第21話 魔導書の影響。

店員と店長のおっさんにお礼を言われ、俺達は個室に戻るとさっそく火の盃について聞く。


火の盃は、ゲームの時から存在した犯罪クランの1つで、トップがトラジというプレイヤーらしい。

そしてそのトラジという男が変な術を使う事で、南方では結構有名だったという。


「変な術って?」

「幻覚を見せたり、獣を召喚したり、あとは青い火魔法を使ったりするって聞いた事があります」


幻覚、召喚、火……幻術師だとしたら獣も火も幻覚だろうけど。

話しを聞くと青い火で燃やされたり、獣に食われて殺されたプレイヤーも居るとの事。

つまり幻術師じゃないって事だな。


詳しく聞くと召喚した獣は、見た事の無い獣ばかりで見た人の話しだと妖怪に似てるそうだ。


「妖怪……」


もしかして妖術師?

そんな職業があるのか知らないけど、GFWならありそう。

妖術と考えれば幻覚や召喚、火魔法も納得だ。

新たな職業のプレイヤーか……面白そうだな。


「火の盃は、3人のプレイヤーが幹部に居て、その他はゲームの時から全員住人ですね」


俺のクランと似たようなもんか。

まあ、俺のクラン異界の里は、全員忍者だけど。



現実になった今も犯罪を犯してるのか聞くと、表立っては特に悪い事はしていないが、裏では相当悪い事をやってるとの事。

なぜ警察は動かないのか尋ねると、幹部の3人が厄介で警察も手を出せないらしい。


「厄介って強いって事か?」

「それもあるけど一番は、まともに戦えないんだってさ。知り合いが戦った事あって聞いた話だと、こっちの攻撃は当たらないのにあっちの攻撃は全部喰らうんだって言ってた」


とキミカが言う。

妖術を使った戦法かな?


「あと、3人がいつも一緒に居て連携されると誰も手出し出来ないとも言ってたね」

「ほう、それで警察も迂闊に手を出せないと?」


するとミツキが、証拠が無いから捕まえる事が出来ないと教えてくれた。

証拠ねぇ……アキオとシュートに聞いてみるか。


「その3人とは戦ってみたいな」

「あっ、喧嘩なら警察も動かないけど、殺し合いをしたら普通に捕まるよ?」

「ですね。喧嘩も行き過ぎたら留置場に入れられます」


その辺りは日本とあまり変わらないんだな。

まあ、こんなに発展してるなら法律もしっかりしてるよね。



その後、火の盃について噂を少し聞いてから店を出る事にし、店の前で2人とは別れる事にする。


ミツキは縛りをした状態で普通に魔力を使えるようになる事とマナの制御訓練の課題を与え、もし何か分からない事があればいつでも連絡出来るように、リングの連絡先を交換した。


リングの場合、ID番号を登録すれば念話で通話が出来るようになるのだ。

キミカとも連絡先を交換したぞ。


2人と分かれた後俺は、街中を観光しながら途中、スカイツリーより高いビルのような建物がショッピングモールになってるのを発見し、さっそく中に入って店を見て回る。


なんとこの国には、テレビも音楽もあり、漫画や小説まで出ている事を始めて知った。

ちなみに電化製品は全て魔道具で、魔力で動くようになってる。


店頭に置かれた大画面のテレビには、魔法を使ったショーが流れており、他にも芸能人やアイドルといったものまで居る事にビックリ。

まあ、それだけ壁の中は安全って事だろうな。


ショッピングモールを観光した後、街中を見て回り、気付くと日が沈んで来たのでそろそろ訓練をするかと思い、この街に来る途中にあった荒野へ転移する。

街中で訓練は出来ないからね。



日が沈みかけて空が赤くなり、岩の影が当たりを覆って薄暗くなっている。

魔力感知と空間感知で周囲に何も居ない事を確認し、さっそく閻魔鉱の装備を着けると訓練開始だ。


まずは魔力制御の訓練を行う。

これは縛りをしてるので魔力を全身に流し、細かい魔力制御をこなしていく事約1時間。


それが終わると今度は分身を2体出して遁術で1体に攻撃し、もう一体から来る属性攻撃には打ち消す属性攻撃を放ち、遁術による攻撃と防御の訓練を30分程続け、一旦分身を解除。


ここからは無手で型の訓練を1時間程行った後、閻魔鉱製の刀を使った素振りと型の訓練を1時間。

辺りは既に真っ暗だが暗視のお陰で、はっきり見えるので問題無い。


基本の訓練が終わるとここからは、戦闘訓練だ。

俺は地面に座って座禅を組み、分身2体を出して1体に感覚共有を行い、どちらかが死ぬまで戦闘開始。


戦闘なのでこれは10分程で終わった。

今回は俺の勝ちで終了。


ここから今まで無かった新しい訓練である。

そう、魔導書を読む!

本を読むのが訓練?

って思うだろうが魔導書は、一気に読み進めると情報量の多さに頭が耐えきれず、頭が破裂する恐れがあるそうな。


実際初めてゲームで読んだ時も、気を失ったからねぇ。

なのでじっくり進めないと、死ぬ恐れがあるのです。


さっそく地面に座り込んでインベントリから魔導書を取り出し、最初のページを開く。

ここは既に読んでるので何とも無い。

問題は次のページからだ。


深呼吸してからページを捲り、左右のページを見た瞬間、頭の中に大量の情報が流れ込んで来て頭の中がかき混ぜられてる感覚になる。


……世界が回る……でも……以前よりはマシだな。

それでも……気持ち悪い。

魔導酔いってやつか?


一旦魔導書を閉じ、目を瞑って落ち着くまで待つ。

数分程して落ち着くと、もう一度同じページを開く。

すると先程よりはマシだが、頭の中をかき混ぜられる。


そしてまた閉じてを繰り返す事5回目の時、ふと頭に良い方法が頭に浮かぶ。

魔力で脳を強化すればマシになるんじゃね?

という訳で、さっそく頭に魔力を流して強化しながら魔導書を開く。


「おお……スゲー」


先程まで纏まらなかった情報がすんなり纏まり、頭の中に知識として蓄積されるのが分かった。

これならガンガン進められるな。


なんて思ってたが、次のページを開くとまたかき混ぜられるような感覚になり、すぐさま魔導書を閉じる。


先程より酷くなってるぞ?

続けて読み進めるのは止めた方が良いかも?

これはじっくり進めるものなのかもしれない。



魔導書はこれくらいにして、次は口寄せを試すか。

カゲを呼べるのか試さないと。

キミカの召喚を見て俺も出来ると思ったが現時点でカゲや夜叉は、どこにも存在していないはず。


果たして口寄せ出来るのか?

なんて思いながら両手で印を結び、魔力を練って口寄せ術を発動。


その瞬間、今までと違って大量の魔力とマナが消費される事を感じた。

ゲームの時とは明らかに違うと思いながら進めると、俺の影が伸びて漆黒の毛に覆われ四肢の先が金色になっている、軽トラ程ある大きな狼が飛び出す。

額には金色の角が生えており、見た目はカゲのままだ。


カゲが目の前に着地すると俺を見てお座りし、尻尾を振りながら念話で話しかけてきた。


『主、お久しぶりです!』


俺からしたら3日前にも会ってるんだけどな。

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