第16話 式紙。
ミツキを鍛える前に、先に陰陽師の術を教えてもらう事にする。
俺も使えれば良い訓練方法が浮かぶかもしれないしな。
「では、式紙を教えますね」
「ここで? 出来るの?」
「はい」
そう言って右手の中に、フッと動物の形をした白い紙を出現させた。
「インベントリから出したのか?」
「いえ、これはお札作成スキルの応用です。現実になったからこそ出来る事ですね」
なるほど、ゲームの時はお札しか作れなかったけど現実になった事でいろんな紙を作り出せるようになったと。
お札も紙だしね。
「紙の形は基本、式紙に合わせた形にして下さい、そうしないと式紙にした時、上手く動けなくなるのでと言っても、リアルにする必要はありません。犬と狼だと同じ形の紙でも問題ないので、ではキジ丸さんはどんな式紙にするか考えて紙を切って下さい」
ミツキがA5の紙を1枚作り、手渡して来たのでそれを断る。
「紙なら大丈夫、自分で用意出来ると思う」
お札作成スキルの応用で紙を用意出来るなら、俺の巻物作成でも同じだろう。
それともダンジョン由来のスキル、物質生成でやるか?
……いやここは、巻物作成で試そう。
ゲームの時は一度も使ってないけど、現実になって使う事になるとはな。
まずは巻物を作ってみるか。
すると手の中にフッと1本の巻物が出現。
「巻物? だと式紙は出来ないと思いますよ?」
「いや、これは試しに作っただけでここからが本番」
巻物をインベントリに収納し、次は紙を作る。
たった今巻物を作ってみて分かった事は、ただイメージして魔力を練るだけじゃなく、魔力を巻物の形にして魔力の質が変わった事だ。
何て言えば良いのか……水のような液体を粘りのある液体に変えるような感じ?
それと、僅かにマナが混ざってる事。
これは肉体にある僅かなマナを使ってるようだな。
そう言えば、物質生成も魔力とマナを使うスキルだった。
つまり、何か物を作るのは魔力だけじゃ無理って事だ。
そうと分かればさっそく。
鳥の形をした白い紙をイメージし、魔力をその形に練る……そこに少しマナを混ぜると手の中に鳥の形をした白い和紙が1枚現れた。
「……キジ丸さんもお札作成が使えるんですか?」
「似たようなスキルを持ってたから試しにやってみた」
「私は紙を作れるようなるのに10年は掛かったんですけど、流石最強プレイヤーですね……」
魔力制御の練度とマナを扱える俺だからすんなり出来た事だ。
それにしても、紙の質がミツキと違うのはなぜだろう?
俺のは和紙っぽいがミツキのは、ノートに使われるような綺麗な紙である。
巻物作成が影響してる?
……これは後でいろいろ試してみよう。
紙の用意が出来たので次の段階に移る。
「形代が用意出来たので今度は、その紙に念を込めて魔力を流します。そうすれば式紙が生まれるはずです」
「念を込める? イメージじゃなくて?」
「はい、イメージもしますが一番大事なのは、念を込める事です。こういう式紙が良いとか、こういう性格の式紙が良いとかですね」
「1回やってみてくれるか?」
「分かりました」
するとミツキは、俺と同じように鳥の形代を作り、目を瞑り数秒経つと光の粒子が紙を包み、鳥の形になるとすぐ色が付き、スズメのような鳥に変化した。
鳥はミツキを見て首を傾げるようにすると「ピィピィ」と可愛らしい声で鳴き、ミツキの肩へ飛んで止まる。
「どうですか? これが式紙です」
「面白いな。明らかに使い魔とは違うな」
「あぁ、基本は似てますが存在はまったく違いますね」
使い魔は感覚共有は出来るが、自分で行動したり声を出したりは出来ない。
しかし、この鳥は鳴いてミツキの肩まで飛んだ。
ほぼ新たな生命って感じだな。
「その鳥が死んだ時ってどうなる? 紙に戻るのか?」
「はい、攻撃されれば紙が破けてこの子は消えます。ただ、作る時に込める魔力量で耐久力を上げる事も出来ますよ」
ほう、つまりソウのようにも出来ると。
チラっとソウを見ると笑顔で見返される。
魔力を込める量か……ただこれにも少しマナが混ざってたんだが、ミツキは気付いてないようだ。
では俺も……カラスのような黒い鳥で偵察などが出来る鳥……これで魔力を込めながらマナを少し混ぜる!
すると同じように紙が光に包まれるとカラスのような鳥へと変化し、俺を見て頭を下げた。
「おお、何も指示してないのに頭を下げた。スゲー」
使い魔をよく使ってたからこれは、ちょっと感動。
「いきなり成功!? 一発で出来るってなんで!?」
「まあ、慣れ?」
「流石最強……」
おそらくマナを感じれて操れるからだな。
本来マナを制御するには、かなり時間が掛かるしね。
しかし改めて現実でスキルを使って気付いたのは、ゲームの時は魔力を使ってたスキルも現実だとマナを少し使う必要があるんだなぁ。
いや、皆は体内に流れてるマナを自然に使ってるってだけか?
マナ……俺は神気とソウライさんに習ったけど結局同じモノだ。
……うむ、ミツキの訓練はマナを重点的に教えた方が良さそうだな。
そこで未だに俺を見てるカラスを見てふと気になり、こいつらは何か食うのか聞くと、魔力を与えれば良いとの事。
魔力で作った式紙だし当然か……ん? じゃあマナを与えたらどうなるんだろう?
なんて思った瞬間には、マナを少し流してみる。
するとその瞬間、カラスが金色の光を纏う。
「えっ……」
「なるほど、こうなるのか」
「……いやいやいや、何でキジ丸さんが陰陽師の奥義を使えるんですか!? しかも式紙で!?」
「奥義?」
「はい、陰陽師の奥義に式神を強化する技があるんです。強化した式神は金色の光を纏うのが特徴なんです。それを何で……」
「あぁ、陰陽師の奥義はマナを使うのか」
「マナ? 私達は『仙気』と呼んでますが、それがマナ?」
「たぶんそうだろうな。その仙気はHPを使うだろ?」
「はい、よく分かりましたね?」
俺はミツキに、仙気と神気とマナについて説明した。
GFWでは、流派や職業、流派によって呼び方は違うが全て同じエネルギー、生命力である事を。
「はぁ~、いろいろあるんですねぇ」
「で、そのマナがこの現実じゃ大事だ。式紙を作った時にもマナが少し使われてた」
「? 私は魔力しか使ってませんよ?」
「肉体に流れてる生命力、マナを自然と僅かだが使ってるんだ」
「そんな事が……」
「なのでミツキを鍛える方法を思いついた」
そう言うとビシッと背筋を伸ばして座るミツキ。
「近接戦云々よりまずミツキは……縛る」
俺の言葉にミツキとソウがポカーンとして固まり、数秒してミツキが口を開く。
「SMで……」
「違う」
「でも私を縛るって、ちょっと興味はありますが……」
「黙れ」
なぜミツキを亀甲縛りして鍛えるんだよ。
考えれば分かる事だろ。
「それより、とっておきの訓練方法を教えてやる」
「お願いします!」
「ただし、かなりキツイから覚悟しろよ?」
「……はい!」
ミツキに耐えられるかな?
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