」

「ん? どうした?」

「聞こえてなかったのかよ」

「悪い、俺ならどうやって倒すか考えてた」

「はっ?」

「はぁ~、流石最強プレイヤーやね。あれを見て倒そうって思うのがあたしらとは違うわ」

「ゼギア部隊でも厳しい戦いになるだろうな」


おっ?

なら俺が戦いに行っても良いのかな?


「今までゼギア部隊で魔物を倒した事は?」

「何度かある。だがSランクは初めてだ」

「Sランクと戦った事が無いのか?」

「いや、あるがいつも途中で逃げられて終わりだ」


ほう、追い返す事しか出来ない程の強さって事ね。

うむ……倒すだけなら簡単だ。

落星か神星を使えば、余裕だろう。


だがしかし、魔物よりその技での被害が大きくなりそうだな。

結界を張って落とせば大丈夫だろうけど。

やっぱりここは、斬ってみたい。


ハンゾウで行けば大技を使わなくても倒せるだろうが、キジ丸として戦いたいなぁ。

……ダメだ。

どうしても考えてしまう。


これは、良い訓練になりそうだと。



画面を見ながら2人に問う。


「俺が出て良いか?」

「はっ?」

「あれと戦うつもりなん!?」

「……生身で戦うつもりか?」


俺は頷く。


「獲物を横取りする事になるが、良いかな?」


そう言うと2人は、ポカーンとして固まる。

あれ?

何か変な事を言ったかな?


するとシュートが突然笑い出す。


「クハハハハハハハ!!!」

「どうした?」

「最強って頭がイカレてんの?」


失礼な女王だな。

いたってまともだ。


「はぁ~……良いんじゃねぇか? キジ丸を止める権利は俺達にはねぇし」

「倒してくれるんやったら有難いけど、ええの?」

「横取りして良いのか?」

「俺達はSランクの魔物を、獲物とは思っちゃいねぇよ」

「そうやね。ただの災害やからなぁ」


あっ、そうなのか。

なら、訓練に使わせてもらおう。

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