第13話 才能。
皆が驚いて固まってるとシュートが近づき、死体を確認しながら口を開く。
「覚醒する前に殺したのか、流石最強だな」
「覚醒?」
シュートの話しによるとスキラスは戦闘中、一定のダメージを受けると覚醒状態になり、機械の部分が黒くなるらしい。
死体の機械部分は、銀っぽかったり白だったりする。
覚醒するとスキラスは、特殊なエネルギーを身体から発し、強さが数段上がるとの事。
GFWで言うとシュートいわく、Sクラス以上の魔物になるそうだ。
「そしてそのエネルギー源が体内にある、次元コアと呼ばれる物だ。これはどの国でも一般の企業や店でも高値で買い取りしてくれるぞ」
「何に使うんだ?」
「そりゃ機械を動かすエネルギー源としてだ。ゼギアもこれが使われてる。と言っても、ゼギアのコアは最低でもSランクのコアだけどな」
詳しく聞くとスキラスの強さと大きさに比例し、コアも大きく高性能な物になるらしく、大きさによってランク分けしてるという。
俺が倒したスキラスのコアだと、どれくらいになるのか聞く。
「覚醒前に始末してるからな……B+ってところか?」
「そうだな。覚醒前に始末するとコアの性能も上がるからな」
ほう、これでB+か、Sランクを持つスキラスと戦ってみたいね。
更に話を聞くと、スキラスの肉も食えるそうで、街でも普通に食われてると。
国で消費してる肉は、全部スキラスなのか聞くと。
「いや、魔物の肉もある」
「軍が狩って卸してるのか?」
「それもあるが、第18地区から20地区で畜産をやってるんだ」
話しを聞くと、18、19、20地区では魔物を飼ってるそうで、殆どがその肉が使われてるとの事。
魔物は、すぐ数が増えるし成長も速く、食えるようになるのが早いんだとさ。
ちなみにどんな魔物か聞くと、オークと鳥のような魔物、そして牛系の魔物。
「この国で一番稼げる仕事が何か知ってるか?」
シュートの問に首を横に振る。
「肉屋だ」
「肉屋?」
「大量の肉をこの国全体と他国にも出荷してるからな」
「そんなに肉が採れるのか?」
「ああ、オークなんて集落を作ればすぐ数が増えるし、他の魔物も一回の出産で数十匹は生む。しかも成長が早い、毎日出荷しても魔物の数が増える方が早い時もあるから、偶に軍が間引く事があるんだ」
「スゲーな」
「まあ、相手は魔物だから常に危険とは隣り合わせだけどな」
そりゃ当然だろうね。
魔物を家畜にしてるとはなぁ。
この世界の魔物って危険なんじゃなかったっけ?
と思い聞いてみるとどうやら、個体によって再生能力が変わるらしい。
この世界は謎だらけだな。
生態系がよく分からん。
俺が狩ったスキラスと回収したスキラスは、街で買い取ってもらう事にし、死体を収納してシュートとアキオと一緒にエレベーターへ向かう。
皆は訓練の続きだ。
僅かだが魔力を使えるようになった者は、魔力制御の訓練。
それ以外はマナで核を破る訓練を続ける。
エレベーターに乗っている最中、ずっと気になっている事を聞く。
「なあ、何か自分の中の一部が抜けてる感覚があるんだけど、この世界に来た影響かな?」
どこかぽっかり穴が空いたような、そんな感覚だ。
俺だけなのか転移した事が原因なのか、それとも地球に置いて来た身体じゃないからなのか分からない。
シュート達も同じかと思い聞くと。
「ああ、それは俺も感じてる。ずっとな……」
「俺もだ。だが原因は分からない」
シュートとアキオ、他のプレイヤ―も似たような事を感じてるらしい。
異世界に来た影響だろうな。
エレベーターが1階に到着し、扉が開くと俺だけ出て2人にお礼を言うとシュートには、夜には家に行くと言い、2人はそのままエレベーターで上に向かい、俺は正面から建物を出る。
自動ドアを出ると目の前にはロータリーがあり、30メートル程先には道路が横に通っていて車がビュンビュン行き交い、その手前には広い歩道を歩く多くの人。
ここだけ見ると近未来の地球って感じだが左を見ると、高い建物の隙間から滅茶苦茶デカい筒状の建物が見えるんだよね。
デカすぎて近くにあるように見えるが、実際はかなり距離があるだろう。
ちなみに幅は数キロメートルありそうだ。
それが上の方は見えず、宇宙まで届いてそうな程高い。
腕時計を見るようにリングを見て時計と念じると、腕時計のように小さく時間が表示される。
昼までまだ3時間以上あるな。
とりあえずスキラスの買い取りをしてもらうか。
確か地図が見れるんだよな? とリングで地図を表示させるとリングの上に30センチ四方の画面が表示され、自分の位置に青ピンがあった。
GPS的なものか?
自分の現在地が分かるのは有難いね。
……検索機能もあると。
思念操作が出来るのはどういう仕組みだ?
なんて思いながら検索に『スキラス買い取り店』と思念操作で打ち込むと、周囲に幾つか赤いピンが刺さる。
「滅茶苦茶便利だ」
一番近いのは通りを超えてもう一つ向こう側にある店か。
周囲をキョロキョロ見回し、右へ数十メートル行くと信号機があるのでそっちへ向かう。
歩きながらすれ違う人達を観察してると人間に看破を使うとどうなるとかふと気になり、丁度前から歩いて来たスーツを着た若い男を看破で見ると、頭の中に情報が流れ込んできた。
『【名前】デイス・マートン
【年齢】26
【才能】魔法使い・テイマー
【詳細】ベックとマリーの間に生まれ、愛情たっぷりに育てられ真面目に育つ。現在彼女と同棲中、結婚を考えている。』
俺はその場で立ち止まり、ちょっと混乱しながら振り返ってスーツの男を見る。
スキラスの時とはまったく違うし、ゲームの時には見えなかった【才能】とは?
魔法使いとテイマー。
これはゲームにもあった職業だがこの男、2つの職業スキルを持ってるって事か?
……そんな風には見えないな。
話しを聞いてみる?
いやいや、いきなり『魔法使える? テイム出来る?』なんて聞いたら確実に変質者だ。
……クソ、滅茶苦茶気になる!!
いや、他の人も同じように見えるのか試そう。
何人か見れば分かるはず。
という訳で買い取り店へ向かう間、すれ違う人達を看破で見ると全員、同じように見えた。
【才能】は剣士や格闘家、鍛冶師などもあったが全員、サラリーマンや作業着を着た人達だ。
才能とはまったく違う仕事をしてる風貌。
……もしかして工作員?
いや、それなら詳細に出るか。
…………才能はその適正があるってだけかな?
本人たちは気付いてない?
だとしたら、勿体ないねぇ。
なんて考えてると買い取り店に到着。
通り沿いに建つ高い建物の1階、入り口の上にはホログラムのような看板が出ており『スキラス・家電、部品、何でも買い取り!』と書かれている。
ガラスの自動ドアから入ると左側全体に棚が等間隔に並び、家電や箱が大量に陳列されており、壁には綺麗な人型の機械の腕や足が飾られていた。
義足的な?
右側に木製のカウンターがあり、中には1人の若い男が立ちながら雑誌を読んでいたが俺が入ると雑誌を閉じ。
「いらっしゃいませー」
「どうも、スキラスの買い取りをお願いしたいんだけど」
「はい……えーっと現物は?」
「ここに出して良いの?」
「もしかして収納空間をお持ちですか?」
「ああ」
「英雄……」
「じゃないから、とりあえずどこに出せば良い?」
「あっ、奥の解体場に」
そう言って案内されたのは店の奥にある鉄扉。
そこを潜ると奥行き約30メートル、幅約20メートル、天井までの高さは約10メートル程ある広い倉庫のような空間だった。
天井には、鉄の梁が通っており、クレーンなどが付いてる。
左側には3畳程の台が3つ。
奥で作業服を着た男が2人、機械の解体を行ってる最中だ。
「ここにお願いします」
入ってすぐの広場に出すよう言われたので俺が仕留めたスキラスを、インベントリから取り出す。
勿論頭もだ。
「おお! 覚醒前に仕留められてる。ちょっと査定しますね」
「よろしく、他にもあるからこっちに出しとくよ」
「お願いします」
ゼギアが倒したスキラスも取り出した。
どれくらいの金額になるかな?
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