第14話 喫茶店でのんびり。

数分後、スキラスの査定をしていた男が近づいて来て終わった事を告げ、買い取り価格はなんと『123万E』となった。

価値は日本円とほぼ同じだ。

それで123万はかなり高額での買い取りだろう。


「じゃあ、それでお願いします」

「魔導マネーにしますか? それとも現金で?」


魔道マネーとは、地球で言う電子マネーのようなもの。

この国の現金を一銭も持ってないのはどうかと思うので、ここは現金にしてもらった。


すぐ用意するというので店の方に戻り、カウンターの上に帯の付いた100万の札束と端数が置かれる。


「では、ID確認を」


俺はリングでステータスを表示させ画面を見せると。


「特別顧問!?」

「あぁ、気にしないでくれ」

「は、はい……問題ありません。ではこれで売買は完了です。また何かあればお売り下さい、お待ちしております」


そう言って頭を下げる店員。

やっぱりこの肩書は目立ちそうだな。

まあ、もう買い取りは当分しないだろうし大丈夫か。



現金をインベントリに収納し、お礼を言って店を後にする。

さて、金も手に入ったので今度は、いろんな店を回ろうかな。

それとも……あっ、そうだ。


俺はさっそく地図で目的の場所を検索し、近くにある店へ向かう。

数分後、到着したのはおしゃれな喫茶店だ。


オープンテラス席もあり、ガラス張りの店なので店内もよく見える。

平日の昼前なので客はそんなに居ない。


店に入って受付でコーヒーとサンドイッチを注文し、外が眺められる窓際の隅の席で灰皿が置いてあるのを確認するとそこに座り、スッと指の間にインベントリから煙草を取り出すと銜えながら指先から火を出し点けた。


「フゥ~」


良いねぇ。

日本で平日の朝からんびりしてる感覚になる。

俺はのんびりしながら今後の事を考えていた。


明日女王に会って受けられる依頼なら受け、無理ならすぐこの国を出て北を目指そうか。

俺がゲームで南方に居たからこの世界の南方に送られたとシュートが言ってたし、それなら北に行けばヒヨやゼロが居るはず。


まだこっちに来てない可能性もあるが、北の方が知り合いは多い。

この街はプレイヤーがゲームの時に作った街が発展したなら、ゼルメア王国の街もあるだろう。

そして俺の拠点も。



煙草を吸って外を眺めながらそんな事を考えていると、コーヒーとサンドイッチが来たので煙草を消してさっそく頂く。


サンドイッチはハムとレタスっぽい葉野菜が入っており、マヨネーズっぽいソースがたっぷりだ。


「……美味い」


ソースに酸味があって濃厚、それにハムの塩気と葉野菜でさっぱりする。

良いねぇ。

コーヒーは……酸味とコクがあってこれまた美味い。


サンドイッチを食い終わると俺は、リングで魔導ネット画面を開き、いろいろ検索して調べる事に。

まずこの世界というか街の歴史。


これはシュート達が言ってたように300年前、細かく言えば337年前。

この場所に突如現れたのが始まりだが、当初はもっと小さい街だったらしい。

まあ、ゲームと同じならそうだろうな。


その後、200年掛けて現在の広さになったそうだ。

この世界に元から存在してた小さな街や村の人達を魔物やスキラスから護り、いつしか周辺の人々が集まり現在に至る。


ネットによると女王が来る前、この辺りに国は無かったとの事。

魔物とスキラスの脅威で人類は滅ぶ寸前だったと書かれていた。

まさに英雄だな。


ここから東にも同じような大きな街があり、そこが他国になる。

街単位で国なんだ。

しかし、街と言ってもかなり大きい。

カリムス王国のこの街は、日本がすっぽり入る程の大きさだ。


人口は現在『69624321人』となる。

約7000万人。

この国だけでこの人口だ。


ここから東に行くと『アバッテ王国』という国があるそうな。


北の情報も無いか検索すると、古代都市の影響で北へは行けず、どうなってるのかさえも分からない状態と書かれていた。

なぜ北に行けないのか調べると、大陸を分断するように古代都市があり、スキラスや魔物がうじゃうじゃ居るので誰も近づけないと。


なので現在、地下を掘って北へ行くというプロジェクトが進んでいるらしいが、それも地中に居るスキラスと魔物の影響で殆ど進んでいないそうだ。

魔物とスキラスか……スキラスはなぜ生まれるんだろ?



ネットで調べると規制が掛かっており、普通じゃ見れないのでID番号を入力して肩書の権限で見させてもらう。


それによると古代都市にある、次元高炉と呼ばれるものが過去に暴走した事が始まりと書かれているだけで、それ以外に詳しい情報は無かった。

変な物が暴走して人が住めなくなり、更には通れなくなったと……誰が作ったんだそんな危険な物?


まさかプレイヤーじゃないよな?

……いつ暴走したのかは分からないと。

確実なのは、この国が出来るもっと前って事だな。


いずれ古代都市にも行ってみよう。

どんな所か気になるしね。


そこで煙草に火を点け、今度は面白そうな仕事は無いか検索してみる事に。

すると……。


『探偵になろう!』

『賞金稼ぎは大変だが稼げる!』

『大企業の一員にならないか?』

『一緒にゼギアに乗って魔物を倒そう!』

『悪を許せない者は集まれ!』

『お祓い、霊現象のお悩みはこちらへ』

『相談窓口』

…………。

……。


と、いろいろ結果が出た。

日本とは大違いだな。

探偵ギルドにハンターギルド、サラリーマンに軍と警察、そして怪しい仕事か。


一度画面を戻して暗殺依頼とかはあるのか見ると、幾つかサイトが出てきたので軽く見てみると、ズラッと誰かを殺して欲しいという依頼が出て来る。

しかし殆どは、ただの書き込みで誰も相手をしてない状態だが誰かに対する憎しみや殺意が溢れてるな。


GFWでやってたようにこの世界にも、裏の仕事はありそうだ。

まあ、拠点に帰るまではやらないけど。



と、ネットサーフィンをしてると明らかに、他より魔力が大きい人物が2人、店内に入って来た。

気配察知で敵意や殺意は感じないので、ただ店に来ただけだろうと無視をする。


コーヒーを飲みながらネットを見てると、先程入って来た客が近づいて来るのが分かり、空間感知で確かめるとどうやら女のようだが、もう1人は人間じゃない事が判明。


人の形をしてるが魔力の塊だ。

上手く隠してるようだが空間感知、魔力感知、気配察知で分かってしまったよ。

こんな所で怪しい奴に会うとはな。

この国に潜入してる何かか?


「すみません」


画面から女の方に目をやると、長く綺麗な黒髪で左目に魔法陣が書かれた黒い眼帯をしてる綺麗な女の子がカップを持ちながら立っていた。


魔法陣が書かれた眼帯って、厨二ですか?

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