第15話 陰陽師ミツキ。

長く綺麗な黒髪に、魔法陣が描かれた黒い眼帯を左目にした綺麗な女の子。

服装は、女子高生のような黒いスカートに黒いコート、中は白シャツで黒いロングブーツを履いてる。

ブーツが無いと身長は160くらいかな?


眼帯はこの世界だから、厨二かガチで何かを封印してる可能性はある。

そして彼女の後ろに立っている、執事のような恰好をした爺さん。

この爺さんがヤバい。


人間じゃないのは分かるが、魔力で作られた生物?

何にしてもかなりの魔力の持ち主だ。

戦ってみたい気もするがここは、相手の出方次第だな。


「すみません」

「はい?」

「もしかして、キジ丸さんですか?」


俺を知ってるって事はプレイヤーか。


「そうだけど? 君は?」

「初めまして、私はミツキと言います」

「……そっちは?」

「あっ、こっちはソウ、私の式神です」

「式神……陰陽師か」


俺はGFWで職業を忍者にするか陰陽師にするか悩んだ程、陰陽師が好きなのだ。

なのでちょっとテンションが上がる。


人じゃないと思ってたけどまさか式神とはね。

これが……。


「主様に仕えてるソウと申します。以後お見知りおきを」

「あんた強いだろ? 今度摸擬戦でもしない?」

「いえいえ、私など主様に比べたら……」


するとミツキが対面にカップを置き、席に着くと口を開く。


「キジ丸さん」

「ん?」

「どうすれば最強になれますか?」

「鍛える事だね」

「即答……私も最強の陰陽師を目指して鍛えてましたが中々難しくて……何かコツとかあれば教えて下さい。勿論お礼はします」


と、真剣な表情をして言うミツキ。

こいつもGFWで最強を目指してたのか。

強くなるコツねぇ……俺はただひたすら訓練してただけだしなぁ。

サブマスのサヤには、戦闘狂ではなく訓練狂と言われてたくらいだ。


俺の戦闘訓練は、分身を使った訓練が基本。

忍者ではないプレイヤーには出来ない訓練だから、職業に合った訓練をすれば良いと思うんだけど……。


「コツなんてのは人それぞれ違うと思うぞ? それに君の事を名前と就いてた職業しかしらないからな……こっちに来てどれくらい経つ?」

「私はこっちに来てえーっと……今年で36年くらいです」

「ミツキも不老か」

「はい、ゲームの時に時空属性を取得してそれで」


俺と同じだな。

陰陽師がどうやって戦うのか聞くと基本は、お札や式神を使って魔を祓うらしい。

あとは陰陽陣を用いた術、そしてミツキは近接戦闘が出来るように刀を使ってるとの事。

それから地球に居た時に少し空手をやってたらしく、それで格闘戦も多少出来るそうだ。


うむ……陰陽師って確か形代という物があったはず。

それで分身を作れないかな?

とミツキに聞くと少し考えてから「出来るかも?」と答えた。


「戦闘訓練はどうやってる?」

「いつも刀の素振りと型の練習をしてから、式神と摸擬戦をしてます」


そこでチラっとソウを見ると頷いた。

それなら十分鍛えられると思うけど……いや、そうか。

式神は分身と違って自我がある。

だから殺す気で戦闘訓練は出来ないか?


「式神が死んだ場合どうなる?」

「時間が経てばまた呼び出せますよ?」

「じゃあ、式神と戦闘訓練をした時、殺す気でやってるのかな?」

「いえいえ、家族のようなものです。そんな事は出来ませんよ」

「あぁ、それだと実戦の訓練は出来ないな」

「キジ丸さんは、実戦の訓練をしてるんですか?」

「当然だろ? 摸擬戦と実戦は大違いだ。殺意や殺気が篭った攻撃、こっちも同じように殺気を込めた攻撃をしないと戦闘訓練にはならないぞ?」


そう答えるとミツキはポカーンと口を開けて固まってしまう。


「どうした?」

「訓練で殺し合いをすると?」

「じゃないと意味が無い。俺が大会の最後、ハンゾウと戦ったのは見た?」

「はい、見ました」

「あれがいつもやってる訓練だな」


するとミツキは目を見開き、驚いた表情を見せる。


「あれをいつも!?」


頷く俺。

中継でいつもの訓練をしただけだが、あれをいつもやってるとは思わないか?

ゼロやヒヨも引いてたしな。


「こう言っては失礼かもしれませんが……狂ってますね」

「本当に失礼だな」

「あれをいつも……どおりで最強と呼ばれる訳ですね」

「俺にとっては、あれが普通なんだけど……ミツキが最強の陰陽師を目指すなら、どうやれば強くなれるのか試行錯誤を繰り返すしか無い」

「例えばどうのようにすれば?」


ん~、陰陽師なら術が基本だしなぁ。


「例えば術の使い方を工夫するとか?」

「術の使い方? お札の使い方なんて何かあります?」

「それを考えるのがお前のやる事だろ?」


俺で言うと遁術。

遁術は印を両手か片手で結び発動させるか、どこかに書いて発動させるのが基本だが俺は、体内に印を書く事で相手にいつ発動するか分からなくした。

発動スピードも格段に上がるしな。

だから陰陽師の術も……ん?


「なあ、陰陽師の基本の術ってなに?」

「【お札作成】と【式紙】と【魔除け】です。式紙が進化して【式神】になります」


式紙がどんな術か聞くと、ソウのような式紙を作る事が出来るらしい。

ミツキには他にも式神が居るとの事。


なるほど、式紙ね……使い魔に近いか?

それなら……。


「なあミツキ」

「はい?」

「俺と取引しないか?」

「取引?」


首を傾げるミツキに告げる。


「陰陽師の術を教えてくれたら俺がミツキを鍛えてやる」

「陰陽師の術をキジ丸さんに? そんな事が出来るんですか?」

「出来る……はず」


ゲームの時は、特殊スキルで作る物が必要だったが、現実になってキジ丸の記憶が正しいなら、職業スキルを教えれば習得出来る可能性が高い。

スキルではなく、魔力制御が基本だからな。


なりたかった陰陽師になれる!

あっ、デスロードさんに貰った魔導書で魔法も使えるようになってるんだった。

魔導書も読み進めないとね。


「で? 答えは?」

「……分かりました。キジ丸さんに陰陽師のスキルを教えるので鍛えて下さい」

「分かった。じゃあ明日から……」

「いえ、今日からお願いします!」


めちゃやる気満々だな。

なら俺もそれに合わせてやってやろう。


フッフッフッフッ、サヤを鍛えた時のようにしてやるか?

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