第19話 召喚術。
警察でやったようにキミカの核を俺の魔力で破壊し、魔力を解放する。
核を破壊した瞬間、魔力を感じる事が出来たのか自分の手や身体を見て涙を流すキミカ。
「魔力を感じれるようになっただろ?」
「はい……懐かしい。ありがとうございます!」
勢い良く頭を下げるキミカ。
「いや、召喚術を教えてくれるなら安いもんだ」
「じゃあ、お昼食べながら話しましょうか?」
ミツキの提案に頷き、4人で店に入る。
この店は、通り沿いにある高い建物の1階部分が店で、雰囲気は食堂といった感じだ。
通り沿いの壁はガラス張りで、店内の壁と床は白で円形のテーブルと椅子は木製。
天井にはおしゃれなランプが等間隔にぶら下がっており、左奥にはカウンタ―席。
手前には16席のテーブル席がある。
入ってすぐ右側にレジがあって丁度、女性客が会計をしていた。
おつりを受け取り、出ようとこちらを振り向くと目が合い、女性は目を見開き驚いた表情を見せるがすぐ何も無かったように軽く頭を下げて横を通り過ぎ、店を出て行く。
彼女の反応を見ていたのかミツキが俺に「知り合いですか?」と聞かれたので、首を横に振る。
あんな女は会った事は無い。
長い茶髪をした可愛い子で、ゴスロリっぽい服装。
何か違和感があったな。
…………まあ良いか。
「ミツキさんいらっしゃい!」
「3人だけど奥の個室空いてる?」
「はい、ソウさんも食べられたら良いのにねぇ」
「式神だからね」
ミツキは常連のようだ。
会計をしていた女の店員に案内してもらい、カウンター横の通路を進むと扉が並んだ廊下で、一番手前の扉を開けるとそこは、座敷になっている個室だった。
良い感じだな。
靴を脱いで座敷に上がり、テーブルの上にあるメニューを見ると、日本にあったようなメニューの中に、初めて見るメニューを発見。
『神酒・六式』
神酒があるのかこの世界は!?
これは是非飲まないと。
ゲームの時も現実に無い酒は飲みまくってたからな。
あの酒をもう一度飲みたい。
俺は、神酒と唐揚げに焼き肉とご飯を注文。
ミツキは、うどんを注文しキミカは、焼き肉定食を注文し、料理が運ばれてくるまで召喚術について聞く事に。
まずは、現実になっても異界から召喚する仕様なのか聞くと。
「アバターの記憶ではそうなってるよ。でも、こっちに来て召喚した事ないから実際のところは分からないかな?」
「試しに召喚してみたら?」
ミツキの言葉にキミカは頷いて、目を瞑って集中する。
現実になって初めてなら緊張するだろうな。
俺もカゲ達を口寄せ出来るのか不安だし。
なんて思っているとテーブルの上に小さな魔法陣が出現するとそこから、光の粒子が出て来て形を作り、魔法陣が消えると同時に光が消えて現れたのは、ハトくらいある炎の色をした鳥だった。
「良かったぁ~、久しぶり『イア』ちゃん!」
「キュイ!」
「綺麗な鳥だな」
イアが飛んでキミカの肩に乗ると、頭をキミカの顔に擦り付ける。
ゲームの時と変わらないのか聞くと変わらずで、契約して繋がってるので意思疎通が出来るとの事。
楽しそうにイアとじゃれているとキミカが。
「えっ?」
「どうした?」
「あ、いや、今イアの声が頭の中に聞こえて……」
「念話か」
「ゲームの時は出来なかなったの?」
「会話出来る子達も居たけど、イアは簡単な意思疎通が出来る程度だったんだよね……えっ、今までの事を覚えてるの?」
「ん? イアは何て言ってるんだ?」
「最後に会った時から、随分時間が経ったって……」
「どれくらい?」
ここにも時間のズレがあるのか?
「……2年!?」
「キミカちゃんがこっちに来たのは、15年くらい前だよね?」
「うん……どういう事?」
召喚獣には、ゲームの時の記憶があると……まあNPCは全て自我を持ってたからな。
それでも、現実になってもその自我が残ってるってのは、どういう事だ?
って、それは考えても分からないか。
しかし、データでしかない存在が、なぜ現実に存在出来るんだろ?
不思議だ。
自分がゲームのアバターで異世界に居る時点で、十分不思議なんだけどね。
だがこれで、カゲ達も口寄せ出来る事が分かった。
どれくらい時間が経ってるのかは、分からないが……そうだ。
俺はキミカに、イアが召喚される直前までどこに居たのか聞いてもらう。
するとゲームの時と同じ異界に居たとの事。
俺はその話を聞いて思考を巡らせた。
イアがゲームの時と同じ異界に居たのに、なぜ現実になったこの世界に召喚出来たのか?
データだったのにキミカが召喚した瞬間、実体を持ったという事になる。
どうやって実体を得たんだ?
…………光の粒子……まさか、魔力とマナ?
巻物を作った時みたいに、魔力とマナでイアの身体が構成されている?
ソウも魔力で出来てるし……ゲームの時と魔力が変わってるのか?
「難しい顔をしてどうしたんです?」
「ミツキ……データのイアが実体を得た原理を考えてたんだ」
するとキミカが口を開く。
「あっ、この子達が居る異界って実体の無い世界らしいよ? それで召喚士が召喚する時、魔力を代価に肉体を得るんだってさ」
実体の無い異界?
それってデータだけの世界って意味……じゃないな。
それを言えば俺達のアバターもそうだ。
実体の無い世界……つまり、精神体の世界って事か?
あっ、確か悪魔が居るのもそんな世界だとか言ってたような?
現実的に言えば、次元が違う世界って事?
「それって妖精や精霊が居る世界に似てるな」
「あぁ、精霊も居るって言ってたね」
「で? 召喚術のやり方を教えてくれ」
「そうだったね。えーっと召喚術は、イメージと大量の魔力が必要になるよ」
「具体的に」
「ちょっと待ってね……こういう召喚獣を呼びたいとイメージしながら魔力で召喚陣を描いて呼び出せば良いんだけど、ゲームの時でもいきなり強いのが召喚されて殺されるってプレイヤーも居たから、注意した方が良いよ?」
なるほど、召喚陣が必要になるのか。
……ん?
いま頭に過ったのは……召喚陣?
「召喚陣にランクってある?」
「よく分かったね。召喚陣は、下級、中級、上級、特級、超級の5つあって、当然最初は下級の召喚陣で召喚するんだよ」
頭の中に浮かんだ魔法陣。
これはあれだ。
デスロードさんの魔導書で取得した記憶だ。
まだ【魔導書・初級】だけど。
魔法陣も含まれてたからその知識か。
初級だからこれはおそらく、下級の召喚陣だろうな。
既に召喚術が使えるとは、デスロードさんありがとう!
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