第24話 神楽へ。
ゲームの時から含めて、久しぶりにベッドの上で目覚めた翌朝。
南方に出かけてた時は、いつも土の中で寝てたからな。
こうやって偶にベッドで寝ると、本当に寝心地が良いと思える。
昨日はあの後、少し話をしてから客室を使わせもらいベッドで寝たのだ。
ベッドから降りると寝汗を掻いたので、クリーンで全身を綺麗にし、部屋を出てリビングへ向かうとリビングと繋がってるダイニングキッチンでシュートが、料理をしていた。
フライパンで卵を焼いてるようだ。
「おは~」
「おう、まだ寝てて大丈夫だぞ?」
「いつもこれぐらいに起きるから問題無い。それより、料理するんだな」
「卵を焼くぐらいはする。もうすぐで出来るから待ってろ」
「サンキュー」
俺はキッチンカウンター前にあるダイニングテーブルの席に座り、インベントリから煙草を取り出すと指先で火を点け、朝の一服をする。
こうしてると日本で、普通に朝を迎えたような感覚になるな。
煙草がもうすぐ終わる頃、朝食が出来たとカウンターに皿を置くので受け取る。
メニューは目玉焼きとベーコン、そして焼いた食パンにバターという、ベタな朝食だがこれが美味いんだよね。
シュートがコーヒーをカウンターに置いてくれたので受け取り、灰皿で煙草を消して先に朝食を頂く。
「頂きまーす」
「おう」
コーヒーを1口飲んで、食パンにかぶり付く。
サクッとモチッとしてバターの塩気が美味い。
シュートも対面に座って食い始めると、飯を食い終わったら中央の塔へ向かうと言うので、あのデカい塔かと思い浮かべる。
「あそこが政府の中枢?」
「ああ、女王の城、っていうより塔だけどな。軍施設もあの中だ。『
カグラ、女王が付けた名前だろうな。
あの塔は、宇宙まで伸びてるのでは? と聞くとそれは無いとの事。
大気圏の手前で止まってるそうな。
こんだけ技術が発達してるのに、人工衛星は打ち上げないのか尋ねると。
「元プレイヤーで力や魔法があっても、俺達も一般人と変わらないからな。人工衛星のノウハウなんて誰も持ってないだろ。そういう所で働いてたプレイヤーが居れば別だけどな」
「確かに……北側と連絡は取れないのか?」
「ああ、次元高炉が邪魔をして魔力を飛ばす事も出来ねぇ」
「って事は、やっぱり直接超えて行くしか無いって事だな」
「そういう事だ」
なんて話をしてると飯を食い終わり、食後の一服をした後、神楽へと向かう事に。
家を出てエレベーターで地下へ向かうとそこは、駐車場になっており、シュートの車に乗って向かうようだ。
「流石将軍、自分の車を持ってるとは」
「だいたいの奴は持ってるぞ? あれだ」
と指したのは、黒いスポーツカー風で速そうな車。
良い趣味をしてる。
助手席に乗り込み、シュートがエンジンを掛けるとキュイーンと静かな音が鳴り、メーターや音楽を聴くプレイヤーに光が灯ると音楽が流れ始めた。
「日本で聞いた事あるような歌だな」
「そりゃ、日本の音楽を真似てプレイヤーが作ったからな」
なるほど。
ゲームならその世界感を楽しむが、実際に生活して生きるなら日本の方が過ごしやすいか。
車を発進させ、車用のエレベーターに乗って地上へ向かい、建物から道路へ出て神楽へ向かって走り始めたところでシュートに「帰りたがってるプレイヤーは居るのか?」と尋ねると。
「そりゃ当然居る。日本に大切な人を残してきた者、日本の生活が忘れられない者、親に会いたいと思う者といろいろだ」
親か……俺が死んだってなると俺の金は、親に渡るのかな?
それならそれで良いんだが、友達はGFWの中にしか居ないし、恋人も当然居ない。
俺は特に帰りたいって気持ちは無いなぁ。
「シュートは? 日本に帰りたい?」
「俺はあいつが居ればどこでも良い」
シュートの言葉を聞いて俺は、男女なんてそんな綺麗なもんじゃないだろと思う。
帰りを待つ女?
そんなのは物語の中だけだ。
戦争があった時代は、女が待つってのはよくある話だが、俺達が生まれた2000年以降は、男も女も浮気だらけだからな。
なんて思ってるとシュートが。
「あいつがもし、誰かと一緒になって幸せなら、それはそれで良い。そうなれば俺は……最強でも目指すかな?」
あれ?
俺の心を読んだ?
しかし、最強は譲らないぞ?
「キジ丸は? 女は居ないのか?」
「居ないねぇ……女は基本、信用出来ないから」
「あぁ、過去に何かあった系か?」
「まあちょっとな。仲間や友達としてなら普通に付き合えるが、男女の関係になるのは無理だな」
「結婚する気は無いと?」
「無いな。俺は最強を目指すだけだ」
「既に最強だろ?」
「甘いな。俺なんてまだまだだ」
影の神(GFWの管理AI)と半蔵(影の神の使徒)に比べるとね。
「お前より強い奴が居るのか!?」
「GFWに居たな」
「プレイヤーか?」
俺は首を横に振る。
「住人か」
なんて話をしてる内にあっという間に塔に到着。
広い高速道路のような道をがそのまま塔の中に続いており、中に入るとロータリーになっていて入り口前に停め降りる。
入り口前には銃を持った警備が2人、その他にも到る所に銃を持った警備がウロウロしていた。
流石中枢。
厳重な警備だ。
開かれたままの扉から中に入り、確認せずに入れるんだと思ってるとシュートが、リングを付けて扉を潜るだけで、IDチェックはされてるとの事。
ハイテクだな。
中は広いロビーになっており、ATMのような物が壁沿いに並んでいたり、ホテルのような受付が幾つかあったりと、見た感じ空港の中って感じだ。
等間隔に幅が約10メートル程あるぶっとい柱がある。
こんだけデカい建物だと柱もデカい。
エレベーター乗り場へ行き、既に1階で止まってるエレベーターに乗り上へ向かうと数秒後、止まって扉が開くとそこは、約20メートル程の廊下が続いてるだけの階層だった。
床も壁も天井も近未来っぽい硬い素材で、天井には埋め込まれた明かりが点いてる。
気になったのでどんな素材で出来てるのか聞くと。
「特殊合金らしいぞ。錆びない劣化しない、そして耐久力が高い。女王が作った素材だって言ってたな。ゼギアにも使われてる合金だ」
それをこんな大量に?
スゲーな。
と、突き当りの扉前に到着すると何も言わず立ち尽くし、数秒経つと両開きの扉が開く。
これもセンサーか何かだろう。
中は、奥行き約30メートル、幅約20メートル程ある広い部屋で、壁沿いには本棚が並び、右側にはソファとテーブル。
左側にはバーカウンターが設置されている。
正面奥には、大きな執務机、右奥には会議用の大きなテーブルが置かれていた。
シュートがそのまま歩いて行くので俺も後に付いて行くと、執務机の前で立ち止まるが、執務机の席には誰も居ない。
すると数秒後。
左にある扉が勢いよく開く。
「いらっしゃ~い! どうも最強プレイヤーさん。あたしがこの国の女王をしてる『レイン・ロード』と言います。よろしく! さあさあ、そんなとこ突っ立っとらんで、ソファに座ってや」
出てきたのはなんと、長い金髪に尖った耳をした綺麗な関西弁の女エルフだった。
見た目と中身が違い過ぎる!
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