第23話 シュートの目的。
ソファに座って一息吐いてるとシュートが、ビールでも飲むかとインベントリから缶ビールを取り出す。
「インベントリに入れてるのかよ」
「冷やしたビールをいつでも飲めるようにな」
「良いね」
そう言って受け取り、プシュッ! と開けて乾杯してから一気に流し込む。
「んぐ……ぷはぁ~、美味い!」
ヒヨがゲーム内で作ったやつも美味かったけど、これも美味いな。
のど越しが最高!
「だろ? 飯はどうする? 何か注文するか?」
「シュートが作るんじゃないのか?」
「誰が作るかよ。夜はいつもデリバリーか外で済ませてるぞ」
「料理スキルを持ってたら滅茶苦茶美味く作れるのに、勿体ない」
「あいにく料理スキルは持ってなかったな」
「ハンバーガーで良いならあるぞ?」
「キジ丸が作ったやつか?」
「おう、ドラゴン肉を使って作ったハンバーガーだ」
「くれ」
インベントリから出して紙に包まれたハンバーガーを1つ、投げて渡すと俺も自分の分を取り出してかぶり付く。
相変わらずの美味さ!
「滅茶苦茶うめぇな!?」
「だろ? ……シュートは火の盃って知ってるか?」
俺がそう言うと一瞬キョトンとした後、笑いながら答える。
「なんだ? 組織潰しのキジ丸が潰したか?」
「いや、まだ潰してないけど今日、他の元プレイヤーに会ってな。それで……」
今日あった事をシュートに話し、なぜ警察は火の盃に手を出さないのか聞いてみた。
「あぁ、詳しくは知らんがなんでも、火の盃と警察が裏では繋がってるみたいな事をアキオが言ってたような?」
「マジか、この世界の警察も終わってるな」
「いや、これはあくまでアキオが言ってた事だぞ? 火の盃は、裏社会を纏める事を条件に、警察が見逃してるらしい」
「それで下っ端は調子に乗ってるのか……」
「下っ端が捕まっても数日したら釈放らしいぞ」
それであの時あいつら、警察を呼んでも来ないとか言ってたのか。
そりゃバカが増える訳だ。
これは幹部の責任だな。
「アジトはどこか知ってる?」
「なんだ? 殴り込みにでも行くつもりか?」
「いや、幹部の元プレイヤーに忠告をしようかと思ってな。下っ端の教育が出来ないなら潰すぞって」
「はは! 最強プレイヤーが言うとマジに聞こえるな……あいつらの連携は厄介だぞ?」
と、最後は真剣な表情をして言うシュート。
シュートも戦った事があるのか聞くと、こっちの世界に来てからアキオと一緒に一度戦った事があるらしく、その時は女王が止めに入って引き分けで終わったそうだ。
シュートとアキオが引き分けにねぇ……是非戦ってみたいものだな。
なんて思ってると。
「戦ってみたいって顔に出てるぞ」
「……あっ、そうだ」
「あからさに話を切り替えたな」
「今日魔力が使えないプレイヤーに会ったんだが……」
俺は、他にも魔力が使えなくなったプレイヤーが多く居る可能性を話し、保護やら何かしないと死ぬプレイヤーが増える事を指摘する。
「あぁ、それなら女王が既にやってる」
「そうなのか?」
「まともに戦えないプレイヤーも多いからな。今じゃ街中で普通の仕事をしてる元プレイヤーが多い。軍にも何人か居る」
「ならその中で、珍しい職業だった奴は居るか?」
「珍しい職業? 居たかな?」
「なら明日、女王と話した後、そいつらを紹介してくれ、俺が魔力を使えるようにしてやるから」
「どうした急に? マナを使った方法で使えるようになるんだろ?」
俺はニヤっと笑い答える。
「ここは現実世界でゲームシステムは無い」
「そりゃそうだろうな……それが?」
「今なら他の職業スキルも習得可能って訳だ」
「っ!? ……マジか?」
「ああ、既に陰陽術と召喚術を教えてもらったぞ?」
そう言って鳥の形をした紙を作り、式紙を発動させるとカラスになり、俺を見て頭を下げる。
シュートを見ると、口を開けて固まっていた。
「どうだ? 式紙だ」
「マジかよ……っ!? じゃあ、テイムも出来るようになるのか!?」
「? テイマーに教えてもらえば出来るようになるんじゃね?」
すると前のめりになるシュート。
「テイマー……誰か居たか? ……あいつは、いや……」
「そんなにテイムしたいのかよ」
「当たり前だろ!?」
こいつ、ゲームの時から随分変わったな。
あの時は、ただ強くなる事を目指してたのに、今は癒しを求めてる。
「空を飛べる魔物をテイムすれば、北へ行けるかもしれない。そのためにもテイムを習得しないとな」
なるほど、北へ行くためか。
それなら、普通に北へ行けば良いのでは?
と思い、シュートに言うと北にある古代都市を地上から超えるのは、かなり厳しいらしい。
迂回すれば良いんじゃね?
なんて言うと、大陸を北と南を分断するように古代都市は存在し、迂回しようにも出来ないとの事。
しかし、唯一古代都市が無い場所があるそうな。
「ならそこから北に行けば……」
「それが出来たらとっくに行ってるわ」
ごもっとも。
古代都市が無いのになぜ行けないのか聞くと。
「大量の魔物が居るからだ」
「ん?」
「しかも普通の魔物じゃねぇぞ?」
そもそも普通の魔物が分かりませんけど?
「どんな物でも食う魔物、大きさは馬くらいだが、それが数百万、下手したらもっと居る。それに加えてデカい魔物もウロウロしてるからな」
数百万、そりゃ確かに多いな。
「そんな場所を通るのは自殺行為だろ?」
ちなみにそこの上空には、空を飛んでいる魔物が居るとの事。
「なら普通に古代都市を抜けて……」
「だから地上は、スキラスがウヨウヨ居るから、空を飛べる魔物をテイムして行こうかと思ってるんだよ」
「上空には何も居ない?」
「いや、居るには居るが、魔物よりはマシだ。ただ……」
シュートの話しによると古代都市を上空から抜けようとした魔法使い系のプレイヤーが、空を飛ぶ魔法で超えようとしたらしいが、街の半分程まで行くと、魔法が使えなくなって落ちたそうだ。
その人は仲間のお陰で助かったらしいが、街の半ばまで行った時、魔力がいきなり使えなくなったという。
その後調査で、もしかしたら次元高炉の影響ではないかと言われてるらしい。
ハッキリとした原因は分かってないと。
うむ、これは悩むな。
スキラスがウヨウヨ居る都市を倒しながら進むか、数百万の魔物とデカい魔物が居る地域を超えるか……やっぱ魔物でしょ!
「そう言えば、シュートも北を目指してるのか?」
「ああ、俺達の活動拠点に他のメンバーを残してたからな。今頃生きてるかどうか……あいつが死んでいたら……」
おっ?
惚れてる誰かが居るのかな?
好きな女のために、何としても北方へ帰りたいって事か。
将軍までなったのに、この国を出て良いのか?
「メンバーに好きな奴でも居るのか?」
「彼女だよ」
「ん?」
「彼女と一緒にゲームをやってたんだ」
「あぁ、それで……この国を出て良いのか?」
「それは既に、将軍になる時女王に言ってある。帰る方法が見つかったら俺はこの国を出るってな」
それでも将軍にするとはね。
明日、どんな依頼をされるんだろ?
あっ、依頼なら報酬は何にしようかな?
国を出る予定だから金は必要無いし……女王が珍しい職業だったら、術を教えてもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます